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8-2 経歴を詐称したり内緒でアルバイトをすると解雇されるか|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

労働相談Q&A

8-2 経歴を詐称したり内緒でアルバイトをすると解雇されるか

質問

会社には,求人申込時に提出した履歴書の最終学歴に,高等学校中退の事実を偽り高等学校卒業として採用され勤務しています。また,現在会社には内緒でアルバイトをしています。これらの事実が会社に知れると解雇されるのでしょうか。

回答

<ポイント!>
1. 会社がその事実を知っていたなら採用しなかったと思われるほどの経歴詐称であったか否かが懲戒解雇判断の重要な基準の一つとなります。
2. 会社の経営秩序への影響がなく,労務提供上の支障を生じない程度の二重就職(兼業)は,懲戒解雇の対象とはなりません。
 
経歴詐称
判例は,労働関係においては信頼関係が重要との認識のもとに,経歴詐称は信頼を裏切るものであり,また,適正な人員配置を誤らせることにもなりかねないとして,懲戒解雇の事由になり得るとの立場に立っています(炭研精工事件・最一小判平成3年9月19日)。
もっとも,どんな経歴詐称でも懲戒解雇の事由となるというのではなく,「重要な経歴」,すなわち,使用者があらかじめその事実を知っていたなら採用していなかったであろう程度の「経歴の詐称」に限って懲戒解雇の事由となるとしています。そして,学歴は職歴とともに,労働者の評価に当たって有力な基礎資料として重視され「重要な経歴」に当たると考えています。
また,裁判例の中には,経歴詐称が違法となるのは,経歴詐称によって実際に適正な人員配置が妨げられたなど(国家資格が必要な職務に無資格者を配置することとなったなど)実害が生じた場合に限られるとするものもありますが(西日本アルミニウム事件・長崎地決昭和50年7月11日),実害がなくとも抽象的に企業秩序が侵害されるおそれがあれば十分だとするものもあり(弁天交通事件・名古屋高判昭和51年12月23日),見解が分かれています。
なお,経歴詐称があっても,採用後長期間,大過なく勤務してきた場合には,経歴詐称が幾分かは「治癒」されると考えることもできるのですが(東光電気事件・東京地決昭和30年3月31日),判例の大勢は,そのように考えていません(神戸製鋼事件・大阪高判昭和32年8月29日など)。
このようにみてきますと,判例による限り,あなたの経歴詐称は,懲戒解雇に値すると判断される可能性が高いようです。
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兼業行為
企業の就業規則等で二重就職(兼業)が禁止されている場合であっても,本来就業時間外は,労働者の自由な時間であり,拘束されないことから,二重就職(兼業)したことは,懲戒解雇となり得る事由とは言えません。しかし,兼業の内容によっては,会社の経営秩序に影響したり(企業の信用・体面を損なう恐れがあるアルバイトなど),労務提供上の支障を生じたりする(アルバイトが深夜におよび翌日の勤務に支障が生じるなど)が場合もあるので,その程度によっては禁止に違反したとして懲戒解雇の対象となり得ます(営業等への具体的影響がないとして解雇無効とした裁判例に,国際タクシー事件・福岡地判昭和56年9月17日,本務に支障をきたすおそれが高いとして解雇有効とした判例に,小川建設事件・東京地判昭和57年11月19日などがあります)。
 
こんな対応を!
経歴詐称,二重就職(兼業)いずれも会社に内緒にしていることは,使用者・労働者間の信頼関係を崩すことになり,内容によっては懲戒解雇に至る可能性があります。会社に事情を説明し,誠意をもって話をすれば,会社との信頼関係を維持することは可能であり,早いうちに実行に移されることをお勧めします。