このページの本文へ
ページの先頭です。

ハウス内の光環境を適正化する自動調光システム

印刷用ページを表示する掲載日2019年1月4日

研究成果一覧へ戻る

背景

広島県内の夏秋トマト栽培では、多くの産地で夏季の高温および強日射による生育、収量および果実品質の低下が問題となっています。
そこで、既存のアーチ型パイプハウスにも導入でき、日射量に応じて遮光資材を自動的に開閉し、植物の生育に好適な施設内光環境とする「自動調光システム」を実用化しました。

内容

1.本システムは、日射量に応じて遮光資材を自動開閉し、植物の生育に好適な施設内光環境に近づけるシステムです(図1)。
1)制御部(日射量センサと制御盤)および駆動部(遮光資材とモーター駆動のカーテン装置)から構成されます(図2)。
2)制御部は、遮光資材の開閉を時間および日射量で制御でき、日射量制御については、作目に応じた開閉時の日射量(上限値と下限値)とセンサの感知間隔などを設定します。また、AC200V用の制御盤は1台で1基、DC24V用の制御盤は2基のモーターを制御でき、DC24V用は増設器により多数のモーターが接続可能です。
3)駆動部は、DC24VまたはAC200Vの駆動モーターで遮光資材を開閉する市販のカーテン装置が利用でき、一般的なアーチ型パイプハウスや重装備なガラス施設にも設置が可能です。

2.夏秋トマト栽培において、図3に示した設定条件で遮光資材を自動開閉した場合には、強日射による生育低下、ならびに裂果および尻腐れ果等の発生軽減により、夏季の常時遮光と比較して可販果収量が約15%(約35万円/10a(収量12t/10a、平均単価210円/kg))増加します(図3)。
特に曇天と晴天の繰り返しが多い年では総収量の増加等の効果が高まります。

3.本技術は農研機構生研センター革新的技術実証事業(平成26~27年度)において開発しました。

図1~図3

図中の垂線は、総収量の標準誤差(n=4)
規格外品:尻腐れ果、乱形果、チャック果、窓空き果、10mm以上の放射状裂果、同心円状裂果の重量の合計値
【耕種概要】
2014年:播種;3/26、定植;5/14、収穫;6/27~12/15
遮光区の遮光と調光区の稼働期間;7/17~8/31
2015年:播種;3/25、定植;5/11、収穫;6/22~11/30
遮光区の遮光;7/19~8/31、調光区の稼働;5/11~11/30
【遮光資材の遮光率】35%
(らーくらくスーパーホワイト、日本ワイドクロス(株))
【調光区の使用装置】
市販のカーテン装置(SHハンディ、(株)誠和)
自動調光制御盤(日射操作くん、(株)寿エンジニアリング)
【調光区の制御方法】
・センサ設置位置;施設内中央部の高さ約1.8 m
・上限値と下限値:
2014年;197と284 W・m-2(PPFD900と1300 μmol・m-2・s-1、45と65 klx)
2015年;219と295 W・m-2(PPFD1000と1350 μmol・m-2・s-1、50と67.5 klx)
・センサ感知間隔:2014;5分、2015年;10分

留意点

・作目に応じて遮光資材を開閉し日射量などを設定する必要があります。
・本システムの制御盤「日射操作くん」は、2017年度から大信産業(株)(尾道市美ノ郷町)より販売しています(図2)。
・システムの導入コストは、アーチ型パイプハウス(駆動モーターDC24V)の場合、駆動部は市販品で約60万円/10a(遮光資材約20万円、カーテン装置約30万円、モーター約10万円、施工費別)、制御盤は15~20万円/台(1台でモーター2基10aを制御、要問合せ)と試算され、施設の装備に応じた必要資材のみの購入で対応できます。

担当

広島県立総合技術研究所農業技術センター 栽培技術研究部

お問合せ先

広島県立総合技術研究所農業技術センター 技術支援部/栽培技術研究部
TEL: 082-429-0522/082-429-3066 メールでのお問合せはこちら

おすすめコンテンツ