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卵が加熱により黒く変色する理由とそれを防ぐ方法

印刷用ページを表示する掲載日2025年3月4日

Q ゆで卵を作った際に黄身の表面が黒くなることがあるのはなぜですか。また、それを防ぐ方法について教えてください。

A たんぱく質を構成するシスチンやメチオニンといったアミノ酸には硫黄が含まれており、卵白には、卵黄よりもこれらのアミノ酸が多く含まれています。逆に鉄分は卵白よりも卵黄に多く含まれています。卵白のアミノ酸は熱によって分解されやすく、遊離した硫黄は、硫化水素(H2S)となります。硫化水素は、卵黄中の鉄分と化合して硫化鉄(FeS;黒色)となるため、卵黄は、暗緑色に変色します。この変色を硫化黒変(または緑変)といいますが、体に害があるものではないので、食べても問題ありません。

卵の加熱温度が高いほど、加熱時間が長くなるほど硫化水素が発生しやすく硫化黒変は顕著になります。これを防ぐには、加熱し過ぎないように温度・時間管理を行うことが有効です。ゆで卵であれば沸騰したお湯で10分程度、80℃のお湯であれば25分程度ゆでれば卵黄が鮮やかな黄色になります(図1)。

沸騰水中で所定の時間ゆでた卵の黄身(白身を除いたもの)の状態
 図1 沸騰水中で所定の時間ゆでた卵の黄身(白身を除いたもの)の状態

加熱後の卵は直ちに冷水に入れて、卵表面の温度を低下させると、卵内の圧力が下がり、発生した硫化水素が卵の表面に向かって拡散して卵黄に達しないため、硫化鉄ができず、黒変を防ぐことができます。

また、硫化黒変はpHが高いほど発生しやすくなります。生の卵では二酸化炭素が卵白中に溶け込み、卵殻内に充満して卵白のpHを低く保ち、微生物の侵入を阻止しています。しかし卵を貯蔵しておくと二酸化炭素が発散し、卵白のpHが上昇(産卵後の卵白のpHは7.5~7.6程度、産卵後10日でpHは9.5程度)しますので、古い卵は新しい卵より硫化水素が発生しやすく、変色しやすいと言えます。卵焼きなど全卵を混ぜて使用する場合は、酢などを加えてpHを低くすることで変色を防ぐことができます(図2)。

pH調整した溶き卵(全卵)を袋に入れ,沸騰したお湯で20分加熱後の状態
 図2 pH調整した溶き卵(全卵)を袋に入れ、沸騰したお湯で20分加熱後の状態


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