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油脂簡易抽出技術、PV推定技術の開発​

印刷用ページを表示する掲載日2023年10月27日

重田有仁、塩野忠彦

1 背景

  1. 油の劣化と過酸化物価
    ​ 過酸化物価は、油の酸化により生成する過酸化物の量を示す値であり、製造直後の製品に含まれる油の品質や保存中の製品脂質の劣化度を示す値として活用されています。
  2. 近赤外分光法
     ​近赤外分光法は、800~2,500nmの波長域における光の吸収などを利用した分析方法です。近赤外光を試料に照射すると、試料の原子間(C-H、O-H、N-H、C=Cなど)の振動・収縮などにより光が吸収されます。試料による吸収スペクトルの違いを利用し、果物・サトウキビの糖度や食品組成(タンパク質、脂質等)分析、コメの食味分析などに活用されています。
    波長域
  3. 従来の過酸化物価測定方法と課題
    ​ 過酸化物価は、有機溶媒による食品からの試料油の抽出、有機溶媒を用いた試料油を用いた滴定(手分析)により測定されていますが、有機溶媒の有害性や試薬・廃棄コストが問題となっています。また、手分析であり、技術習得が必要になるという問題がありました。

2 方法

 遠心分離による試料油の抽出と、安価な小型近赤外センサーを活用することで、有機溶媒を用いない過酸化物価推定技術を開発しました。また、推定精度を高めるため、機械学習を活用した回帰モデルを作成しました。

3 結果

 遠心分離により、イカフライやスナック菓子などの低水分のフライ食品であれば、有機溶媒を使用することなく過酸化物価測定用の試料油を抽出する方法を開発しました。遠心抽出法による過酸化物価の測定値は、従来の溶媒抽出法と顕著な違いはありませんでした(過酸化物価の測定は滴定法で実施)。
遠心抽出法と溶媒抽出法の比較・遠心抽出法と溶媒抽出法で各食品から抽出した油の過酸化物価の比較
​ 遠心抽出法で得られた試料油について、小型近赤外センサーと機械学習を活用した過酸化物価推定システムを開発しました。過酸化物価を平均推定誤差±0.8で推定することができ、従来の滴定法と比較し、有機溶媒が不要で短時間に分析が可能です。
近赤外センサー測定システム・遠心抽出法で得られた抽出油の近赤外によるPV推定

4 食品企業へ向けたPR

  1. 有機溶媒不使用で過酸化物価推定が可能!
    ​ 有害な有機溶媒を使用することなく試料油の抽出や過酸化物価の推定ができます。遠心抽出法のみの活用も可能なので、抽出処理時の有機溶媒の使用を控えることもできます。
  2. 分析のランニングコスト削減が可能!
     ​有機溶媒の購入費用や廃棄処理・作業環境の整備にかかる費用を削減できます。

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