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8-7 休職後も私傷病が完治していないときは,どうなるか|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

労働相談Q&A

8-7 休職後も私傷病が完治していないときは,どうなるか

質問

現在,病気のため休職中です。会社の傷病休職規定では休職期間は6か月間で,まもなく休職期間が終了します。ほとんど回復しましたが,まだしばらく通院が必要で通常通りの勤務はできそうにありません。このような場合,解雇されても仕方ないのでしょうか。

回答

<ポイント!>
1. 休職とは,従業員が私病等により労務の提供ができなくなった場合に,一定期間,従業員の地位を維持したままでその就労の義務を免じるものです。
2. 制度の有無や内容については,会社の定めに委ねられています。
3. 復職には原則として以前の職務を行える程度に回復していることが必要ですが,使用者に一定の配慮が求められることもあります。
 
休職制度とは…
休職とは,従業員が私傷病などにより労務の提供ができなくなった場合に,従業員の地位を維持したままでその就労の義務を免じるものです。
法的には,労働基準法施行規則第5条1項で休職を定めている場合は,労働契約の締結に際して明示しなければならない(労働基準法第15条)とされているだけです。
休職制度には,「傷病休職」(業務外の病気や負傷による),「事故欠勤休職」(その他の業務外の事故による),「起訴休職」,「出向休職」など様々なものがありますが,制度の有無や取扱いは,それぞれ会社によって異なります。
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傷病休職について…
傷病休職は,解雇猶予期間としての性格を持っていると言えます。
一般的には,病状が回復し休職事由が無くなれば復職となり,また,休職期間満了時に回復していなければ解雇(又は自然退職)となります。もっとも,休職期間が延長されれば,話は別です。
 
復職には完治が必要か
原則的には従前の職務を支障なく行える状態に復帰することが必要です。ただし,休職期間満了時にそうした状態に達していなくても,当初は軽易業務に就かせればほどなく通常業務へ復帰できるという程度に回復している場合には,使用者は解雇ないしは退職処分をしばらく猶予し,様子を見守ることを求める裁判例もあり(エール・フランス事件・東京地判昭和59年1月27日),むしろ,最近ではこのように「労働者にやさしい」考え方が有力になっているものと思われます(全日本空輸事件・大阪地判平成11年10月8日ほか)。
なお,私傷病で働くことができなくなった場合,使用者は直ちに休職を命じることができる訳ではありません。その労働者が現在ついている職務は無理でも,他の職務なら働くことが可能な場合もあるからです。休職の間は無給となることもありますので,労働者が納得していればよいのですが,そうでないときは,使用者には,他に働く場所がないのか検討してみる必要があるのです。次に紹介する「片山組事件・最判平成10年4月9日」は,この趣旨を明らかにしている判決です。
判決では,「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合,現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても,その能力,経験,地位,当該企業の規模,業種,当該企業における労働者の配置,異動の実情及び難易等に照らして,当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ,かつ,その提供を申し出ているならば,なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である」と判断され,そのような場合に,使用者はその受領を拒否できない(言い換えれば,休職命令を出すことができない)としています。
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傷病休職中の賃金は…
傷病休職期間中の賃金については,法律上の保障はありません。会社によって無給とされたり,一定の保障がなされたりするなど様々です。なお,健康保険によって一定期間,標準報酬日額の3分の2に相当する額が傷病手当金として支給されます(健康保険法第99条,第104条を参照してください)。
 
こんな対応を!
解雇の理由が「やむを得ない事由」とまで言えるのか,他の業務に従事するなどの別の方法がないのか,会社に勤務を申し出てよく話し合ってみましょう。
解雇に応じることになった場合は,労働基準法の規定どおり解雇予告手当を支払うよう求めてください。
 
更に詳しく
今後の病状回復の見込みが重要です。診断書を提出し,復職を申し出て会社と誠意をもって話し合ってください。
復職に当たっては,一定期間の業務軽減の配慮や,業務変更,配転などについても考慮した話し合いが必要と思われます。