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清酒酵母の改良を促進する技術を開発!

印刷用ページを表示する掲載日2021年4月27日

概要

~ 約100年前に広島で使用されていた酵母を活用 論文,雑誌に掲載され,注目されています ~

当センターでは,2019年に独立行政法人酒類総合研究所との共同研究で,これまで非常に困難であった「清酒酵母を容易に改良する技術」を開発しました。この技術には,当センターの前身にあたる広島県醸造試験場が100年ほど前に県内の清酒醸造場より分離し,過去に清酒醸造に使用されていた「広島6号酵母」を活用しています。

本技術の研究成果は,国際学術誌2紙(「Bioscience, Biotechnology and Biochemistry」及び「Journal of Bioscience and Bioengineering」)に,2020年に掲載されました。また,この度,科学雑誌「生物の科学 遺伝」5月号において,その概要を紹介する機会を得るなど,注目されています。

酵母の写真

イメージ写真 広島6号の胞子形成細胞

開発した清酒酵母改良技術

・現在,清酒製造の現場で広く使用されている公益財団法人日本醸造協会が頒布している酵母(きょうかい酵母(R))は,優れた清酒醸造特性を備えていますが,正常な胞子形成能力がないため,育種方法として用いられる「交雑」による改良は,困難です。

・当センターと酒類総合研究所は,この胞子形成能力を回復させることで,「交雑による酵母の改良を容易に行えるようにする技術」を開発しました。

・この技術の開発には,「広島6号酵母」が大きな役割を果たしました。当センターは,「広島6号酵母」が,きょうかい酵母(R)と遺伝的に近縁であるにも関わらず正常な胞子形成能力を有しており,きょうかい酵母(R)と交雑させることで,胞子形成能力を持つ酵母が得られることを発見しました。このことにより,「交雑」による清酒酵母の改良が容易になりました。

・「広島6号酵母」は,当センターの前身にあたる広島県醸造試験場が100年ほど前に県内の清酒醸造場より分離し,過去に清酒醸造に使用されていたものです。この酵母を用いて醸造した清酒は「貯蔵中に劣化臭が発生しにくい」という特徴を持ちます。当センターではこの特徴に着目し,この特徴と開発した技術を組み合わせて,「貯蔵中に劣化臭を発生しにくい特徴とその他の優れた醸造特性を持つ」清酒酵母を開発し,清酒の多様化に貢献したいと考えています。

掲載論文及び記事

表 掲載論文及び記事一覧
題名 著者,誌名,巻,ページ,発行年

清酒酵母の交配育種の未来 「温故知新」先人の残した技術と財産の新たな視点での活用

別冊(記事全文) (PDFファイル)(1.46MB)
山崎梨沙,大土井律之,生物の科学 遺伝, 75(3),220-226(2021)
Characteristic analysis of the fermentation and sporulation properties of the traditional sake yeast strain Hiroshima no.6 Risa Yamasaki, Tetsuya Goshima, Kenji Oba, Atsuko Isogai, Ritsushi Ohdoi,Dai Hirata & Takeshi Akao,Bioscience, Biotechnology and Biochemistry84(4), 842-853(2020)
Development of sake yeast haploid set with diverse brewing properties using sake yeast strain Hiroshima no. 6 exhibiting sexual reproduction. Risa Yamasaki, Tetsuya Goshima, Kenji Oba, Muneyoshi Kanai, Ritsushi Ohdoi, Dai Hirata& Takeshi Akao,Journal of Bioscience and Bioengineering, 129 , 706‐714(2020)

掲載紙の紹介

左から「生物の科学 遺伝」,「Bioscience, Biotechnology and Biochemistry」及び「Journal of Bioscience and Bioengineering」。以下の各誌の紹介文は,各誌の公式ホームページ掲載内容を元に作成しました。

   「遺伝」表紙画像   「BBB」表紙画像   「JBB」表紙画像

生物の科学 遺伝」について

「生物」の知識は多くの分野と関わっており,人間の生活や環境にまでつながっています。執筆者にはこのことを念頭に,最先端の話題をご提供いただきました。サイエンスの世界だけでなく,実学の話題にも触れていただき,生物,生命についていろいろな角度から議論できればと考えております。タイムリーな特集企画にご期待ください。

Bioscience, Biotechnology and Biochemistry」について

公益社団法人日本農芸化学会発行の英文誌で,動物、植物、微生物が示す生命現象、およびこれらの生物が生産するものの化学構造や機能、そしてこれらに関連する事柄を化学的、生物学的に解析した論文が掲載されています。

基礎から応用まで、多種多様な研究領域から生み出される成果を広く世界に発信するために大きな役割を果たしています。

Journal of Bioscience and Bioengineering」について

バイオサイエンスとバイオエンジ二アリング分野における技術と知識の普及と発展を目的として公益社団法人日本生物工学会が刊行する英文誌であり、1923年の創刊以来、公正かつ迅速な査読により質の高い論文を多く掲載しています。

本誌は(1) 遺伝学、分子生物学、(2) タンパク質工学、酵素工学、遺伝子工学、(3) 微生物、植物、動物に関する酵素学、生理学、バイオテクノロジー、(4) 醸造工学、食品工学、(5) 環境バイオテクノロジー、(6) 生物化学工学、(7) 細胞工学、組織工学、(8) 医療工学、(9) バイオインフォーマティクスなど広範に渉る分野を包括しています。本誌により発信された研究成果の多くは、医薬、食品、醸造・発酵や環境など様々な分野で活用されています。

 

 

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