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コミュニケーションで大切なのは、いろんな人の話を聞くこと

コミュニケーションで大切なのは、いろんな人の話を聞くこと

KAZARI 代表
株式会社TOWN DESIGN LABO 代表取締役
RAINBOW SOKO HIROSHIMA 運営責任者
株式会社nicopoia 代表者

ヤスムラ ミチヨシ さん

2022年3月29日

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Uターン起業のきっかけは、アパレル会社で感じた矛盾

ヤスムラさん写真1

五日市に生まれ、18歳まで五日市で育ったヤスムラミチヨシさん。高校卒業後はアルバイトをしていたアパレル企業のブランドの一つである、グローバルワークに就職しました。中四国の店舗で経験を積んだ後、東京本部に異動。広報宣伝業務やウェブマーケティングなどを担当していました。オンラインショップの年商が20億円を超えるほど仕事は好調。しかし、アパレル業界の矛盾も感じていました。生産国の中国やバングラディシュでは、児童労働や低賃金労働が常態化。安く作って大量に消費するビジネスモデルですが、実際は生産した衣料の約50%が、店頭に並ぶこともなく焼却処分されていました。「毎年前年比の業績と予算達成率を追いかける数字遊びになっていました。それっておかしいですよね」と振り返ります。
27歳の時に東日本大震災が発生。千葉県に住んでいましたが「買い物ができない、店に行っても何も売られていない、誰にも頼ることができない」という苦難に直面しました。アパレル業界の中にいるだけでは、地域とのつながりを作れないと感じたヤスムラさんは、30歳で郷里の広島に帰ることを決意。自身が感じていた矛盾を解消し、世の中にとってプラスになる、「ソーシャルイノベーション」を実現する事業に着手しました。

一人の経営者との出会いから、コミュニティスペースの開業に至る

ヤスムラさん写真2

ヤスムラさんが最初に手掛けたのが、個人事業のKAZARIとしての創業支援サポートです。オンラインショップ運営やフリマアプリなどのサービスを使い、古着屋のオープンに携わった他、土産物店にて接客・運営ノウハウなどの提供や、店舗運営企画もプロデュース。多くの事業者と関わる中で、木製品メーカー「WOODPRO」社長の中本敬章さんに出会いました。「いろんな人の話を聞くこと」がモットーのヤスムラさん。中本さんが語ったアイデアをもとにグランピングイベントを企画します。地域の事業者たちに声を掛け、岩倉ファームパークキャンプ場内の、テントを設置できずキャンプ場として利用できなかった区域を活用して、2016年8月にイベントを開催。全国で2番目という目新しさもあって反響は大きく、その2カ月後にも同所で、翌年は久保アグリファームでも開催しました。以後、毎年秋に同所で地域に向けたイベントを行っています。
その後、中本さんから「クリエイターのためのコミュニティスペース『レインボー倉庫』を、広島にも開設できないか」と再び相談がありました。人と人が関わる「場」のデザインを手掛けてきたヤスムラさんは快諾し。いろいろな趣味や嗜好を持った人が集まり、地域コミュニティどうしがつながる場「レインボー倉庫広島」がオープンしました。

県内各地に芽吹く、空き家問題解消と地域活性化の種

ヤスムラさん写真3

レインボー倉庫広島で生まれたコミュニティは、地域の課題解決に結びついています。開設当初から、音楽や着物、空き家など、さまざまなテーマのワークショップを開催し、参加者同士が困りごとや相談の解決につながる人間関係を築いていました。中でも関心が高いテーマが空き家問題です。初回の参加者は16人でしたが、1年後には100人を突破。空き家を修繕したい人や買いたい人はもちろん、メーカーや大工も参加して、その場で相談したい人と解決したい人が結びつく場に成長しました。
空き家もかつては、人の暮らしの営みがあり笑顔があふれていた場所。活用することで、豊かな暮らしとまちの活性化につなげようと、TOWN DESIGN LABOを立ち上げました。2018年から呉市と廿日市市で「空き店舗めぐり」のイベントを行う他、セミナーやワークショップの開催、物件紹介などにも取り組んでいます。
イベントやセミナーに集った人たちは、得たノウハウをそれぞれの地域課題の解決に応用しています。学んだ手法にも得た人脈にも「縛り」をかけず、他地域で展開してもらうことこそが、社会課題の解決に必要なこと。ヤスムラさんは「困りごとや頼まれごとを解決すること、その成果を共有し広げていくことの繰り返しです。ただお金を稼ごうと思って仕事をするつもりはありません」と語ります。

社会と地域に寄り添った事業者の連携をリード

ヤスムラさん写真4

経営者の立場でも課題解決に熱心なヤスムラさんは、広島県商工会青年部連合など広島の経済団体を通じて出会った同士たちと新たな事業に進出。2020年に保育園を運営するNPOや地域の経営者たちとnicopiaを設立し、子育て環境の改善に取り組んでいます。事業の柱は保育園のサポート。欧州産や広島県産の木のおもちゃを仕入れ、オンラインショップを通じて全国に販売もしています。
また、従業員の仕事と生活の両立を応援する団体「イクボス同盟ひろしま」廿日市部会のメンバーの1人として、廿日市の市民と企業が参加するコミュニティ「廿コミュ」を設立。企業は自社のCSR活動や割引情報を投稿し、市民は廿日市のモノやサービスを利用したくなるという仕組みを作りました。さらに、廿コミュに登録した市民を中心に困りごとのアンケートを実施。結果、0~3歳児の保育料が高額であることや、離職後のキャリア継続など複数の問題が露見しました。そこで課題解決の為に廿コミュ参加企業同士で連携し、市内の企業から依頼案件を集め、チラシやホームページの作成、記事ライティングなどの仕事をワーキングマザーに委託すると同時に、対象者に必要なスキルの教育や機材の貸出しを行うなど、伴走していくことで課題の解決をしようと取り組んでいます。「ゆくゆくは市や県も参画する事業に」と構想は広がります。
活動が多岐にわたりますが、常に「社会課題の解決が軸」と語るヤスムラさん。目指す未来にあるのは、「現役を引退した後、お金がなくても周囲の人たちと共に助け合い、物々交換などでも成り立つような生活が送れる」そんな地域の温かいつながりです。

紹介人物画像

ヤスムラ ミチヨシ さん

KAZARI 代表
株式会社TOWN DESIGN LABO 代表取締役
RAINBOW SOKO HIROSHIMA 運営責任者
株式会社nicopoia 代表者

アパレル企業で中四国の店舗運営に携わった後、東京の本部で広報業務やウェブマーケティングを担当。東日本大震災後、地域のつながりを大切にしたいと思い広島にUターンした。創業支援やイベントの企画、コミュニティスペースの運営など、次々に事業を展開。「よく、ヤスムラさんは何をして儲けているんですか? と聞かれます」と笑顔を見せる3児の父。「頼まれごとを解決することの繰り返し」という自然体で、社会課題を解決するコミュニティを生み出している。