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油脂加工食品の保存における温度の影響について

印刷用ページを表示する掲載日2022年1月11日

塩野忠彦 松下利恵 石井裕子

1 背景

 油脂加工食品は,品質管理の指標として,油脂の酸化度合いを示す過酸化物価(PV)や酸価(AV)を用いています。製品の賞味期限設定にあたっては,賞味期限内におけるこれらの指標の変化を保存試験後に測定し,規定値内であるか確認を行っています。

油脂の劣化は,一般に保存温度が10℃高くなると2倍促進されると言われています。このことを利用し,常温より10~30℃高い温度での保存試験(加速試験)を常温での保存試験と併用します。この加速試験を行うことで,賞味期限設定の期間を1/2~1/8に短縮しつつ品質を確認することができます。

2 方法

 市販品(ポテトチップス)を空気がある状態で包装し,30℃(常温)と50℃(4倍促進)で保存試験を行いました。

 経時的に採取した試料から脂溶性成分を抽出後, PV(*基準油脂分析試験法1.4-2013過酸化物価(クロロホルム法))とAV(基準油脂分析試験法2.3.1-2013 酸価)を測定しました。

*基準油脂分析試験法(2013年版)(公益社団法人 日本油化学会)

表保存期間

3 結果

PVは,保存期間が長くなるとともに上昇しました。今回の試料と保存条件では,常温(30℃)と加速試験(50℃。4倍促進)ではPV上昇カーブは異なることが示されました。加速試験でより早く上昇し,2つの温度帯で同等の保存期間での数値の差は,保存期間が長くなるにつれ大きくなりました。空気がある状態で包装したことにより,酸素による油脂の自動酸化が進行したと考えられます。製品や保存条件等により数値の変化は異なると考えられますので,製品群毎等での挙動を確認する必要があります。

AVは,保存期間での変化はほとんど見られませんでした。AVは,高温加熱による酸化で上昇することが多く,今回の温度帯では油脂の加水分解による遊離脂肪酸の増加等は少ないと考えられます。
グラフ過酸化物価の変化

過酸化物価(PV)の変化 
グラフ酸価の変化
酸価(AV)の変化

4 食品企業に向けたPR

市販の油脂加工食品はアルミ蒸着包装,窒素ガス充填等により,光や酸素による酸化の進行を少しでも遅らせる対策が行われています。製品や包装等の保存条件により,常温での保存試験と高温での加速試験の結果が同じになるとは限らないため,併用しながら測定を行うことが必要と考えられます。製品ごとや保存条件による保存試験,加速試験のデータを蓄積,解析することでより精度の高い予測を行うことも可能になるかもしれません。

今後も,油脂・油脂加工食品に関するサポートを充実させていきたいと考えていますので,ご相談や課題をお寄せください。技術的な課題の解決に向けての取り組みを進めていきます。

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