平成27年度 第22回県政知事懇談「湯崎英彦の地域の宝チャレンジ・トーク」を,次のとおり福山市において開催しました。
平成28年2月6日(土曜日) 13時30分から14時40分まで
ぬまくま市民交流センター 市民交流室
(福山市沼隈町大字草深1889-6)
訪問先 | 内容 |
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ふる里を次世代へ残すための | ○高齢化が進み,地域の里山が雑草で覆われていく中,平成22年に住民有志で「草刈隊」を結成し,草刈り活動を開始。 |
松永地域の | ○日本はきもの博物館・日本郷土玩具博物館から引き継いだ貴重な資料をはじめ,松永地域の産業を支えた下駄・い草・塩の生産関連の資料の多くを展示。(H27.7オープン) |
神村町にある「大谷山里山牧場」を訪問し,耕作放棄地を整備して和牛を飼育するなど,ふる里を次世代へ残すために行っている里山保護の取組について,お話を伺いました。
「松永はきもの資料館」を訪問し,閉館した日本はきもの博物館から引き継いだ貴重な資料を生かしながら,松永地域の歴史,文化継承の拠点として,市と地域の皆さんが協働で運営している様子を拝見しました。
あらかじめ選定した,福山市で活躍されている方に「人づくり」「新たな経済成長」「安心な暮らしづくり」「豊かな地域づくり」等の分野の取組について発表していただきました。
名前・職業など | 取組内容など | テーマ |
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佐藤 平治 | ○沼隈町では,家の新築に際し,近所の人々が舟で運ばれてきた瓦を工事現場まで天平棒で運び込む習慣が古くからあり,この相互扶助の精神を「一荷合力(いっかこうろく)」と呼んでいる。 | 地域住民の安全安心へ向けてのまちづくり |
小寺 絵海 | ○「1ミリのゆとりと1ミリのやさしさを。」をコンセプトに,地域と親,子供たちをつなぐママたちの活動。 | 1ミリのゆとりと1ミリのやさしさが生む、見守りの町 |
佐藤 聖 | ○爆心地から半径1キロをCGで復元する「爆心地復元映像制作委員会」活動に東京大学,早稲田大学,南カリフォルニア大学等とともに参加。 | CGによる被爆前後の広島市御幸橋付近の復元 |
占部 春々菜 | ○国連会議の疑似体験を通じて,国際問題への理解や解決策を探る全日本高校模擬国連大会へ参加。 ○アルゼンチン大使役として「国際移住と開発」について,議論。参加にあたり,アルゼンチンの移民政策や法律について,大使館へ取材を行い,良い経験となった。 ○全国からの参加者との協議により,英語能力の向上とともに様々な視点で物事を捉える重要性を学んだ。 | We love Model United Nations! ~模擬国連活動を通して~ |
坂居 輝星 | ○ボランティアグループ「培遠中学校リフォームの匠」を結成。 | 地域に認められる培遠っ子 |
○佐 藤
能登原学区は急激な過疎化が進んできており,また小学校の統廃合という極めて不安な要素も持っております。高齢化も深刻で,高齢者の生きがいづくりや居場所づくりを考えることは地域の大きなテーマと考えています。
白浜地区は急傾斜が多い谷あいの集落で,山が海に迫った平地の少ない場所です。やはり過疎高齢化の課題は抱えております。わずか33世帯の小集落では,求める行政サービスもなかなか享受できておりません。そんな課題を解決すべく,考え出されました沼隈方式を紹介します。
地域は予算の一部を負担し,住民でできることは汗を流して作業をして行います。行政は主に材料代や重機の借り上げやそういったものを負担していきます。行政としては少ない予算で地域の求める施策を実施することができるのです。地域づくりの仕組みはまさに協働の精神の基本となるものです。
