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違っててもまとまれる。隔たりを埋め、ともに創る平和のまち

違っててもまとまれる。
隔たりを埋め、ともに創る平和のまち

minagarten(ミナガルテン)代表

谷口千春 さん

2023年8月25日

メインビジュアル

脱・二項対立。「グラデーションの世界」を大切にしたい

「ミナガルテン」では、吹き抜けた屋内の壁を多様な植物たちが彩ります。日陰好きな子、成長がやたら速いヤツ…。デザインとしてコントロールしきれない、生き物それぞれの個性。谷口さんは、「人間も一緒。根付く所や輝く場はみな違う」と話します。

屋内緑化

谷口さんの祖父から、谷口さんの父親へと受け継がれた園芸事業跡地の倉庫をリノベーションした「ミナガルテン」は、約500平方メートルの建屋。ベーカリーや日替わりカフェ、サロンなどが入居するコミュニティ施設となっています。正面の窓ガラスには、資材置き場時代の名残りの遮熱フィルムが貼られていて、フロアの片隅には、温室にあったボイラー管が残されています。同じ佐伯区内の「マルニ木工」の椅子たちは、色やデザインがちょっとずつ違い、多様性を表現しているのだとか。屋内外の境界にはストライプの踏み石が敷かれていて、「新旧や内外などの二項対立でなく、グラデーションの世界を大切にしたい」という谷口さんの想いが込められています。

屋外の様子

谷口さんは、埼玉で生まれ育ち、10歳の時に広島へ移りました。幼い頃から作曲をしたり、漫画を描いたり、演劇部で活動したり、常に何かを「創る」ことに取り組んでいたそうです。進路に迷いがあった大学受験時に、建築学科の存在を知り、舞台芸術とのリンクにインスピレーションが湧いたそうです。

「わたしたちが欲しい未来」を広島の街に実装していく​​

​​​​大学院時代の学びで視界が開けたと話す谷口さん。企業や財団から資金を集め、北欧の学生らと淡路島やスウェーデンに能舞台をつくり公演を行ったことで、受け身ではなく、能動的に創る建築を知ったといいます。

その後、就職先の会社で、「キッザニア」立ち上げやコーポラティブ事業に関わりました。谷口さんは、関係者の間を企画でつなぎ、コーディネートする仕事が楽しかったと振り返ります。AとBが対立したとき、新たなCを創ることで対立を乗り越える。そんな世界観を社会に実装していきたいという想いが、出版や伝統工芸など、さまざまな業界を経験してたどり着いた谷口さんの今の目標です。

二項対立を話す谷口さん

「同じことを3年以上できない人間」と笑いながら話しますが、「欲しい未来の縮図」として手がけた「ミナガルテン」の世界観を、都市レベルに拡大したいと、未来を見据えています。谷口さんが目指すのは、広島が、そして瀬戸内全域が「平和文化共創都市圏」となること。戦争の記憶を起点に平和都市として歩んできた歴史を享受するだけでなく、「こんな街がいい」と一人ひとりが自覚して主体的に創るのびやかな街を、谷口さんは思い描いています。

茂る木々

 

紹介人物画像

谷口 千春(たにぐち ちはる) さん

minagarten(ミナガルテン)代表

埼玉生まれ、広島育ち。京都大学と東京大学大学院で建築を学び、コミュニティとシステム、デザインでまちを面白くする建築・不動産プロデュース会社(現)UDS株式会社に入社。キッザニアの企画開発や、沖縄のホテルプロジェクトなどに携わる。出版業界、着物業界、フリーランスでも活躍後、2020年4月に帰広。minagarten代表として経営にあたる他、ひろしまのまちづくりに携わる。竹原市まちづくりアドバイザー(2022年〜)、広島都心会議「都市 to デザイン」企画・ディレクター(2023年〜)、出汐地区開発事業パートナー(2023年〜)
広島で好きなところは、「山から見た瀬戸内海の風景」。海と陸が、島があることでまとまり、それぞれの場所に人の営みがある姿に融和を感じるという。