減圧を用いない凍結含浸法「常圧含浸法」の開発
印刷用ページを表示する掲載日2023年10月27日
下久由希、坂本みのり、宮地夏奈、金崎真悠、渡邊弥生、中津沙弥香、柴田賢哉
1 背景
従来の凍結含浸法は減圧工程が必要となるため、装置の導入コストがかかること、処理が律速になることなどが技術導入における課題となっていました。
そこで、温度変化に伴う食材内空気の膨張収縮を利用して常圧下で物質導入する「常圧含浸法」(特許6920706号)を開発しました。
2 方法
試料としてトリムネ肉(2cm角)を用いて、試料の加熱温度と導入液の温度が物質導入量に与える影響を調べました。導入液は、プロテアーゼを0.05%(w/v)になるように食塩水に溶解したものを使用し、各条件で処理した後に4℃16時間酵素反応を行い、80℃で酵素を失活しました。室温に冷ました後、クリープメータ((株)山電)を用いて物性測定を行いました。
3 結果
- 試料の加熱温度の影響
各温度(10、30、50、70、90℃)に加熱した試料を冷却した導入液に浸漬した結果、試料の加熱温度が高いほど、最大応力が小さく、試料の硬さが軟らかくなりました。
- 導入液の温度の影響
90℃に加熱した試料を各温度(10、30、50℃)に保温した導入液に浸漬した結果、導入液の温度が低いほど、最大応力が小さく、試料の硬さが軟らかくなりました。
以上の結果から、食材の温度をより高く、導入液の温度をより低くすることで物質導入量が多くなることがわかりました。
4 食品企業へ向けたPR
- 減圧が不要な簡易な方法!
常圧含浸法は、一般的な加熱機器と冷凍冷蔵庫のみで処理ができるため、特別な設備投資は不要です。 - 高分子物質でも急速に導入可能!
従来の凍結含浸法と同様に酵素や油脂などの高分子物質でも食材内に急速に導入可能です。
処理例:軟化酵素を導入することで、見た目はそのままで簡単につぶせる軟化食品を製造できます。
*食材への物質含浸技術の開発 ~凍結含浸法,高温急速含浸法,常圧含浸法~