白浜地区では,手づくりのパイプラインを敷いて,高齢者の生きがいを含めて大いに役立つということで,1年がかりの工事の末,径が75ミリのパイプラインを地域の入り口まで山の奥から引きました。パイプラインを埋める防火水槽もつくりました。コックをひねったらいくらでも水が出る防火水槽でございます。さらに各戸へ支線を引きまして,皆さんにコックをひねったら水が出るという田畑になっています。これによって多くの高齢者が野菜をつくることができます。私たちの地域は昔から雨が少なく河川も小さいため水には苦労してきました。この水を,農家を含め,非農家へも与える制度をつくりました。
みんながよくなることをやろうよと水を平等に分け与えたこと。地域づくりいうのは,インフラだけでなく,人と人との心もつないでくれていったのであります。
白浜地区含め我々の暮らす沼隈町は,昔から「一荷合力」という精神が流れておりました。これは福山市と合併以来2006年から始まった協働のまちづくりに生かされ,その精神が備後地域,あるいは県下,私は全国へと広がった協働のまちづくりの原点だと思っております。住民の暮らしを守り絆をつなげる地域づくりは私たちのふるさとの大切な宝物です。
●知 事
高齢化・過疎化の課題は広島県全体でも日本全体でも課題ですが,でもきっと皆さんのこの「一荷合力」の精神があったらいろんなことが乗り切れるのではないかという感じがします。地域でこれからも皆さんが力を合わせてこの利他の精神でまちづくりというかこの地域を守っていっていただきたいと思います。
○小寺,吉本
「1ミリのやさしさと1ミリのゆとり」。これは大きなことは,すぐには変えられないけれども,1ミリずつ,みんな少しゆとりのある人だったら,1ミリずつやさしさとゆとりを持つことができるのではないかなという,そんな望みを表しています。やっぱりママが笑ってないと子供の笑顔も生まれません。みんなの子供をみんなで守ろう。この3つのコンセプトをもとに活動をしています。
私たちは,ママたちも楽しめるようなことを取り入れていかないと,子育てに伴うストレスもうまく発散ができないのではないかなということでいろんな活動をさせてもらっています。
いろんなメディアがこういった活動,ママたちが集まってやっているこの活動に注目いただいて,いろんな取材を受けて,そして,去年,福山市の活動部門でのブランド認定というのをいただきました。ブランド認定を受ける前と後では,同じことを訴えても全然響き方が変わってくるんだということを改めて感じさせていただきました。本当に感謝しております。
今どきの子育てには同調が必要です。なぜなら,自信を伸ばさないと子供たち,とんでもない未来が待っています。大人もそうです。結局,ママたちの話を聞いていると,「はい」も「いいえ」もみんながどっちに手を挙げるかを見ないと手を挙げられない時代になってしまっています。それはなぜかというと自信が足りない。それなのにママたちは子供たちに,思っていることを言いなさい,「はい」なの「いいえ」なの,と言うのです。ママたちも「はい」も「いいえ」も言えないときもある。ママが自信を伸ばすと何がいいかというと,子供のことも認めてあげられる。器が大きくなる。そんな自信を持ったママたちが活動できる場所をというのが今年の「mamanohibi」の課題の一つに入っております。
●知 事
イベントに参加されたママの皆さんの笑顔がすごく素敵だと思いました。だからきっとそこへ参加をすることによって本当にハッピーになり,ストレスが抜けたり。もちろんそれだけで全てが解決するわけではないですが,その瞬間がとてもいいものがあるのだということがわかりました。
○佐藤,中井
私たちの電子機械科は,日本で唯一本格的にCGを学習することができる学科です。代表的な作品は,広島の爆心地から半径1キロメートル以内の復元で,この作品は昨年国連のNPT再検討会議で上映されたり,テレビで特集されたりしています。また,地元福山では神辺町の廉塾を江戸の町並みとともに復元し,県立歴史博物館や記念館などで展示上映されています。
このように授業で学ぶだけでなく,外部企業や団体と連携し,さまざまな映像づくりを行ってきました。授業イコール社会実践,社会貢献というすごく珍しくためになる授業です。
今日は,被爆70年の節目である昨年に制作した復元映像の発表を行いたいと思います。復元場所は広島市中区千田町にある御幸橋近辺で,今もこの場所には被爆直後の写真がモニュメントとして飾られています。
