3-5 合同労組からの団体交渉の申し入れには,応じなければならないか|労働相談Q&A
3-5 合同労組からの団体交渉の申し入れには,応じなければならないか
質問
4月の人事異動で長年経理を担当していた従業員を,営業に配転したところ,外部の労働組合から交渉の申し入れがありました。我が社には,労働組合はありませんが,交渉を受け入れなければなりませんか。また,組合員の名簿を要求したら,不当労働行為だと言われました。
回答
<ポイント!>
- 合同労働組合は1人でも入れる労働組合です。
- 従業員が1人でも入っていれば,会社内に労働組合があるなしにかかわらず合同労働組合には団体交渉権があり,使用者は団体交渉に応じる義務があります。
- 使用者として,団体交渉に応じるべき相手かどうか確認することは問題ありません。
合同労働組合とは
合同労働組合とは,一定地域に存在する中小零細企業の労働者が,個人加入を原則として,企業の枠を超えて組織する労働組合です。日本の労働組合は,企業別組合が一般的ですが,合同労働組合の場合,複数の企業や異業種の企業の労働者がメンバーとなっています。
そして,労働組合がその組合員のために,組合員を雇用する使用者に団体交渉を求めることは当然であり,合同労働組合も企業別組合と同様に交渉資格を有しています。この場合,あなたの会社の従業員が全員ないし多数加入していることは条件ではなく,一人でも従業員が加入していれば,この合同労組は交渉資格を有し,会社は団交の申し入れに応じなければなりません。また,このことは,あなたの会社に労働組合があろうとなかろうと,関係はありません。
駆け込み交渉
それでは,従前から合同労組の組合員であったのではなく,解雇されてから合同労組に加入し,この合同労組が団交を申し入れてきた(「掛け込み交渉」と呼んでいます。)ときはどうでしょうか。
一般的には,退職した者と使用者との間の雇用関係は終了しており,その意味で「雇用する労働者」ではありませんが,例えば労働契約関係の継続の有無(不当解雇としてその効力を争っている場合など)や,未払い賃金など労働契約の精算について争いがある場合には,その範囲内において,「雇用する労働者」であると解され,使用者は団体交渉に応じる義務があるとされています。ただ,組合の団交申し入れは,解雇後「社会通念上合理的な期間」になされる必要があります。「著しく時機に遅れた」申し入れには,使用者は応じる義務がないのです(「社会通念上合理的な期間」はどの程度の期間をいうのか。これは諸般の事情を考慮して判断されますので,一概に数字で示すことは困難ですが,例えば,日立メディコ事件・中労委命令昭和60年11月13日では契約更新拒絶後10年を経て組合に加入し,その4か月後になされた団交申し入れを「合理的な期間」外とし,一方,日本鋼管鶴見造船所事件・最三小判昭和61年7月15日は解雇後6年10か月と4年5か月経過した従業員についての団交申し入れを「期間」内としています)。
合同労働組合組合員名簿の要求
使用者としては,団体交渉に応ずるべき相手かどうか確認するため,自社の従業員が加入しているかを調査するのは,また当然といえましょう。
その際,組合員名簿の提出を求めることは問題ありませんが,提出拒否のみをもって団体交渉に応じないことは,不当労働行為となる可能性があります。使用者は,その従業員の中に組合員がいることがわかれば,組合員名簿が提出されなくても団交を始めなければなりません。
こんな対応を!
御質問の労働組合は,合同労働組合と思われますが,貴社の従業員が加入しているならば,交渉に応じなければなりません。
また,名簿の要求については,貴社の従業員が加入しているかどうかを確認するため,すなわち,当該合同労組に交渉権限のあることを確認するためであれば問題はありません。ただし,組合員全員の名簿を求めるのではなく,貴社の従業員が組合員であるか否かを確認するに留めましょう。
そして,誠意を持って話し合えば,解決の糸口が見つかるかもしれません。また,たとえ交渉が決裂したとしても,それは話し合いの結果であり,合同労組側と誠実に交渉することは必要ですが,合意に達することまで求められるものではありません。