このページの本文へ
ページの先頭です。

動植物への影響

印刷用ページを表示する掲載日2025年12月26日

生物季節の変化

 開花や紅葉といった現象は、生物が気温や日照時間などの気象条件の季節的な変化を感知することで生じており、この生物の季節的な応答のことを、生物季節と呼んでいます。

 梅や桜の開花時期について、表1を見ると、梅の開花日が遅くなる一方で、桜の開花日が早まっていることがわかります。表の期間の1~3月の平均気温は上昇傾向にあり、地球温暖化の影響を受けていると考えられます。

開花日と平均気温

 樹木の多くは、開花のために一定以上の期間、低温にさらされて休眠が解除される(休眠打破)ことが必要です。しかし、冬季の気温が上昇し、梅は、低温に十分な時間さらされるまでに日数がかかるようになったため、開花日が遅くなっていると考えられます。一方、梅よりも開花時期が遅い桜は、つぼみが育ち始める時期までに十分低温にさらされる時間があることから、冬季の気温上昇が開花日を早める影響を及ぼしていると考えられます。

 カエデの紅葉日も、表2の期間の11~12月の平均気温の上昇傾向に伴い、紅葉日が遅くなっていることが分かります。

紅葉日と平均気温

ニホンジカ増加の影響

 積雪の減少等に伴い、ニホンジカ(以下、シカという。)は生息域が拡大し、個体数も増加しています。シカは草食動物で草花から樹木の皮まで幅広い植物を食べます。シカによる食害が激しくなった場所では、樹皮を剥がされた樹木が枯死したり、森林内のササがなくなって表土が流出しやすくなるなどの被害が報告されています。そのため、シカの食害による植生の衰退や希少植物等への影響、農業被害の拡大などが懸念されています。

図1はシカの目撃効率(数字が大きいほど生息頭数が多い傾向)、図2は植生衰退度(シカの食害が激しいほど大きな値)です。図1でシカの目撃効率が高い地域ほど、図2の食害による植物への被害が大きい傾向があることがわかります。シカの生息地は、カタクリの群生地などがある県北部の国定公園の近くまで広がりつつあります。また、近隣県では、大山付近への分布拡大と希少植生への悪影響が心配されています。

 
シカ目撃効率
 図1 令和3年度の狩猟期に目撃されたニホンジカの状況
(出典:「令和3年度出猟カレンダー調査結果について」、広島県自然環境課)
※宮島はシカが生息しているが、猟は行われないため本調査では「データなし」となっています。

 

植生衰退度
図2 広島県の植生衰退度※
(出典:令和5年度気候変動適応全国大会における「広域アクションプランフォローアップ報告(中国四国地域)」資料より抜粋
(令和3年度の広島県の調査結果を基に、環境省中国四国地方環境事務所が作成)) 
 ※森林下層植生衰退度(SDR):数値が大きいほど、植生への被害程度が大きい。

 

 環境省中国四国地方環境事務所では、関係機関等の協力を得て、今後、被害が出始めると予測される地域として、大山蒜山周辺地域、石鎚山系、中国山地西部及び讃岐山脈を対象に、保全が必要な植生の存在情報、シカの生息数増加及び分布拡大の傾向、植生への影響などの現状把握を行い、現況を地図化されました。引き続き、関係機関等において情報共有を行い、対策を推進していく予定です。

 

マダニの感染リスク

 気候変動による気温上昇は、節足動物(ダニ、蚊など)の活動適温の期間が長くなったり、生息適地が変化することが考えられます。

 節足動物のうちマダニは、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や日本紅斑熱を媒介することがあります。マダニは、ネズミ、イノシシ、シカなど、吸血源の野生生物がいる場所に生息しています。

 広島県立総合技術研究所保健環境センターによるマダニの生息状況調査(2010~2011年)では、マダニの採取数は、最高気温10℃以下で減少し、5℃以下ではほとんど採取できなかったと報告されています。

 一方、気象庁によると、日本の気温は、100年あたり1.4℃上昇しています。温暖化により冬季の最高気温が上昇すると、マダニの活動期間が長期化し、その結果、マダニと人の接触機会が増え、感染リスクの増加に繋がるおそれがあります。

マダニ写真

 人間が活動しやすい気温は、節足動物にとっても適温です。森林や草むらなど、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖・長ズボンを着用し、足を完全に覆う靴(サンダル等は避ける)を履いて、肌の露出を少なくすることが重要です。さらに、シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れ、マダニ用と書かれた防虫スプレーを併用して、ダニが衣服の中に侵入するのを防ぎましょう。

感染症流行条件


このページに関連する情報

Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)

おすすめコンテンツ