復元に当たって,まず正確な情報収集から始めました。アメリカが撮影した原爆投下前の航空写真をもとに建物の位置や大きさを割り出し,昭和16年の地図を参考に現存する企業やお店を探し,電話による聞き取り調査なども行いました。
被爆後の写真で一番手前に写っていた交番は,県の建物台帳から構造や付帯施設などがわかり,全体的にはかなり正確な町並みが復元できたと思います。最終的な雰囲気は被爆者の方による証言です。被爆後の復元作業は焼けただれた肌の様子なども再現するため,とてもつらい作業でした。改めて原爆の恐ろしさがわかりました。
原爆の風化,被爆者の高齢化,語り継ぐことが難しくなっている現在。微力ではありますが,私たちはこれからも最新技術を駆使した映像で,後世にそして世界に幅広く訴え続けていきたいと思っています。
●知 事
コンピューターグラフィックスという技術は,その技術を習得するというのももちろんあると思うのですが,それだけではなくて被爆体験のことであるとかあるいは世界とのつながりということを経験してくれたのではないかと思います。
実際みんながつくってくれた被爆前後のCGというのは,恐らく永遠に引き継がれていくと思います。本当に貴重な戦前の状況を復元したということ,直後を復元したということで非常に貴重な映像資料ですので,これから長い間引き継がれて,みんなの名前も刻まれていくのではないかと思います。
○井上,竹内,占部
模擬国連というのは擬似的に国連総会を開催し,いろいろな立場の国の代表を演じながら世界が直面する問題を考えていく取組です。進行は国連で行われているルールに沿って行われ,ニューヨークでの世界学生大会も行われます。私たちの学校としては2回目の参加でした。卒業生の助けもあり,文化祭で校内模擬国連を開いたりする中,関心を持つ生徒が私たちの学校内でも少しずつ出てきました。
模擬国連に興味があった私たちは,全国大会に出るべく準備し,無事予選を突破することができました。私たちに割り振られた国はアルゼンチンでした。今年の全国大会のテーマは,移民問題でした。アルゼンチン大使として何が提案できるのか。国連文書を初めさまざまな資料に当たりました。日本語の資料が少なくとても苦労しました。私たちの考えたことが現実のアルゼンチンの政策とかけ離れてもいけません。大会前日にはアルゼンチン大使館に伺い外交官の方から温かくも厳しいレクチャーも受けることができました。
会議の形態は大きく2種類あります。1つは席についてのものでモデレイテッドコーカスと呼ばれます。進行は英語で行われ,会議の進め方などについての意見を発表します。もう1つは自由に動き周り交渉を進めていくもので,アンモデレイテッドコーカスと呼ばれます。これが会議の大半を占めます。会議の合間には各国2分間公式スピーチが与えられます。私たちはちょうど会議の途中で起こったパリ同時多発テロの問題に触れ,改めて移民問題を考えることの大切さを訴えました。
国連総会の最終決議は全会一致が原則です。この大会でもお互いの妥協点を見出しながら決議にたどりつくことができました。
大会に出て驚いたことは,関東や関西の高校生は学校の枠を超えて普段から自分たちで会議や勉強会を持っているということです。残念ながら私たちの学校はまだそういったネットワークを持っていません。ぜひ今後つながりをつくっていけたらと願っています。
●知 事
移住問題ですが,沼隈町はご存じのとおりパラグアイに集団移住をされています。パラグアイは本当に苦労されながら今はもう農業で大成功されているのですが,福山のご出身の人がたくさんいらっしゃいます。これから皆さん,本当に世界にも羽ばたいていってもらいたいと思います。
○藤原,坂居
リフォームの匠を紹介します。公園や公園内のトイレは草が生えごみが散乱していてとても汚れていました。地域に住む子供が遊べる公園ではありませんでした。そこで私たちは地域の子供が気軽に遊びに来れる公園にしたいと思い,トイレのリフォームにチャレンジしました。夏休みに生徒会やボランティアで集まった生徒でトイレの掃除をしたり,外壁や内壁を塗りました。地域の方から,「きれいにしてくれてありがとう。」などとたくさんの言葉をかけてもらい,大変うれしかったし,元気が出てきました。
