インタビューを受ける河野さん

ひろしまブランド
「暮らしやすい」魅力

ENERGY OF PEACE ひろしま

「元気・美味しい・暮らしやすい」そんな広島をみんなで創る取り組み「ひろしまブランド」。今号のテーマは「暮らしやすい」。広島の暮らしやすい魅力とは…?認定NPO法人西中国山地自然史研究会の河野 弥生さんにお話を伺いました。

「暮らしやすい」ひろしま INTERVIEW

縁側に座る河野さん

河野 弥生 さん (認定NPO法人西中国山地自然史研究会 事務局)

香川県出身。広島市内の短大に進学後、2001年、結婚を機に北広島町へ移住。認定NPO法人西中国山地自然史研究会の事務局職員として「芸北 高原の自然館」に勤務しながら〈もんぺる〉代表も務める。

特別な自然の風景が日常にある里山暮らし

雪が積もる北広島町

植物学者・牧野富太郎博士もたびたび訪れた北広島町は、芸北ならではの高山植物や氷の結晶が舞うダイヤモンドダストなど、特別感ある風景に出会えるところが魅力。近所の農道を散歩するだけでも四季折々の景色に癒やされ、心に余裕が生まれます。

認定NPO法人での自然保全・活用に向けた取り組みや、古い着物をもんぺに仕立て直す〈もんぺる〉の活動を通して、人と環境にやさしい暮らしを発信していきたいです。

自然環境保全のための多様な取り組み

フィールドミュージアム「芸北 高原の自然館」

北広島町に移住して22年が経ちました。職場は広島県屈指のブナ林が広がる臥竜山(がりゅうざん)や、県内有数の湿原群・八幡湿原(やわたしつげん)のすぐそばに建つ小さなフィールドミュージアム「芸北 高原の自然館」です。

同館に事務局を置く認定NPO法人西中国山地自然史研究会のスタッフとして、団体運営やイベントの企画・広報などを主に担当しています。私たちの会は、北広島町を含む西中国山地の環境保全と活用を目的にさまざまな取り組みを行っています。

専門家を招いての自然観察会を定期的に開催するほか、住民が整備した木を地域通貨で受け入れる試み、中学生やボランティアとともに刈ったススキを茅葺き屋根に活用する取り組みなど、教育や地域活性化、文化の継承も視野に入れて活動しています。

フィールドミュージアムスタッフの皆さん

この地域に生息・生育する生き物のデータを後世に残すため、最近は植物や昆虫の標本づくりにも力を入れていますよ。北広島町は自然環境や生態系を保全するための行政基盤がしっかりしているので、私たちも活動しやすいんです。

心にゆとりをもたらし、子育てもしやすい北広島町

カヤックを楽しむ様子

田んぼと山、空が織りなす北広島町の風景には、心ときめく瞬間がたくさんあります。11月頃は山肌を染める紅葉と山頂に降り積もる初雪のコラボが見られるので、これからの季節にぜひ訪れていただきたいですね。

SNSなどで常に人と対峙する生活に疲れてしまったとき、自然の風景や生き物に向き合うことで心にゆとりが生まれると思うんです。観察会などに参加してくれる子どもたちにも、自然に立ち返るという選択肢を伝えていけたらと考えています。

私は子育ても北広島町で経験しましたが、開放感がある里山は育児にも良い環境でしたね。田舎は家と家とが物理的に離れていて、子どもが泣き声や足音を立てても近所迷惑にならないのは精神的にラクでした。

今は町外に巣立っていった我が子たちも、帰省するたびに「ほっとする」「夕焼けがきれいだよね」と言っています。地元を大切にしたいという気持ちが、若い世代の中に根付いているようでうれしいです。

着物から作る"もんぺ"で田舎暮らしの良さを発信

着物から作ったもんぺ

「自作したり、つくろったりしながらモノを大切に使う田舎暮らしの良さを発信したい」という想いから、使われなくなった着物を"もんぺ"にリメイクする〈もんぺる〉の活動に町内在住の女性5人で取り組んでいます。

広島県の「さとやま未来大賞(現:ひろしま里山グッドアワード)」受賞などを経て認知度も徐々に高まり、私たちの考えに共感してくださる方から「あなたたちに託したい」と着物を譲り受けることも増えてきました。

以前、80代の女性から「もんぺ姿で生活していた娘時代を思い出してうれしくなった」というお声をいただいて。〈もんぺる〉の商品を通して人々との温かい交流が生まれていることも、活動を続けていて良かった点です。

もんぺを持つ河野さん

今後はもんぺの作り手を増やすのが目標。着物のほどき作業を地元に暮らす80代のおばあちゃんがボランティアで受けてくれたり、中学生が学校教育の一環で体験してくれたりと、少しずつ関わってくれる町民の輪も広がっています。

10月14日(土)・15日(日)に、広島市内のイベントへ出店します。古い着物の生地感や模様を活かしながらモダンに生まれ変わったもんぺを手に取り、人と環境に配慮した暮らしに想いを馳せてもらえるとうれしいです。

"平和"が日常に溶け込み、川で繋がる広島のまち

田舎道を歩く河野さん

県外から移り住んだ私が感じる広島県の魅力は、“平和”が身近にあるところ。平和について、みんなが日常的に話し、意識している。それは原爆ドームが生活に溶け込んでいる広島市はもちろん、北広島町などの田舎にも共通しています。

もう一つの魅力は、太田川の上流域である北広島町などから下流域の広島市まで、一本の“川”を通じて山間部と都市が分断されずに繋がっているところ。上流域と下流域、それぞれの営みがお互いを支え合っていることを忘れてはいけないなと思います。

これからも美しい風景と豊かな生態系、そして居心地のよいまちを未来に手渡せるよう、安全で健康的な里山づくりに力を入れていきたいです。

ひろしまのええもん、ええとこ発信中

公式Instagram「ええじゃろ広島」

詳しくはこちら