このページの本文へ
ページの先頭です。

いいことを見つけたら、たくさんの人に知らせたい

いいことを見つけたら、たくさんの人に知らせたい

株式会社JizoHat 代表取締役
Get Hiroshima 編集長

Paul Walsh さん

2022年3月29日

メインビジュアル

「1年だけ」のつもりが 20年以上の広島滞在

ポールさん写真1

イギリス人のPaul Walsh(ポール・ウォルシュ)さんと日本の関係は、今から32年前にさかのぼります。大学在学中に日本に興味を持ち、日興証券の作文コンテストに応募して入賞。副賞として日興証券の研究所で3週間研修し、富士山にも行ったそう。1年後、JET(語学指導等を行う外国青年招致事業)に参加すると、大分県別府教育事務所に配属され、ELTとして国東半島の中学、高校を担当しました。大都会の東京とは違う、九州の山や火山に魅せられ、1年の予定がいつの間にか3年間も滞在。その後、日本から香港、中国、インド、ベトナム、欧州、インドと旅し、次はオーストラリアでのワーキングホリデーを夢見ていましたが、旅の資金が底をつくという事態に! 資金を貯めるため仕事を探していたところ、偶然、広島で英会話学校の職を得ることができ、来日。「長くても1年」と思っていたポールさんですが、私立小学校で英語講師として3年、広島経済大学の講師を22年、そして今も広島と縁が続いています。
英会話学校の講師をしていた頃は、外国人が夜遊ぶ場所も、飲む場所もなく、一度は広島を離れようと思ったこともあるそう。東京や大阪など、もっと活気あるまちに行こうと思っていましたが、1999年、友人が立ち上げた、世界主要都市に拠点を持つウェブサイトの広島事業に関わったことが転機となりました。​

WEBサイトからMAP、雑誌へ 広島は本当は楽しいと伝えたい​

ポールさん写真2

ウェブサイトを世界中で運営する話は、「2000年問題」で実現しませんでしたが、ポールさんと奥さんは「せっかく関わったのだから、広島の、知られていない面白いところをシェアしよう」と更新を続けました。「当時、日本にはあまりウェブが使われていなかったけれど、外国人は母国の情報を得るために積極的に使っていましたから、自分が訪れた店の情報をウェブで発信することにしたんです」。せっかく外国人観光客が広島に来ても、どこへ行ったらいいか分からない様子を幾度となく目にしていたポールさんは、「広島は、本当は楽しいんだよ」と英語で伝えたかったのだそう。
「いいことを見つけたら、たくさんの人に知らせたいと思っている自分がいる」と自身を表現するポールさん。広島で頑張っている人たちのことをシェアしたい。広島が楽しくないと思っている人に「本当の広島」を紹介したい。4年間ウェブサイトの更新をしてそんな思いが募り、2004年、ウェブサイトの内容を凝縮した紙ベースのMAP「Get Hiroshima」が完成しました。メンバーは未経験の4人。「苦手な営業もしたよ」と、50000部を発行していた当時を振り返ります。大好評だったMAPは、2014年からは50ページものフリーマガジン「Get Hiroshima 」へと姿を変え、2019年まで発行されました(現在休刊中)。

地域の人とのコミュニケーションが 感動を愛着に変える

ポールさん写真3

ポールさんは「外国人観光客は、『広島はどんなまちなんだろう。自分はどう思われるだろう。遊んだり笑ったりしていいのだろうか』と思っています。そして原爆資料館に行き、落ち込んだまますぐに京都などへ移動してしまう」と分析。そして「地元の人とコミュニケーションがとれたら、広島は悲劇的な歴史を持つまちではなく、好きな場所になる。そのために大切なのは、飲食店。店の人や偶然隣に座った人とフレンドリーに会話ができたら、広島の人が外国人に悪い印象を持っていないことが分かると思う」と力を込めます。
また、「今いる地域の情報が十分にあれば、その地の愛着につながる」とも考えます。周囲に何があるのか、何が起こっているのか知ることは、「コミュニティ感」につながります。ウェブサイトやMAP、雑誌まで作ってしまったポールさんの「情報が大切」という言葉からは、重みと広島愛が伝わってきます。
常に冷静に広島を分析するポールさんが大切にしていることは「自分をフレッシュにすること」。広島だけでなく、東北や四国を旅してみたり、自転車に乗ったり、山に行ったり。煮詰まったときは、積極的に走ることにしているそうです。「例えば、普段の通勤ルートを変えるだけでもいいんですよ。移住者の目、外国人の目で広島を見つめると、今の観光業界に足りないものに気付けると思います」と、私たちにできることもアドバイスしてくれました。

外国人も「住みたくなる」「戻りたくなる」まちに

ポールさん写真4

ポールさんは2018年に大学を退職し、株式会社JizoHatを設立。全国のインバウンド観光の手伝いやコンサル業、プロモーション、セミナー講師など、幅広く活動してきました。コロナ感染症の影響で現在はインバウンドが下火となっていますが、前を見据えて動いています。
「広島は、インバウンド観光の可能性があるまち。いろんな事業者をサポートしていきたいし、広島の魅力や特別な場所を紹介し、ぜひ広島に移住してもらいたい」とポールさん。「戻りたくなるまち」「外国人でも生活を満喫できるまち」を模索しています。「外国人が、ごく普通の人として扱われるまちの雰囲気を作りたい、サポートもしたい」と思う一方で、若い外国人が頑張って貢献しているのに仕事の選択肢が限られていて、いつしか東京や本国に帰ってしまう「損失」を残念に思うそう。実際に住んでいると、歴史や平和でブランディングされている広島観光のギャップも感じます。
「だから今こそ情報のバリアフリー。文化も情報も、東京に負けないくらい発信して、日本人や外国人の壁をなくして共有しましょう。自分事として考えることで、誰もが住みやすいまちとなり、ストレスのない生活が実現できます」とポールさん。それは、私たち一人一人ができることでもあります。​

紹介人物画像

Paul Walsh(ポール ウォルシュ) さん

株式会社JizoHat 代表取締役
Get Hiroshima 編集長

イギリスから、JET(語学指導等を行う外国青年招致事業)で日本を訪れ、海外旅行の資金を貯めるため再び来日。仕事先の広島でいち早く英語でのウェブ発信に乗り出し、大学講師を務めながら、MAPの発行、雑誌創刊と、一貫して「広島の面白さ」を伝えてきた。「いいことを見つけたら、たくさんの人に知らせたいと思っている自分がいる」のがその原動力。流ちょうな日本語と人懐っこい笑顔、行動力が、多くの人を魅了し続ける。