食品の一般生菌数について
Q 食品の一般生菌数とは何ですか。また菌数計測結果の意味と、その取扱いに関する注意点について教えてください。
一般生菌数とは
一般生菌数とは、標準寒天培地を用いて、好気的な条件下で35±1℃、48±3時間の培養で発育した中温性好気性菌数のことで、食品の微生物汚染の程度を示す代表的な指標です。食品の菌数(生菌数)というと、一般生菌数のことを言います。
菌数計測結果の意味
一般生菌数は、食品安全性、保存性、衛生的取扱いの適否などを総合的に評価する際の有力な手段になります。菌数が多い場合は、その食品の加工、製造、輸送、貯蔵などの過程で衛生的かつ適切な取扱いがされていなかったり、温度管理が不適切であったことが示唆されます。
菌数計測結果の取扱いに関する注意点
一般生菌数の結果の評価は食品の種類によって異なります。
カット野菜や浅漬のような非加熱の食品は原料由来の菌が残存するため、正常品でも104~105個/g程度になることがあります。
検出された菌がその食品中で増殖するとは限りません。
ふりかけ、珍味等乾燥食品において、乾燥に強い芽胞菌は一般生菌数として計測されますが、乾燥食品は水分活性が低く、芽胞菌が増殖することはないため、通常は問題ありません。pHが低い酸性食品(ジャム等)でも同様です。
一般生菌数として計測されない菌もたくさんいます。
食品中で低温性細菌、高温性細菌、偏性嫌気性菌、好塩性細菌等が増殖した場合、一般生菌数を測定する標準寒天培地での培養では、通常不検出となります。そのため、一般生菌数が検出限界(300個/g)以下であっても食品が腐敗する場合があります。このような菌を検査するときは、対象の菌の性質に合わせて培地組成、培養方法、培養温度を変える必要があります。
常温流通食品の製造における注意点
「どのような食品でも容器に詰め、煮沸殺菌し、一般生菌数が検出されなかったら(検出限界以下)、常温流通しても大丈夫」と考えるのは間違いであり、大変危険です。以前、常温流通食品で、耐熱性の食中毒菌であるボツリヌス菌が原因で死者が出るような大きな食中毒事故が発生した例もあります。
食品を容器に入れ密封し、常温流通する場合、食品の水分活性が0.94を超え、かつ、pHが4.6を超えるものはボツリヌス菌を死滅させるため、120℃・4分相当以上の加熱殺菌(レトルト殺菌)を行うことが法律で定められています(厚労省 食基発第0630002 号/食監発第0630004 号)。なお、ボツリヌス菌は偏性嫌気性菌のため一般生菌数として検出されません。レトルト食品の微生物検査は一般生菌数ではなく、別の方法(チオグリコール酸培地を用いた試験)で行われます。
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