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3-7 ユニオン・ショップ協定による解雇は有効か|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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3-7 ユニオン・ショップ協定による解雇は有効か

質問

労働組合の基本路線に納得のいかない私は,組合から脱退しようと考えているのですが,私の会社と労働組合とは,ユニオン・ショップ協定を結んでいるらしく,組合を脱退すると解雇されると聞きました。私としては,「団結権」があるなら「団結しない権利」もあると思うのですが,ユニオン・ショップ協定に基づいて解雇されてしまうのでしょうか。

回答

<ポイント!>

ユニオン・ショップ協定がある場合には,労働組合からの脱退者や除名者を会社が解雇することは,一般的に有効と考えられています。

ユニオン・ショップ協定とは

ユニオン・ショップ協定(以下「ユシ協定」といいます。)とは,会社に雇用された労働者は必ず労働組合に加入しなければならず,労働者が労働組合に加入しない場合や,組合から脱退したり除名されたりした場合には,その労働者は解雇されるという制度です。
労働組合法第7条第1号ただし書きは,「労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において,その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とすることを妨げるものではない。」として,過半数の労働者で組織されている組合にユシ協定の締結を認めています。

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ユシ協定の効果

確かに,労働者には団結権が保障されている一方,「団結しない自由」もあるのですが,判例や多くの学説では,憲法で保障された団結権を擁護するという見地から,ユシ協定に基づき,会社が組合からの脱退者や除名者を解雇することは有効としています。

尻抜けユニオン

ただ,ユシ協定を結んでいるところであっても,実際には,例えば,「組合員資格を失った者の解雇については,労使が協議して決める」とか,「会社が解雇を不適当と認めたときには,解雇しないことがある」というように,解雇に例外を設ける場合も多く見受けられるようです。このようなユニオン・ショップを俗に「尻抜けユニオン」といいます。

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組合が複数存在する場合

企業内に複数の労働組合が存在する場合,多数組合が締結したユシ協定の効力は,少数組合に所属する組合員にも及ぶのでしょうか。この点,学説の意見は対立しているようですが,判例は,「労働者には,自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由」があるから,「ユニオン・ショップ協定のうち,締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが,他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は,右の観点からして,民法90条の規定により,これを無効と解すべきである。」としています(三井倉庫港運ショップ制解雇事件・最一小判平成元年12月14日)。

こんな対応を!

このように判例や多くの学説は,ユシ協定に基づく脱退・除名者の解雇を有効と解しています。
多数組合のやり方に不満があるのなら,まずは組織内でその変更のために努力を尽くし,それが不可能ないし困難と判断されるのなら,少数組合があればそれに加入し,少数組合がない場合や,あっても意に沿う組合がない場合には,新たに組合を立ち上げられてはいかがでしょうか。