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13-2 上司からセクハラを受けているが,どうしたらよいか|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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13-2 上司からセクハラを受けているが,どうしたらよいか

質問

私は,ある会社の経理部門に勤めていますが,半年前から,上司が執拗に体を触ってきたり,カラオケやホテルに誘ってきたりしています。上司のすることなので,今まで我慢してきたのですが,もう我慢も限界で,精神的に参ってしまいそうです。どうすればいいのでしょうか。

回答

<ポイント!>

  1. 我慢せずに,相手方に対して拒否の姿勢を明確に示しましょう。
  2. セクハラの内容について,可能な限り詳細に記録に残しておきましょう。

セクハラとは

セクシュアルハラスメント(一般にセクハラ)とは,男女雇用機会均等法第11条及びそれを受けて定められた指針(PDF文書)に定義されていて,

  1. 本人の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により,その労働者が解雇,降格,減給等の不利益を受ける「対価型」と,
  2. 本人の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため,能力の発揮に重大な悪影響が生じる等,その労働者が就業する上で見過ごすことのできない程度の支障が生じる「環境型」

の両方を含んでいます。
なお,従来,セクハラの被害者として想定されていたのは女性労働者に限られていたのですが(旧法第21条参照),平成18年の法改正(平成19年4月施行)により,男女労働者に拡大されました。実際にセクハラの被害者となるのは女性が多いでしょうが,男性が被害者になることもおおいにあり得るところです(裁判事件として,日本郵政公社(近畿郵政局)事件参照。一審=大阪地判平成16年9月3日は,女性管理職による男性労働者に対するセクハラの成立を認めましたが,二審=大阪高判平成17年6月7日は否定しました[確定])。

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事業主の配慮すべき事項

同法同条により,事業主は,労働者がセクハラにより不利益を受けたり,就業環境が害されることがないよう,雇用管理上必要な配慮をしなければなりません。「雇用管理上配慮すべき事項」については,上記の指針(PDF文書)に具体的に定められていて,事業主は,次の措置を講じなければなりません。

  1. 事業主のセクハラに関する方針の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談・苦情に対応するために必要な体制の整備
  3. セクハラ発生後の迅速かつ適切な対応

加害者の責任

セクハラは,労働者の個人の尊厳を不当に侵害する行為であり,職場規律をみだす行為として懲戒処分の対象となったり(F製薬事件・東京地判平成12年8月29日),民法第709条に基づき加害者には損害賠償責任が生じます(株式会社乙田建設事件・名古屋高金沢支判平成8年10月30日,同事件・最二小判平成11年7月16日参照)。
この点,福岡セクシャル・ハラスメント事件で裁判所は,「会社の上司が,職場や職場外の職務に関連する場において,部下の個人的な性生活や性向についての発言を行い,その結果,その人を職場に居づらくさせる状況を作り出し,しかも,そのような状況の出現について意図又は予見していた場合には,その人の人格を損ない,働きやすい環境の中で働く利益を害するものであるから,民法709条の不法行為責任を負う」と判示しています(福岡地判平成4年4月16日)。 
更に,セクハラの形態によっては,強制わいせつ,傷害,暴行,名誉毀損など,刑法上の罪に問われることもあります。

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会社の責任

セクハラが職務遂行中や職務に関連して行われた場合は,加害者である従業員を雇っている事業主も民法第715条に定める「使用者責任」などに基づいて損害賠償義務を負います。セクハラが発生した場合はもちろん(下関セクハラ(食品会社営業所)事件・広島高判平成16年9月2日。防止義務を尽くしたという使用者側の抗弁はまず認められることがありません。),発生後の対応が拙い場合にも責任を問われることがあります(A市職員(セクハラ損害賠償)事件・横浜地判平成16年7月8日など)。
この点,前掲の福岡セクシャル・ハラスメント事件では,「使用者は,被用者が生命及び健康を害しないよう職場環境等について配慮すべき注意義務を負い,更に労務遂行に関連して被用者の人格的尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防ぎ,職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務もあり,被用者を選任監督する立場にある者がこの注意義務を怠った場合には,選任監督者に不法行為が成立することがあり,使用者も民法715条により不法行為責任を負う。」とされています。

セクハラへの対処法

  1. 性的言動によって女性が不快な思いをしていることに加害者が気がついていない場合があるかもしれませんので,「いやなので,やめてください。」とか「それはセクハラです。」とかいうように,勇気をもってはっきりと拒絶しましょう。
  2. セクハラは,「密室」で行われることが多いため,後の証拠とするために,セクハラの内容を記録に残しておきましょう。その際,加害者の言動の内容とともに,日時,セクハラを受けた場所,周囲の状況など,できるだけ詳しく書いておくのが望ましいでしょう。しかし,セクハラを受けた直後に冷静に記録をすることは困難な場合が多いので,覚えている範囲で結構です。

また,被害を受けた都度,会社の同僚や友人にその事実を打ち明けて相談することも大事です。

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こんな対応を!

拒否の姿勢を取っても加害者がセクハラをやめない場合や,圧力をかけてきたり,嫌がらせをしてきた場合には,会社の相談窓口に相談しましょう。
それでもだめな場合や,会社に相談窓口がない場合には,労働局の雇用均等室に相談しましょう。希望に応じ,カウンセラーが相談に応じてくれます。
なお,雇用均等室が扱った相談事例については,旧労働省発表資料「職場におけるセクシュアルハラスメントの防止対策の取組状況について」(別ウインドウが開きます http://www2.mhlw.go.jp/kisya/josei/20000428_06_j/20000428_06_j_bessi2.html)を参照してください。 加害者や会社に対して金銭賠償を要求する場合には,弁護士や法律相談センターなどに相談しましょう。

更に詳しく

男女雇用機会均等法上は,労働者が被害者となる場合に限ってセクハラとしていますが,セクハラが個人の人格権を侵害する行為である以上,被害者が学生,患者など労働者以外の者である場合にも,性的嫌がらせの行為は不法行為となったり,犯罪行為となったりすることがあります。

 

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