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火入れによる清酒の品質変化

印刷用ページを表示する掲載日2020年10月22日

Q 火入れのタイミングと火入れによる清酒の品質変化について教えてください。

A 火入れは火落菌の殺菌と残存酵素の失活を目的に行いますが,タイミングを誤ると生老香(なまひねか)や雑味等が発生し,品質低下の原因となります。火入れは,吟醸酒では5℃程度の室温で貯蔵している場合,上槽後1週間以内,純米酒では上槽後2週間以内,その他の酒は上槽後3週間以内に行うよう心がけてください。

火入れにより,香味や熟度などに変化がおこります。それを大きく分けると次の3つになります。

1 混濁物質の変化

生酒には酵素等の未変性タンパク質が含まれており,それが酒の混濁の原因になります。未変性タンパク質は火入れ操作によって変性・凝集して混濁物質になります。混濁物質には,火入れ直後に混濁するものと,火入れ後徐々に混濁するものがありますが,どちらも凝集したタンパク質です。

2 香味の変化

生酒には,もろみから移行した酵素が残存しており,それは火入れによって失活します。近年,酵素剤が酒造りに利用されるようになりましたが,酵素剤を使った清酒は,貯蔵すると甘くなる場合があります。これは添加した酵素剤の酵素活性が,火入れによって完全に失活していないために起こる変化です。このような酒は火入れ時間を延長し,火入れ後に急冷して品質劣化を防止することが重要です。

3 色の変化

火入れ時の積算温度が高いほど着色は進みやすくなるので,すばやく品温を低下させることが大切です。

 

以上のことから,火入れ工程は清酒の色,風味等の品質に及ぼす影響が極めて大きいといえます。火入れ温度は63℃を超えないように細心の注意が必要です。タンク貯蔵をする場合においても,待タンク送り込み終了時の温度が63℃を超えないことが重要です。

なお,特に高い香気を有する吟醸酒については,火入れによる品質の変化を最小限にするため,火入れ回数を1回とし,ビン燗を行う酒造会社が増えています。タンク貯蔵の場合においても,火入れ後に急冷し,ジャケットタンクや冷蔵倉庫内での低温貯蔵(0℃以下を推奨。低温では火落菌はほとんど増殖しません)を実施しています。火入れ後の高温の酒を送りこむことで,タンク殺菌を行うのではなく,あらかじめ洗浄や殺菌を十分に実施したタンクを使用することが必須です。

参考文献

増補改訂最新酒造講本(日本醸造協会,2007,p 231-233)


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