東日本豪雨で被災された方に対して私たちにも何かできないかなという思いから,中学校の文化祭と地域のスーパーマーケットで募金活動を行いました。多くの地域の方から募金をしていただくことができました。短い期間でしたが,約10万円の募金が集まりました。私たちは驚きと同時に感動や達成感を得ることができました。
この活動に対して福山市教育長様から直接激励の言葉をいただきました。自分たちが行った活動に対して,培遠中学校全体が評価していただけたことがすごくうれしかったです。
このような活動をしていく中で少しずつ地域の方から声をかけてもらえるようになってきました。私たちは培遠中学校のイメージを変えるという目的で地域に向けて活動を行ってきましたが,地域の方からいろんな声をいただく中で,地域のためにもっと何かできないかという気持ちが出てきました。先輩方が,「地域に認められる培遠っ子」というスローガンを掲げて約2年がたち,培遠中学校のイメージは少しずつ変わってきました。
●知 事
去年だけでも本当にいろいろなことがあって,募金活動も含めて表彰ももらってすごいと思います。
地域から頼られる学校にというふうに校長先生がおっしゃったと思いますが,もう既にこうやって「ソーランを踊ってよ」とか声がかけられるということは,もう何か頼られているという感じなのではないかと思います。
皆さん本当に地域の中ですばらしい活動をされているということを改めて感じました。能登原学区の佐藤さんの活動。本当に地域の伝統を守っていくということは,お祭りとかそういうものだけではなくやはり一本通った精神があることにより,次の世代にもつながっていくと思います。そういったことが場所は違いますが培遠中学校のような活動にも恐らくつながるのだと感じました。それから,「mamanohibi」の皆さんの活動。放っていたらそのままやり過ごしてしまうようなことも多いと思います。虐待のニュースを聞いて「ひどいな。かわいそうだな。」ともちろん皆さん思うのですが,そこで自分たちに何ができるのだろうかと考えてその一歩を踏み出してみることによって一歩が二歩になり三歩になり,またさざ波になって,いろいろなところに波及をしていくことになるのではないかと思います。
また,3校の学校の皆さんに発表をしていただきました。「今どきの若い子は。」とよく言われます。僕達も言われました。しかし若い世代は若い世代なりにやはり頑張っていると思いますし,今日本当にみんなよく頑張っているなと感じられたと思います。将来楽しみだなと感じました。新しい世代は新しい世代の取り組み方があり,そしてこれから経験したことを糧にして大きく羽ばたいてくれるということがよくわかりました。
1ミリならできるだろうというところを少しずつ手をつけていく。それが皆さんの全ての活動にも共通していることだと思います。その1ミリが1,000人が集まれば1,000ミリになりますし,本当にそのことが地域を変えたり福山市を変えたり,あるいは広島県を変えていき,そしてもちろん日本を変えていく,世界を変えていくということになるのではないかと思います。
約110名
○皆様の懸命なチャレンジに感動致しました。自分に何が出来るのか改めて考える機会を頂きました。人と人の絆の大切さを感じました。一歩を踏み出す勇気を頂きました。ありがとうございました。
○自分が気付いたことや思ったことがあってもなかなか行動できる人は少ないことが分った。また,その中でも行動しそれを続けると達成感が生まれ周りの人からも認められるんだということも分かった。
○いろんな地域の問題などの改善点が見つかった。私たちもいろんな取組がしたいと思った。
懇談の模様は,録画でご覧いただけます。
こちら(インターネット放送局)からご覧ください。
第22回「地域の宝チャレンジ・トーク(福山市)」チラシ (PDFファイル)(1.41MB)
第22回「地域の宝チャレンジ・トーク」(福山市)議事録 (PDFファイル)(580KB)
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