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4-2 勤め続けても給料がまったく上がらない|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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4-2 勤め続けても給料がまったく上がらない

質問

私は,ある会社で事務職員として勤めています。勤め続けてもう5年にもなるのですが,基本給は,まったく上がっていません。友達に聞くと,毎年,給料は上がり続けているとのことです。何年経っても給料が上がらないというのは,問題ないのでしょうか。

回答

<ポイント!>

事業主は,昇給に関する事項を労働者に明示しなければなりませんが,必ず昇給させなければならないということではありません。

「昇給」は明示すべき事項

使用者は,労働契約を締結するに当たって,賃金に関しては,決定・計算・支払の方法,締切り・支払の時期,昇給に関する事項を,明示しなければなりません。なお,昇給に関する事項を除き書面の交付が必要です。(労働基準法第15条,同法施行規則第5条)。
また,常時10人以上の労働者を使用する使用者は,同様の事項について就業規則を作成しなければなりません(同法第89条)。

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定昇とベア

賃金額の上昇に関連して,よく混同されがちなのが,定昇とベアです。
定昇とは,労働協約や就業規則などであらかじめ定められた金額を増額させることをいいます。年齢給で,年齢が上がることに伴って給料表において適用される賃金額が上位ランクのものにシフトするのが,その典型例です。制度的に約束された昇給ですので,原則として全員が何らかの昇給対象になります。通常は,一定の期日に一斉に昇給を行うので,定昇(定期昇給)と呼ばれます。
これに対して,ベースアップとは,物価の上昇や生産性の向上,労働組合との交渉の結果などによって,賃金表そのものを書き換えることをいいます。つまり,賃金の水準そのもの(ベース)を引き上げる(アップする)ことです。

昇給の必要性

就業規則や賃金規程に昇給の定めがある場合,事業主は必ず昇給を行わなくてはいけないものでしょうか。
就業規則の定めが,「昇給は,毎年4月1日付けで基本給について行うものとする。ただし,会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には,この限りでない。」などというように,会社の業績等を勘案した上で昇給を行うことがある旨の表現になっている場合は,必ずしも定昇を行う必要はないともいえます。
しかし,「昇給は,毎年1回,4月に行う。」などのように定めた場合は,昇給のあり方を例示したものであって,具体的な昇給請求権は当然には発生しないとする見解がある一方,昇給する旨の規定がある以上,昇給しないことは,規則を改定しない限り認められないとする見解があります。
いずれの見解が正しいかはケースにより,文言だけでは決められませんが,ここまで規定が明確な以上,特段の事情(例えば,定めを設けるときに例示ということが明らかにされており,昇給も毎年1回4月に必ずしも行われていなかったなど)がない限り,後者の見解が妥当であると思われます。
まして,この規定のもとで,これまで長期にわたって,毎年必ず昇給を行っており,従業員の側も昇給するものと期待しているような場合には,従業員の同意を得ないで賃金を据え置くことはできないものと考えます。

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こんな対応を!

まず,就業規則や賃金規程に,昇給について,どのような定めがなされているか確認してみましょう。その上で,規定に沿った昇給を行うよう会社側に求めましょう。
昇給について何ら明らかにされていない場合は,就業規則への明示を求めましょう。
また,会社の業績や同業他社の給与の状況などを考慮した上で,労使の交渉によって昇給の実施を求めていかれてはいかがでしょうか。