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IT専任担当者を採用して環境整備テレワーク促進で働きやすい環境へ

株式会社セイム

  • 建設業
  • 三原市
  • 31~100人
長時間労働の是正多様な働き方(テレワーク・副業・兼業等)生産性の向上(業務プロセス見直し・ICTの活用等)円滑な人間関係の構築
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認定マーク
会社概要
所在地 〒723-0052 広島県三原市皆実4-8-6
URL http://www.seim.co.jp/
業務内容 建設営業、土木・建築の施工管理
従業員数 31人

(2023年7月時点)

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 三原市で公共・民間工事の建築施工管理を手掛けるセイムはIT専任担当者を雇用し、テレワーク環境の整備に力を入れている。推進担当の福戸山友貴部長に話を聞いた。

テレワークに取り組んだ背景

― コロナ禍を機に環境整備を進める

seim_1.jpg コロナ禍では総務部など一部の社員が出社しなければできない紙ベースの業務などを抱え、全員がテレワークを行える環境が整っていなかった。
 そこで、総務担当者を中心に業務のデジタル化を進めるためにITツールの導入を検討したが、専門的な知識やノウハウがなく既存の業務との両立が難しいことから、ITに精通した専任担当者の採用を決定。全社的なテレワークの実現に向けて取組をスタートした。

 

主な具体的な取組

― IT専任担当者を中心に業務効率化

seim_2.jpg 専任担当者にはテレワークに関する環境整備のほか、社内のデジタル領域全般を網羅してもらいたいと考え、広範囲をカバーできる人材を求めた。また、専任担当者の業務は社内全般に関わることから、各部署の社員と分け隔てなく連携を取れるコミュニケーション能力の高さも重視し採用を行った。
 まずは専任担当者を中心に、自社の情報セキュリティーに関する脆弱性の調査から着手した。近年、社内ネットワーク機器の脆弱性を狙うランサムウエア(※1)の被害が全国的に増えていることから、IPA(情報処理推進機構)が無料で提供している診断ツール「5分でできる!情報セキュリティー自社診断」を使い、自社の課題を特定。ルールづくりや社員教育の不足など多くの分野で課題が判明した。診断内容を受けて、「情報セキュリティー基本方針」を策定し社内外に表明。経営者主導で改善・向上に努めることや、社員が知識や技術取得することなど、社内全体で取り組む項目を盛り込んだ。
 テレワークの導入を阻害していた稟議決裁手段の見直しも実施。これまで稟議書は紙と押印で決裁を行っており、出社しなければ手続きが進まなかった。そこで、稟議を電子化するワークフローシステム導入に向けてグループウエア製品を比較・検討。年内にシステムを導入し、遠隔でも対応できる体制を目指している。
 会議のオンライン化も進める。これまでは、現場監督が集まる「安全衛生委員会」の会議を月1回本社で実施していたが、参加者は三次・庄原市など離れた現場から一日の業務を終えた後に集まっていた。帰社できない担当者の不参加もあったため、ビデオ会議システムZoomを導入。オンライン参加が可能になったことで担当者は移動時間を減らし、どこからでも柔軟に参加できる体制となった。
 各取組において、IT専任担当者が先導したことで迅速な課題の特定と適切な対処が実現した。

 

導入後の変化・メリット

― 着実に進むテレワーク環境の改善

seim_3.jpg 情報セキュリティー基本方針を策定・周知したことで社員のセキュリティー意識を向上できた。会社を挙げて取り組む姿勢を示したことで社内全体にテレワークを推進する機運が広がり、実施率が向上した。
 会議のオンライン化により、安全衛生委員会の参加率が大きく改善。自宅からの参加や、会議後に現場から直帰できるなど業務負荷が軽減した。
 また、社内でオンライン会議の利用が広がるよう、本社にリモートブース3台を導入。部署を問わず誰でも使用できる個室で、利用者からは「周りを気にせず会議に集中できた」「作業効率が上がった」 など好評だった。

 

取組のポイント

― 経営トップがIT化を進める姿勢

 IT化に向けた動きが大きく進んだのは、社長の力強い方針決定がきっかけとなった。同社は「人」が財産と考え、社員に「セイムに入社して良かった」と思ってもらうために柔軟に働ける環境をつくりたいと、社長が方針を明確にした。本格的なテレワーク導入に向け、思い切ってIT専任担当者の採用を決定したことが取組を大きく前進させた。

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今後に向けて

― 創業100周年までに社内IT化完結

seimu05.jpg2018年7月の西日本豪雨で、グループ会社のセイム梱包が浸水、さらに翌年には本社も豪雨のため浸水の被害を受けた。災害リスクが隣り合わせという危機感を持ったことで、データの保管方法などの検討が必要だと社内で共通認識が広がった。現在は社員同士のデータの受け渡しにNAS(※2)を利用しているが、年内にはクラウド管理に移行するほか、建設業向け会計ソフトをバージョンアップして電子保存に対応できるように調整する予定。27年の創業100周年までにさまざまな業務のIT化を進め、今以上に柔軟に働きやすく、生産性の高い職場環境への変革を加速させていく。

社員の声

総務課
西河 英治 さん

seim_6.jpg 前職で社内システム構築などに携わり、IT専任担当者として入社しました。ネットワークの不調やパソコン故障といった細かな問題が発生した際に各事業所に出向き対応しています。テレワーク環境の整備として安価なLANケーブルを購入して交換するなど、地道なところから進めました。徐々に基本的な社内体制が整い、効率が上がるという成果が見えてきてやりがいを感じています。

 

◆用語解説◆

※1 ランサムウエア
悪意のあるソフトウエアの一種。コンピュータが感染すると、データを暗号化されて使用できない状態になり、復元の対価として金銭を要求される。

※2 NAS
ケーブルを直接パソコンとつなげず、ネットワーク上に接続できるハードディスクのこと。複数人が同時にデータの保存や読み込みが可能で、保存スペースを共有できる。通信障害の影響を受けにくいが、災害などでデータ損失してしまうことも。有事に備えてクラウドへ移行する企業もある。

取材日 2023年9月