大腸菌群
Q 大腸菌群とは、どんな菌のことをいいますか。また、食品中の大腸菌群を検査する意義について教えてください。
A 大腸菌群とは、生埋的性質や形態的特徴が、次のような菌のことをいいます。
グラム陰性の無芽胞(芽胞をつくらない)桿菌で、乳糖を分解して酸とガスを産生する、好気性または通性嫌気性(酸素があってもなくても発育する)の細菌です。このような性質の菌には、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター属(Enterobacter、以前はAerobacter属として扱われた)、サイトロバクター属(Citrobacter)などがあります。
従来、食品中に大腸菌群が検出されることは、直接あるいは間接的に人や動物の糞便で汚染されていること、つまり消化系疾病の病原菌が存在している可能性があるとみなされていました。しかし、大腸菌群の中には糞便とは直接関係のない菌も存在することから、今日では安全性の指標というよりも環境衛生管理上の汚染指標菌と考えるのが妥当とされています。
加熱殺菌した食品において大腸菌群が検出された場合、加熱処理が不十分であったか、加熱後の二次汚染など取り扱いの悪さを示します。一方、非加熱の食品、例えば、野菜類から、よく大腸菌群が検出されることがあります。菌を調べてみると、エンテロバクター・エアロゲヌス(E. aerogenus)が多数検出されます。この菌は大腸菌群の一つですが、土壌などが本来の生息場所のため、野菜類に検出されやすいのです。カキにもこの菌がほとんど常在しています。
したがって、このような食品の場合、糞便汚染指標として大腸菌群でなく大腸菌を検査したら良いのです。大腸菌は大腸菌群の内44.5℃で発育する菌群で、人や動物の糞便に存在する確率が高く、食品中の存在は、直接または間接的に比較的新しい糞便汚染があったことを意味します。なお、この大腸菌は必ずしも細菌分類学上の大腸菌とは一致しません。
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