清酒もろみの管理
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Q 清酒もろみの管理で、BMD値を用いた手法について教えてください。
A 清酒もろみでは、麹由来の酵素による米デンプンの糖化と、酵母による発酵の2つの過程が並行して進みます(並行複発酵:図1)。このため、もろみ管理では麹の酵素と酵母の活動の制御が求められます。
図1 清酒の糖化・発酵過程
糖化と発酵のバランスは、もろみの比重を毎日測定することで把握できます。蒸米が溶解し、ブドウ糖が増えると比重は増大し、ブドウ糖がアルコールに変わると比重が減少するため、糖化と発酵のどちらが優勢かを判断できます。
もろみの比重は、ボーメ度として測定されます。留後日数で3~4日目までは、糖化が先行するのでボーメ度が高まります(図2)。もろみ期間を通じて、最も高いボーメ度を最高ボーメと言い、7~8が標準とされます。以後、ボーメは切れ始めます(ボーメ度が低下することを、ボーメが切れると表現します)。
始めは切れ方が鈍く、1日に0.4~0.6度程度ずつ低下します。発酵が最も強い時期には1日に0.5~0.7度程度ずつ低下しますが、終盤には低下量が0.2~0.5度程度となり、切れ方は鈍くなります。
図2 ボーメ度及びアルコール度の推移イメージ
ボーメの切れは、BMD値で表現すると判断が容易になります。
BMD値は次の式で表され、これをグラフ化したものはB曲線と呼ばれます(図3)。
BMD値=留後日数×ボーメ度
(例:10日目のボーメが4の場合のBMD値は40=10×4)
図3 B曲線の推移イメージ
B曲線には、適正な型があるわけではありません(図3)。
過去のもろみ経過から、仕込みごとに標準的なB曲線のパターンを作成し、このパターンから大きくずれることがないように管理します。B曲線のピークが予定よりも高くなると考えられる場合、つまりボーメの切れが悪い時には発酵を促進する必要があります。この場合は温度を徐々に上昇させるとともに、できる限り速やかに追水をします。
逆に、B曲線の低下が標準パターンより速く進む場合は、進みすぎている発酵を抑える必要があります。この場合は1日0.5~1.0℃を目安に温度を下げてください。
また、標準パターンとのずれが大きい場合は、麹の酵素力価、酵母の発酵力、蒸米の状態などが影響していると考えられます。再度、仕込み前の工程を見直す必要があります。
参考文献
財団法人 日本醸造協会「増補改訂清酒製造技術」
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