佃煮の有機酸効用
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Q 佃煮に対する有機酸の効用について教えてください。
A 佃煮を含む加工食品に通常利用される有機酸は、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、グルコン酸及びアスコルビン酸です。これらの有機酸を佃煮に単用または併用した場合の効用としては、次のようなことが考えられます。
pHの調整・風味の矯正効果があります。有機酸は、佃煮中の水に溶けて、陽イオンと陰イオンとになります。佃煮によく利用される酢酸を例にすると、次のようにイオン化し、生成した陽イオンの水素イオン(H+)が酸味の本体として働き、また、pHを下げる役目を果たします。
CH3COOH ⇄ CH3COO-+H+
有機酸を加えることにより、佃煮のpHは下がり、味全体がひきしまります。ただし、佃煮の場合は酸味をつけるために有機酸を利用するのではないことから、酸味を感じない程度(限界pH 4.6位)に添加量を加減します。また、有機酸自体が持っているある程度の抗菌性とpHの低下により、細菌が繁殖しにくくなります。
なお、酸味の強さは有機酸によって異なります。クエン酸の呈味を100とした場合、これと同一呈味となる各有機酸の濃度比は、酒石酸68~71、フマル酸54~56、リンゴ酸73~78、コハク酸86~89、乳酸104~110、酢酸72~78、グルコン酸(純度100%換算)282~341、アスコルビン酸208~217です1)。
- 酸化防止効果があります。アスコルビン酸(ビタミンC)は、その例です。クエン酸は、酸化防止剤の助剤として利用されます。
- 変色防止効果があります。クエン酸は、佃煮の変・褐色を促進する重金属を封鎖する機能(キレート作用)を持っています。
- 漂白効果を高めます。大豆、ゴボウなどを漂白するのに亜硫酸塩を用いますが、このときに有機酸を併用しますと、漂白料の活性を高めることができます。
引用文献
1)日本食品工業学会誌Vol.16(2)(古川秀子、 佐宗初美、 前田清一、 二宮恒彦、日本食品工業学会、1969、p. 63-68)
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