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11-4 健康診断を実施する代わりに,休暇を与えて自分が健康管理を行うという方法は認められるか|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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11-4 健康診断を実施する代わりに,休暇を与えて自分が健康管理を行うという方法は認められるか

質問

私の会社では,時間的にも経費的にも余裕がないという理由で,定期健康診断を実施していません。そのかわり,従業員は休暇を与えられて,健康管理は従業員自らが行うこととされていますが,それで問題はないのでしょうか。

回答

<ポイント!>

業種,規模を問わず事業主には健康診断の実施が義務付けられています。

健康診断の実施は必要

従業員の健康管理は,人間たる労働者の生命・身体・健康を守る,最も根源的な労働条件ということができます。職場に存在するさまざまな危険を適切に管理し,設備・環境・体制を十全に整えて,事故や病気を発生させないことが何よりも大切です。
このうち,従業員の健康の保持増進のための措置として,業種,規模を問わず事業主には健康診断の実施が義務付けられています。

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法令で義務付けられた健康診断

労働安全衛生法,労働安全衛生規則などの法令によって,事業者が実施しなければならない健康診断には,次のようなものがあります(同法第66条~66条の7参照)。

1.雇入時健康診断(同規則第43条)

常時使用する労働者(パートタイム労働者であっても,1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上あって,雇用期間の定めのない者か,契約の更新により1年以上雇用される予定の者などを含みます。)を雇い入れる直前又は直後に実施する必要があります。
ただし,医師による健康診断を受けて3か月を経過しない者を雇入れた場合は,その者が健康診断の結果を証明する書面を提出したときは,その健康診断の項目に相当する内容については,実施する必要はありません。

2.定期健康診断(同規則第44条) 

常時使用する労働者に対して,1年以内ごとに1回,定期的に医師による健康診断を実施する必要があります。

3.特定業務従事者健康診断(同規則第45条第1項)

特定業務(坑内労働や深夜業等の有害業務)に常時従事する労働者に対しては,6か月以内ごとに1回,定期的に医師による健康診断を実施する必要があります。

4.海外派遣労働者の健康診断(同規則第45条の2項)

労働者を6か月以上海外に派遣する場合及び6か月以上派遣された労働者が帰国した場合に,健康診断を実施する必要があります。

5.結核健康診断(同規則第46条) 

健康診断の結果,結核の発病のおそれがあると診断された労働者に対し,その後,概ね6か月後に健康診断を実施する必要があります。

6.給食従業員の検便(同規則第47条)

事業所に附属する食堂又は炊事場における給食の業務に従事する労働者に対して,その雇い入れの際又はその業務への配置換えの際に検便による健康診断を実施する必要があります。

7.有害業務従事者に対する健康診断

労働安全衛生法では,特に有害業務を規定し(労働安全衛生法施行令第22条),それらの業務に常時従事する労働者として雇い入れる際,その業務へ配置替えの際,または同法が定める一定の期間ごとにそれぞれの特別の項目について健康診断の実施を義務付けています(同法第66条第2項)。

8.歯科医師による健康診断(同規則第48条)

労働安全衛生法施行令第22条第3項に規定する塩酸,硝酸,硫酸,亜硫酸,ふっ化水素,黄燐その他の歯又はその支持組織に有害な物のガス,蒸気又は粉塵を発散する場所における業務に従事する労働者に対しては,その雇い入れの際,当該業務への配置替えの際及び当該業務についた後,6か月以内ごとに1回,定期に歯科医師による健康診断を実施する必要があります。

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労基署への報告

常時50人以上の労働者を使用する事業者は,定期健康診断,特定業務従事者健康診断又は歯科医師による定期の健康診断を行ったときは,遅滞なく,定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません(同規則第52条)。

記録票の保存

事業者は,雇入時健康診断,定期健康診断,特定業務従事者健康診断等を行った時は,健康診断記録票を作成し,これを5年間保存する必要があります(同法第66条の3)。また,健康診断を受けた労働者に対して,遅滞なく,当該健康診断の結果を通知しなければなりません(同法第66条の6,同規則第51条の4)。

有所見者への措置

事業者は,これらの健康診断結果の有所見者(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された者)に対する事後措置について,医師,歯科医師の意見を聴いた上で(同法第66条の4),必要と認めるときは,就業場所の変更,作業の転換,労働時間の短縮等の措置を講ずるほか,作業環境の測定,施設・設備の設置・整備その他の措置を講じる必要があります(同法第66条の5)。
また,健康診断の結果,特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し,事業者は,医師又は保健師による保健指導の実施に努めることとされています(同法第66条の7)。

深夜業従事者への措置

深夜業従事者(直前の半年間平均で月4回以上深夜業に従事した者(同規則第50条の2))が,法で定められた健康診断以外に同様の検診項目につき自発的に健康診断を受診し,その結果を提出した場合(同法第66条の2)にも,事業者は,同様の措置義務を負うこととなっています(同法第66条の5,第66条の7)。

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費用負担・賃金の支払

法令の規定により実施される健康診断の費用については,法令で事業者に健康診断の実施を義務づけている以上,当然,事業者が負担することとなります。
また,労働者一般を対象とする一般健康診断は,一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施を義務付けたものですが,労働者の健康の確保は,事業の円滑な運営にとって不可欠であることから,その受診に要した時間に係る賃金については,事業者が支払うことが好ましいと思われます(昭和47年9月18日 基発第602号)。
更に,特定の有害な業務を対象とする特殊健康診断は,事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり,それは,原則として,所定労働時間内に行われる必要があります。特殊健康診断の実施に要する時間は,労働時間と解されるため,この健康診断が法定労働時間外に行われた場合には,割増賃金を支払う必要があります(昭和47年9月18日 基発第602号)。

こんな対応を!

すべての事業者は,労働者に対して健康診断の実施を義務付けられています。このため,勤務している事業所が,法で定められた健康診断を実施していない場合は,事業主に対して,法で義務付けられていることを説明し,その実施を求める必要があります。
なお,事業主が法定の健康診断を実施しない場合は,労働基準監督署に相談されることをお勧めします。

更に詳しく

事業主には,労働者に対する健康教育・健康相談の継続的な実施や,労働者の体育・レクリエーション活動等への便宜の供与の努力義務が課され,厚生労働大臣や国は,事業主による労働者の健康増進の努力について指針を公表したり,指導・援助を行うこととされています。健康診断の実施のほかにも,従業員に対して健康増進のための積極的な対応が求められます。