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油脂加工食品製造加工中の油脂劣化モニタリング技術の構築

印刷用ページを表示する掲載日2023年3月20日

重田有仁、塩野忠彦

1 背景

  1. 油の劣化と酸価
    ​ フライ製品を揚げるためのフライ油は、使用し続けると熱重合・熱分解、空気による酸化、揚げ種からの水分による加水分解などが生じ、着色、粘度上昇、異臭生成、泡立ちの増加、保存安定性の低下などが発生します。
     酸価(油脂中の遊離脂肪酸量)は、フライ油の劣化指標として用いられており、例えば、弁当・惣菜のフライ製品のフライ油は酸価2.5以下とすることが定められており、その他の製品についても各社で規定値を超えないように管理されています。
  2. 近赤外分光法
     ​近赤外分光法は、800~2,500nmの波長域における光の吸収などを利用した分析方法です。
     近赤外光を試料に照射すると、試料の原子間(C-H、O-H、N-H、C=Cなど)の振動・収縮などにより光が吸収されます。
     試料による吸収スペクトルの違いを利用し、果物・サトウキビの糖度や食品組成(タンパク質、脂質等)分析、コメの食味分析などに活用されています。
    波長域
  3. 従来のフライ油の酸価測定方法と課題
    ​ フライ油の酸価は、滴定法により測定されています。滴定法では、分析技術の習熟、有機溶媒の使用が問題となっています。また、簡易な酸価測定試験紙は精度不足が問題点となっています。

2 方法

 比較的安価な小型の近赤外センサーを用い、有機溶媒を用いることなく簡易に酸価推定を行う技術開発に取り組みました。また、推定精度を高めるため、近年注目されている機械学習を活用した回帰モデルを作成しました。
近赤外センサー測定システム

3 結果

 次に示す方法を開発しました。本技術では、酸価を平均推定誤差±0.24(決定係数0.7)で推定することができました。従来の滴定法と比較し、有機溶媒が不要で短時間に分析が可能です。また、ランニングコストも低いことから、高頻度で酸価分析が可能となりました。
フライ油のスムージングした二次微分スペクトル・推定モデル本法と滴定法の分析工程と特徴の比較

4 食品企業へ向けたPR

  1. 高頻度でのフライ油の酸価の推定が可能!
    ​ 従来の滴定法と比較し、高頻度でフライ油の酸価の推定が可能となり、適切なタイミングでフライ油の補充や交換が可能となります。
  2. 分析のランニングコスト削減が可能!
     ​有機溶媒を使用する必要がなくなり、溶媒費用や廃棄処理・作業環境の整備にかかる費用を削減できます。

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