林業での安全衛生管理に関するお役立ちまとめ
目次
1. 自分の組織の管理は大丈夫?「林業安全管理チェックシート」
3. 現場技術力の源であり組織ルール「作業手順書(標準書)」
林業労働災害を減らすために,企業・組合でできること
あらゆる安全対策の目的は,社員,従業員のメンバーに,日々,安全に元気に快適に,働いてもらうことです。これが「労働安全衛生法」という法律が作られた目的です。
それにより,働く人のモチベーション向上,効率性の向上,利益確保,といったメリットを得ることができます。安全は企業・組合にとって経営の基軸となる重要なものです。
しかし残念ながら,林業の労働災害発生率は全産業で最も高い職場であり,安全衛生の責任者や経営者の皆様には,悩みの種であると思います。
このページでは,県内の林業事業体で安全衛生を担う皆様に,実務状況や運営に当たってのご意見を伺い,安全衛生コンサルタントの指導助言の元,安全管理に役立つ情報をまとめました。
安全の責任者
労働安全衛生法にはよく「事業者」と「労働者」が出てきます。「事業者」とは,個人事業主の場合は経営者本人を意味し,法人では企業・組合そのものを指します。
また,「事業者」と「労働者」には互いに義務があります。
以上のように,安全な環境の整備や,ルール作りや決め事は,事業者が中心となって整備します。
働く人全員が,きちんとルールを守ることで,安全な職場づくりが実現します。
こうした事業者が整備する計画やルール,日々の安全管理の帳簿を林業向けに,次のとおり作成しましたので,ぜひご活用ください。
1.自分の組織の管理は大丈夫?「林業安全管理チェックシート」
さまざまな関係法令がある中で,何から始めたらよいか,自社に足りていないものは何かを,まずは自己点検するために,おおまかにチェックシートにまとめましたので,ご活用ください。
2.計画的に安全管理を実施するために「年間安全衛生計画」
点検表の管理や,経営者の方針を実現するために,スケジュールを組むのが「年間安全衛生計画」です。
つくり方や内容は自由ですが,管理者に役割が集中することや,逆に現場任せになってしまうことを防ぐために,いつだれが何のためにやるのかを,明確にし,進み具合を月々でチェックしていくことをお勧めします。
3.現場技術力の源であり組織ルール「作業手順書(標準書)」
林業の現場において,メンバー同士は,安全のため一定の距離を保って仕事をしているので,各々が効率よく安全に仕事をしているかを,看視し判断することは不可能です。
そのため,組織の仕事のルール,自社の技術力を,あらかじめ見える化し,指導教育や技術の改善,ルールの徹底に使っていくものが「作業手順書(標準書)」です。現場ごとに作成する場合は「作業手順書」,標準的なパターンごとに作成するものが「作業標準書」といわれます。
会社組織のルールですので,現場の班長と管理担当者等が主となって作り,現場に伝えていくことが効率がよいと思われます。作り方の例は次に示します。
(1)作り方
- 作業手順書(標準書)の骨組みを作ってみる。
現場作業の全体を知っているリーダー級の方が作成するか,現場管理の担当者が作られる場合は,現場リーダーの方に相談し,聞き取って作成をしましょう。
- これで本当に大丈夫か,危険性のリスクを考える(リスクアセスメント)
作業で気を付けるポイントを考える際に,効果的なのがリスクアセスメントです。
作業している時点で危険を洗い出すのではなく,手順やルール・段取りを考える段階で,一番安全で質の良い仕事をするために取り入れるものです。
次の例は,リスクアセスメントを取り入れた標準的な作業手順の例です。
03作業手順書(標準書)の例
(2)危険の洗い出し方の例
- 今まで記録してきたヒヤリハットから危険を洗い出す。
- 現場メンバーの皆さんと安全研修も兼ねて「こんな危ない目にあった」「ミスをしてしまった」といった意見を出し合う。
「作業手順書(標準書)」の形式は自由です。自社ブランドの源と捉えて,やってみては直し,改善していけば,作業のムリムダムラが減り,生産性の向上などのメリットが得られることになります。
4.現場に入る前に「作業計画」
厚生労働省による「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」(令和2年1月31日改正)が発出され、チェーンソー作業を行う時に作成する,作業計画の作成様式例が示されています。
車両系建設機械,車両系木材伐出機械を用いて作業を行う時においても,作業計画を定めその作業計画により作業を行うよう法的に定められています。
