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食材に酵素等を急速導入する高温急速含浸法の開発

印刷用ページを表示する掲載日2021年2月4日

柴田賢哉,梶原良,石井裕子,下久由希

1 背景

 食材に酵素や調味料などの物質を導入する方法として,浸漬や加熱などの方法が用いられますが,浸漬に長時間を要する,熱変性しやすい物質は加熱導入できないなどの課題があります。当センターでは,5分間の減圧処理で一口大の食材中心部まで物質を急速導入する凍結含浸法を開発し,実用化しました。
 本研究では,減圧時間を更に短縮し,大型食材にも適用可能な新規含浸法の開発に取り組みました。

2 方法

 減圧処理による食材への物質導入原理は次のとおりです。(1)減圧処理で食材内の空気を膨張させ,次いで,(2)常圧まで昇圧して膨張空気を収縮させて外液を引き込む。空気の膨張力と収縮力が大きいほど,より急速な導入が可能となることから,加熱食材を減圧処理する方法を検討しました。

3 結果

 加熱食材を減圧処理すると,食材内水分が容易に沸騰気化するため,食材内に「空気+水蒸気」の気体が生じます。従来の内在空気のみの膨張よりも大きい気体膨脹力及び収縮力が発生し,急速かつ大型食材への物質導入が可能となりました。

工程図

図 含浸処理工程の比較

写真は大根に醤油を含浸した結果ですが,従来法(315秒)と比較して,新規含浸法では短時間(75秒)で物質導入できるようになり,内部への醤油導入量も増加しました(特許第6218206号)。

従来法による大根 新規含浸法による大根

写真 大根に醤油を含浸 (左:従来法,右:新規含浸法)
※右上の白い大根はBlank

4 食品企業に向けたPR

(1)必要な装置
 食品工場にある加熱装置(ボイル槽,スチームコンベクションオーブンなど)と減圧装置(真空冷却機,真空包装機など)を利用して実施できます。
(2)技術活用例
 形状保持型やわらか食の製造方法として利用できます(動画参照)。鶏ムネ肉の形状がありながら,スプーンで簡単に潰せる軟らかさに調整できます。その他,栄養成分や調味料の急速導入による機能性食品の製造,調味時間の短縮などにも利用できます。

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