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2025年4月に発足した持ち株会社。幅広い事業を手掛ける中で代表的なのは、
広島市安芸区と福山市で運営する自動車学校「ロイヤルドライビングスクール(DS)」だ。
また祖業である、しょうゆ製造のほか、近年はM&Aなども積極化し
急速に規模を拡大。
もちろん、事業規模と同時に従業員の数も拡大している。
本格的に人的資本経営に乗り出したのは、その「人の力」をより引き出し、
企業としてさらなる高みを目指したいという思いだったという。
住吉利文常務、人事部人材開発課の掛谷望課長に話を聞いた。

ロイヤルDSの年間卒業者数(2025年、四輪・二輪合計)を見ると、広島は4650人で県内28校のトップ。
続く2位が3968人の福山で、まさに広島を代表する教習所といえる。
こうした教育カンパニーでは他に、労働安全衛生教習の「ロイヤルパワーアップコーポレーション」、
船舶教習の「ロイヤルマリンコーポレーション」などを展開。また、しょうゆ製造の寺岡有機醸造をはじめとした
食品カンパニーも傘下に抱える。

同グループではHD化の前から年商100億円を目標に置き、既存事業の伸長に力を入れてきた。
さらに、ここ数年は県内外でのM&Aや資本提携も進め、県内だけでも菓子「旬果瞬菓」や
「広島チョコラ」など製造の共楽堂(三原市)、酒造の天寶一(福山市)がグループイン。
さらに県外の自動車学校、食品加工会社なども加わった結果、グループ売上高は
2020年からの5年間で約2.5倍に増え、ついに2025年度、108億円にまで達した。

規模の拡大を見据え2024年春、経営管理本部の中に採用や労務管理を行う
人事部を新設。従来は総務部内の業務の一部という位置付けだったが、
100億円企業を志し専門部署化に踏み切った。当時の状況について、住吉常務はこう振り返る。
「中核のロイヤルDSでは、早くからインターンシップに取り組んでいたことや
学生からの認知度の高さもあり、新卒採用は比較的順調でした。
一方で課題だったのは離職率。原因を分析したところ、評価基準が抽象的な
ため、社員は納得感を十分に得られていないのではないかと考えました。」
早速、評価制度のブラッシュアップに着手。
第1ステップでは経営層へ対し、人的資本経営とは何か、自社の理念
「本物を創造」を踏まえて何に取り組むべきなのか、といった
全体イメージをすり合わせた。
その次の第2ステップとして、現在進めているのは「明文化」だ。
新入社員、主任級、部長級など七つある等級に対し、それぞれの役割を定義付け。
目に見える基準を作ることで、評価される側はもちろん、
評価する側も納得感が高まると見込んでいる。

実務面を担うのは、人材開発課の掛谷課長。元々は人材業界で
コンサルティングなどに従事していたが、人事部の発足と同時に入社した。
「等級制度そのものは良い仕組みだと感じていました。
だからこそ社外の知見などを生かし、より分かりやすい形にできれば、社員の
エンゲージメント(帰属意識や意欲)はもっと高められると思いました。」
掛谷課長は続けて語る。
「各等級の役割をハッキリさせたら、第3ステップでは昇格・昇給のルールも
明確化する計画です。モチベーションに直結する領域なので、
ここは特に重要視しています。そして最終ステップは、上司など
評価者サイドに向けた研修を通して、制度全体を社内に浸透させること。
広島県の『人的資本経営促進補助金』も、この四つのステップを進めるために
活用させていただいています。」
年内には第4ステップまで完了し、翌2027年の頭には全社にアナウンス。
同年4月から本格運用を計画しているという。
住吉常務は、「当社は昔から売上高や利益なども含め、さまざまな経営指標を社員に公開するスタンス。現状を知ってもらうことで、一人一人が仕事への責任感を強くするという考え方です。人的資本経営に関しても同様。人的資本開示レポート*を“見られている”という意識が、より良い会社づくりに結び付くと考えています。」
*人に関する方針や取組内容をまとめたレポート

評価制度の他にも、社員の定着や成長のための取り組みは数多い。
研修は新入社員向け(8日間)に始まり、若手、次世代リーダー、中間管理職といった階層別で月1回、
学びの機会を用意。内容の充実もさることながら、社内の意識が変わりつつあると住吉常務は手応えを示す。
「研修の受講はトップダウンではなく、基本的には受けたい・受けさせたい人を募る形です。
以前は現場から『目の前の業務が忙しいから研修に人は出せない』のような反応もありました。
しかし管理職、幹部クラスが会社全体の成長や、将来のことを考えるようになってくれて、そうした声はかなり減りました。」
数値にも効果が表れ始めた。自動車学校など教育カンパニーでは、従来15%ほどだった離職率が、直近では10%を切ることがほとんど。事業会社によっては0%のところもある。また男性社員の育児休業取得率は2022年の20%から、2024年は44.4%にアップ。ワークライフバランスが整ってきている。

雇用形態にかかわらず、全社員が悩み事を相談できる「ほっとライン」制度も特徴的だ。
対面だけでなく電話、メール、オンラインなど手法を選べ、掛谷課長ら窓口メンバーが
日々のちょっとしたモヤモヤに寄り添う。
「もちろん、意見を聞いて終わり、ではありません。『実はこんな仕事がしてみたい』、
『自分の得意分野を生かしたい』といった声に応えるべく、2026年7月から社内公募制度を始めました。
今は広報と、DX推進の担当者を募っています。社員の可能性を広げることは、
本人と会社の双方にとって大きなメリットになります。」
こうした仕組みは今後、さらに拡充させていきたいと住吉常務は語る。「まだ全て計画段階ですが、まずは社内インターン制度。例えば自動車学校の指導員に本社の業務を体験してもらうイメージです。自身の適性など新しい気付きを得て、公募制度に手を挙げる人が出れば。また、社内での副業という形も検討しています。これも自動車学校を例に出すと、しっかり働いて給料を稼ぎたいという人が、空いた時間にパワーアップスクールでクレーン操作などを教えたり、農業への従事などが進んだりすれば良いですよね。」
2030年までに目指すとしていたグループ年商100億円を前倒しで達成。経常利益20億円を新たな目標として掲げ直したところだ。規模が拡大すれば人も増え、より多様な仕組みでキャリアを支えることが求められる。住吉常務は未来を見据え、こう話す。
「しょうゆ製造を始めてから140年近く。いつの時代も“人”が中心となり、教育とも共通の“安全”という価値を届けてきました。人への投資を惜しまず、これからも挑戦を続けていきます。」