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1-5 3年を超える期間を定める労働契約は有効か|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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1-5 3年を超える期間を定める労働契約は有効か

質問

私は自動車メーカーに雇用され,自動車部品の組み立て等の作業を行っています。雇用される際,労働契約を結びましたが,契約書には,「契約期間は5年間とする」と記載されていました。法律では,3年を超えて雇用契約を結ぶことはできないと聞きましたが,今回の雇用契約は問題ないのでしょうか。

回答

<ポイント!>

  1. 労働契約については,期間を定めることも,定めないことも自由です。
  2. 期間を定める場合は,最長3年間を原則としています。なお,暫定措置として(労基法第137条参照),1年を超える期間の労働契約を締結した場合は,締結後1年を経過すれば,労働者は何時でも退職することができるとされています(これに対し,使用者は,契約期間中は,やむを得ない事由がない限り,労働者を解雇できません。)。
  3. 例外として,高度の専門的知識等を有する人などを雇用する場合,最長5年間の契約期間を定めることができます。

労働契約の期間は原則最長3年

労働契約には,期間の定めがある労働契約と期間の定めのない労働契約とがあります。
期間の定めのある労働契約を締結する場合,労働基準法第14条により,「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは,3年を超える期間について締結してはならない。」ものとされ,原則として期間は3年を超えることは許されません。
これは,民法第628条により,期間の定めのある契約は,やむを得ない事由がない限り,期間中途での解約が許されない(労働者についていうと契約期間中は辞められない)ので,労働者が不当に長期間にわたる契約により拘束されることを防止しようという趣旨です。

例外として,一部の専門職等は最長5年

平成16年1月1日から施行された改正労働基準法では,有期労働契約(期間の定めのある労働契約)について,一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは,契約期間の上限は原則3年とされました。
しかしながら,次の場合については,特例として契約期間の上限は5年とされました。

  1. 専門的な知識,技術又は経験を有する労働者を必要とする業務に雇入れる場合
  2. 満60歳以上の労働者を雇入れる場合

この他,一定の事業の完了に必要な期間を定めるものについては,従来から,3年を超える契約期間の定め(例えば,ダム建設が終了するまで5年間など)が認められています。

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3年を超えた有期契約の効力

以上のことから,質問の事案については,原則論の3年が適用されます。
このため,5年間の労働契約は違法とされ,3年間の契約とされます。もとより,その更新は可能です。
なお,労働契約で5年の期間を定めた場合でも,上限期間の3年経過後は,いつでも労働者側からは解約できることが明示され,上限期間を超える期間(この場合は2年間)は身分保障期間であること(この間は解雇しないということ)が明らかな場合には,この契約は労基法第14条に違反するものではなく,有効と解されます(関西学院大学事件神戸地尼崎支判昭和49年7月19日)。

こんな対応を!

使用者は,労働契約を結ぶ際,労働基準法第15条により,必要な事項が記載された書面を労働者に交付しなければなりません。労働契約の期間についても書面に記すこととされています(同法施行規則第5条1号)。この書面の交付を受け,書面の内容をもとに,具体的な契約期間等を確認しましょう。その上で,この契約期間の適法性を判断する必要があります。

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更に詳しく

労働基準法の改正により(平成15年),5年間の労働契約を設定できる「専門的知識等を有する労働者」とは,次のものをいいます(「労働基準法第14条第1項第1号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」(平成15年10月22日厚労省告示))。

  1. 博士の学位を有する者
  2. 公認会計士,医師,歯科医師,獣医師,弁護士,一級建築士,税理士,薬剤師,社会保険労務士,不動産鑑定士,技術士又は弁理士のいずれかの資格を有する者
  3. システムアナリスト試験又はアクチュアリー試験に合格している者
  4. 特許法に規定する特許発明の発明者,意匠法に規定する登録意匠を創作した者又は種苗法に規定する登録品種を育成した者
  5. 大学卒で実務経験5年以上,短大・高専卒で実務経験6年以上又は高卒で実務経験7年以上の農林水産業の技術者,鉱工業の技術者,機械・電機技術者,システムエンジニア又はデザイナーで,年収が1075万円以上の者
  6. システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントで,年収が1075万円以上の者
  7. 国等によりその有する知識等が優れたものであると認定され,上記1から6までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者