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土を、社会を、耕し種を蒔く。それぞれの「せかい」尊重して

土を、社会を、耕し種を蒔く。それぞれの「せかい」尊重して

自然栽培のイニアビ農園/安芸高田市地域おこし協力隊(多様な人々の学びのある交流事業)/つむぎ屋

福岡奈織 さん

2022年12月26日

メインビジュアル

外国人増え続けるまち。生活支援と地元住民の理解促進と

県北、安芸高田市。毛利元就の郡山城入城から500年の節目を迎えた歴史ある街は、人口約2万7千人の3%にあたる約850人が外国籍という国際色の豊かさもあります。その出身国はなんと20以上に及びます。

減りゆく人口に反比例して増える外国人の多くは、人手不足の現場で働く技能実習生。地域おこし協力隊員の福岡さんは、情報の多言語化や生活相談などの支援に携わり、外国人と関わる地元市民たちの理解促進の重要性を訴えてきました。自身も、結婚を機に広島市内からやってきた移住者。自然栽培を実施してきた夫、田中陽可さんと、築100年超の古民家で暮らしています。

黄唐辛子やパパイヤ、小麦など、畑の土にあった作物を育てています。畑の雑草がそんなに刈られていないのは、土の状態を教えてくれるほか,畑にとって欠かせない役割があるからだそうです。

作物を見る福岡さん

農園名の「イニアビ」は、夫・田中陽可さんの名からアメリカ先住民族の友達がつけました。意味は「すべての生命体が頼る太陽」。

農作物をつくるだけじゃない、新しい「農園」を求めて

学生時代、世界各地に核実験などによる被ばく者がいると知った福岡さん。タヒチに滞在し、人体や環境のみならず、人々がルーツを感じている土地から恵みを受け取って生きていくカルチャーが壊される現実を目の当たりにしたことが、農業に関心を持つきっかけとなりました。「人が安全に生きられる社会を作りたいと考えたとき、その基本にあるのが自然に基づいた仕事だと気づきました」。​

大根を持つ福岡さん

自然栽培では、雑草にもクモにも、畑にいる生き物に全てに役割や「せかい」があります。そこにあるもので最大のものを作るために土を耕し、畑を作り、種を蒔く福岡さん。「人間社会も同じ。そこにある人たちみんなに『せかい』がある」。

4カ国で暮らし、自身が「外国人」になった経験が今活かされているといいます。あちこちに行ったからこそ、安芸高田の「財産」もわかるそうです。「コミュニティがしっかりある。地域のことは自分たちである程度までやるんだって空気に刺激を受けます」。

犬の茶々丸と笑う福岡さん

移住してから学んだのは、互いの本心からのリスペクトの大切さ。「長く気持ちよくいるためには風通しも必要ですよね。土も、社会も」。そんな「風」のような存在になれればと願いつつ、農作物の生産を越え、「農園」という場所を、「交流と学びの場」に育てていきます。

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福岡奈織(ふくおかなお) さん

自然栽培のイニアビ農園/安芸高田市地域おこし協力隊(多様な人々の学びのある交流事業)/つむぎ屋

広島市出身。大学時代、広島長崎の被爆者と一緒に世界一周をしたことをきっかけに、グローバルヒバクシャに関心を持つ。「世界の中の広島」「足元の平和」について実践するために、安芸高田市へ移住。築100年の古民家を拠点に、生態系の中で循環する自然栽培の農園を営み、体験プログラム等を実施。また、地域おこし協力隊として、多文化共生のまちづくりのための交流事業や日本語教育に取り組んでいる。広島の好きな所は「小ささと身近さ」。「細かい塊がいっぱいあって、それらの間にもいろんなものがある。あちこちに自分の居場所を作れる感じが大好き。」