実際は,作業道では建設機械,伐出では林業機械,-チェーンソーなど,さまざまな機械を組み合わせて実施されていますので,広島県内での主な施業パターンに合わせて一枚作成すれば内容を網羅できる,作業計画様式例を作成しましたので,ご活用ください。
≪作業計画≫
(1)保育間伐,小規模伐採 (Excelファイル)(162KB)(チェンソー伐倒のみの場合)
(2)作業道単独 (Excelファイル)(205KB)(先行して作業道開設だけを行い,伐採事業まで期間が開く場合)
(3)搬出間伐・皆伐・作業道 (Excelファイル)(227KB)(作業道開設と搬出作業を連続して行う場合)
(4)搬出間伐・皆伐 (Excelファイル)(228KB)(すでに開設された作業道を用い,あらたな作設がない場合)
なお,概略図について,計画書に平面図を作画することが難しい場合も多いと思いますが,既存の図面に「緊急車両待合せ場所」や「看板」や「はい作業場所(土場)」を書き込み,別紙で添付すればよいこととなっています。
林業現場はアクセスが悪いことが多いため,命を守ることを考え,緊急搬送を迅速に行うよう,この作業計画と図を作成し,現場に入る前に消防署へ届出されることをお勧めします。
5.日々の現場の安全管理
現場作業では,機械を使用する際に,機械の点検を行わなければなりません。必要な点検項目に漏れがないよう,チェックシートを使用しての点検が必要とされています。
どういったものがよいか分からない,現場で書く文字を減らしたい,といったお声にお応えし,極力,〇やチェック,番号などで記載する様式を作成しましたので,工夫してご利用ください。
こうした様式は,工夫して使いやすいようにアレンジしていくことで,事務手間を減らせる分野です。例えば,スマホ入力や,写真の送信で,毎日の手入力を減らせる可能性もあります。
6.安全パトロール
経営者や管理者が現場に訪問する用事がある際に,安全パトロールを合わせて行うことは,安全管理のマンネリ化防止には効果的です。
管理者を担当されている方はご多忙の中,一人で現場をすべて見て回ることは不可能でしょうから,複数の担当者(森林施業プランナーなどの現場管理者)の皆さんで,次のような簡易なチェックリストを共有してご利用になると,記録が残り効率的です。
7.安全衛生についての定例会議・ミーティング
法で定められている,月例の安全衛生委員会を開催する人数には該当しない50人以下の事業体がほとんどですが,安全衛生に関して,労働者の意見を聞くための機会を設ける必要があります。
現場作業班が2つ以上である場合や複数の部門を持つ場合などは,定例会議を行い,現場から管理側への設備や装備の要望,ヒヤリハット,安全パトロールで判明した改善点,などを情報共有し,大きく労災発生率が減少した実際の例もあります。
業務上,すでに行っている月例の班長会議・ミーティングに,安全衛生の時間を設けるなど,負担にならない範囲で行うことをお勧めします。
また,こうした会議での議題・資料等について,県から情報提供を行うことも可能ですので,ご活用の際は,下記のお問い合わせ先までご連絡ください。
8. 林業機械の資格と検査点検・安全装備の種類
現場で使用されている,さまざまな重機・機械について,法令に基づく,資格や検査点検・安全装備の種類を一覧にまとめました。
08林業機械の資格と点検の種類 (Excelファイル)(22KB)
9. 林業労働災害情報の共有
本県では,林業労働災害が令和元年以降,増加傾向にあり,一層の取組強化が必要です。
そのため,新たに「広島県林業労働災害情報共有マニュアル」を作成して,休業4日以上の林業労働災害の情報を一元的に収集し,効果的に安全対策を推進していくこととしました。
収集した情報は,どういった場面での災害が多いかなどを分析し,こちらのページでご紹介する予定です。
ついては,県内林業経営体の皆様におかれましては,休業4日以上の林業労働災害が発生した際には,各種関係団体に報告する場合を除き,下記連絡先までご連絡をお願いいたします。
広島県林業労働災害情報共有マニュアル (PDFファイル)(188KB)
死亡災害が発生した場合の様式 (Excelファイル)(26KB)
お悩み,ご意見,アイデア教えてください
安全衛生管理は工夫次第で,効果は大きく,手間は少なく,実行できる可能性があります。「ここが難しい」「この様式が使いにくい」「ここは電子化したい」など,お悩み・ご意見・ご相談・アイデアありましたら,お気軽に下記までご連絡ください。
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