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世界が熱狂する新しい広島の観光をつくりたい

世界が熱狂する新しい広島の観光をつくりたい

広島県観光連盟(通称、HIT) チーフプロデューサー 兼 常務理事事業本部長

山邊 昌太郎 さん

2022年3月29日

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常にGOの精神で想定外の転職を決心

山邊さん写真1

「街の中に川や緑が普通にある、これって贅沢な景色ですよね。こんなに落ち着ける場所が街中にあるなんて、広島って最高だなって思うんです」
そう話すのは、HIT(一般社団法人広島県観光連盟)でチーフプロデューサーを務める山邊昌太郎さん。広島市出身。大学進学を機に広島を離れ、そのまま株式会社リクルートに就職。2008年に退社後も複数の事業開発を歴任し、そのまま東京で仕事を続けることを疑わなかったといいます。そんな彼に転機が訪れたのは2016年。エージェントから広島での新規事業立ち上げの事案を打診されたことでした。
「東京でずっと働くと思っていたから、正直、あまり興味を持てなかったんです。なので『2カ月は考えたい』とハイボールを投げたら、それでも待つという。それならと、知人や他のエージェントに相談したら、案の定、皆が反対したんです。今の立場を捨てて、地方に行って、ハードルの高い新規事業に手をつけるなんて分が悪すぎる。絶対やめたほうがいい、と。でもそうやって反対されればされるほど、今度は逆にやってみたくなったんです」
「僕って、あまのじゃくだから」と笑いつつ、それには山邊さんが大切にしている信条があったといいます。
「僕、『GO OR NO-GO』だったら、絶対GOなんです。アクセルかブレーキだったら絶対アクセル。それで失敗したこともあるんだけど、後になって『あの時、やっときゃよかった』って思いたくないんです」
結局、そのオファーを引き受けることにした山邊さんは2016年、Calbee Future Laboクリエイティブディレクターに着任。30年ぶりに広島の土を踏んだのでした。

30年ぶりの帰郷で広島の魅力を再発見

山邊さん写真2

期せずして30年ぶりに広島へUターンすることになった山邊さん。その後、広島への意識はどう変化したのでしょうか。
「『めっちゃいいじゃん!』って思ったんです(笑)。1秒とか1日単位で情報を追いかけるような仕事なら東京の方が断然いいでしょう。でも何年か先の未来の商品をつくるような中長期的な事案なら、数日の誤差なんて関係ないんですよね。それよりも空がめっちゃ広くて、景色も綺麗で、通勤もチャリで10分。飲みに行っても歩いて帰れる(笑)。そんな環境で仕事ができる方が素晴らしいなって思ったんです」
とはいえ、安定した仕事やポジションを手放し、新しい環境に身を置くことに恐れや不安はなかったのでしょうか。
「それは全くなかったですね。30歳くらいの時に『常にリセットボタンを押せる自分であれ』と言ってくれた先輩がいたんです。今の自分をまっさらにしても、どこでも生きていけるくらいに、自分っていうものに対してちゃんと自信を持てる存在になれってことなんだけど、ほんとその通りだなと思って。それ以来、自分自身の普遍的な存在価値や介在価値について考えるようになったし、今では躊躇することなくいつもリセットボタンを押しています(笑)」
山邊さんにとってのリスクはリセットして変化を選ぶことより、そのままチャレンジすることなく現状維持を選ぶことだといいます。
「やらないという判断は楽だけど、そこから得るものは何もないですよね。やると判断して、それに向けてどうやったらできるかと考えるから人は成長するし、ほかとは違う価値を生み出せるんじゃないかと。僕はそこにこだわり続けたいし、変化することに対して貪欲に取り組んでいきたいんです」

みんなでワクワクしながら新しい観光をつくる

山邊さん写真3

Calbee Future Labo を経て、2020年に現職のHITにジョイン。いずれのオファーの際にも、「既成概念を壊してくれ」と言われたという山邊さん。その肩にかかる期待はいつも大きい。
「突拍子もないことをするつもりは全くないんです。ただ、僕が介在することで何かしらが変わる、介在価値をつくるということは常に意識をしているし、すごく大事だと思っています」
今、HITが取り組んでいるのは、広島を何度も訪れたくなるリピータブルな観光地にすること。そのために山邊さんが掲げたのは「100万人が訪れる1カ所ではなく、1万人が熱狂する100カ所をつくろう!」というロングテールな観光プロダクトの造成や、広島の魅力発信に意欲がある人なら国籍や年齢を問わず誰でもなれる「HITひろしま観光大使100万人計画」など、ユニークな取り組みばかり。いずれもアグレッシブでスケール感がありつつ、誰でも参加できそうな親しみやすさやワクワク感があります。
「観光って個人戦じゃなく団体戦なんです。誰かだけのものでなくて、みんなが当事者で、みんなが関わることができる裾野の広い産業。だから、みんなに『自分ゴト』として参加してほしいし、ワクワクしてほしい。そのためには、まず担い手である我々がワクワクしないと! というのはHITのメンバーにいつも言っています」

目指すは元気でエキサイティングな広島

山邊さん写真4

今は家族と離れ、単身赴任している山邊さん。広島での生活がすっかり気に入り「もう東京には帰らないから」と、家族にも宣言したそう。
「妻は『本当に?』なんて言ってますけどね。長女は『私も広島で働こうかな』って言ってますよ」と頬をゆるめます。
「僕も18の頃はとにかく広島を出たかった。だから今、若い人たちが広島を出たいと思う気持ちも理解できるし、一度は出てみたらいいと思うんですよ。ただね、戻って来てもいいことあるぞ、っていうことは伝えたい」
それは東京と地方と、両方を体験したからこそ発信できる、説得力のある言葉です。
「昨年、HITで採用した青年は東京で働いていたんだけど、たまたまHITひろしま観光大使のことを知って、そんな面白いことをやってる会社で働きたいと広島に戻ってきたんです。広島でもエキサイティングな仕事ができると分かれば人は集まってくるし、そういう面白いことをたくさん作っていかなきゃと思うんですよね」
広島にはそのポテンシャルが十分あるという山邊さん。2021年には「ひろしまをつなげる30」というまちづくりプロジェクトを主催。企業・行政・NPOから集めた37名の次世代リーダーが、今、7つのまちづくりプロジェクトを企画・実行中だそう。
「どのプロジェクトもすごく面白いんです。いつかきっと観光とつながっていくし、当事者意識を持って『まちの課題』に取り組む彼らは近い将来、HITの心強い仲間になってくれるはずです」
世界をもっと魅了する広島へ。舵を切る山邊さんの言葉一つひとつに、期待と希望を感じました。動き出した広島の未来が楽しみでなりません。

紹介人物画像

山邊 昌太郎(やまべ しょうたろう) さん

広島県観光連盟(HIT) チーフプロデューサー 兼 常務理事事業本部長

広島県出身。京都大学工学部卒。1992年(株)リクルートに入社。新規事業開発、就職関連情報誌編集長を経て、2008年に退社。その後、複数の事業開発を歴任し、2016年Calbee Future Labo立ち上げに伴いクリエイティブディレクターとして着任。2020年4月より一般社団法人広島県観光連盟 チーフプロデューサー 兼 常務理事事業本部長。広島大学客員教授。休日は平和記念公園や川べりのベンチで日向ぼっこをしながら読書をして過ごすのがもっぱらのお気にいり。