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3-1 業務命令権を有する使用者とは,どのような範囲の者か|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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3-1 業務命令権を有する使用者とは,どのような範囲の者か

質問

私は,ある会社に勤務していますが,同じ職場の先輩の主任が,私の担当業務の処理について命令してきます。当初は善意と思い,特に気にしていなかったのですが,最近,この処理をめぐって,職場でトラブルがありました。私は,誰の指示に基づいて,担当業務の処理をすればよいのでしょうか。また,どんな指示についても,従わなければならないのでしょうか。

回答

<ポイント!>

業務命令は,特定の行為を使用者として明確に命ずる点に意義があり,具体的には,工場長,部長,課長,係長など,一定の権限を与えられている者が発するものとされています。

業務命令とは

業務命令とは,労働契約の内容を実現するために,特定の行為を従業員に命ずることをいいます。したがって,業務命令権は,労働契約の範囲内で認められます。
業務命令は,労務提供に関する指揮命令を中核としますが,それよりも広く,例えば調査への協力,健康診断の受診など,労働者の本来的労務提供とは必ずしも直接に関連しない事項を対象とすることもあります。
判例によれば,「使用者が業務命令を発しうる根拠は労働契約にあり,労働者が当該契約によって労働力の処分を許諾した範囲内の事項であれば,使用者に業務命令権が認められる。」(電電公社帯広局事件・最一小判昭和61年3月13日)と判示されています。

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業務命令の拘束力

なお,命令事項の性格や業務上の必要性などからみて,合理的限度を超える業務命令は,許諾の範囲外として拘束力を否定されることとなります(電電公社千代田丸事件・最三小判昭和43年12月2日)。
また,贈賄,談合,官庁への虚偽報告などの違法行為や,選挙応援,宗教活動など労働者の個人的自由の侵害に当たる行為も,業務命令で強制することは許されません。
一方,本来の労働義務の範囲内の作業であっても,ことさらに労働者に不利益を課することを目的として命じられた場合には,その業務命令は,権利の濫用となり不法行為が成立することがあります。(東日本旅客鉄道事件・最二小判平成8年2月23日)

業務命令権を有する者

業務命令は,特定の行為を使用者として明確に命じる点に意義があることから,その性格上,一定の権限が与えられている者(具体的には,工場長,部長,課長,係長など)が,発するものとされています。

こんな対応を!

業務命令は,労働契約を前提としていることから,この業務命令及び命令権者について疑義が生じた場合,労働契約と命令権者の権限について確認し,問題があると考えられる場合は,関係者の間で話し合いをもって解決することが必要です。