食品の官能評価
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Q 食品の官能評価をする際に注意しなければいけないことについて教えてください。
A 人間の感覚(味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚)を利用した評価のことを官能評価と呼び、食品分野においては、おいしさを評価する上で不可欠な方法です。しかし、人間が評価を行うため、個人間や個人内においても結果にばらつきが生じることは避けられません。信頼できる結果を得るため、次のことに注意します。
実施目的の決定と、適したパネルの選択
官能評価を行う人をパネルと呼び、このパネルは分析型と嗜好型に分別できます。
分析型パネルは、評価対象の特性を評価し、品質間の差異の識別を行うため、鋭敏な感度が要求されます。このため、味覚感度テスト等でパネルが評価対象を識別する能力をもっているか確かめ、能力のあるパネルを選ぶ必要があります。
一方、嗜好型パネルは、評価対象の好みを評価します。従って嗜好型パネルは一般消費者の嗜好を代表するような人を選ぶことが大切です。
分析型パネルが客観的な評価を行うのに対し、嗜好型パネルは個人の好みを反映した主観的な評価を行います。つまり、分析型官能評価はヒトの感覚器官を使ってモノの特性を測ることであり、嗜好型官能評価はモノを使ってヒトの感性を知ることだと言えます。
適切な評価を行うための環境
人間は一つの刺激を長く続けていると感覚疲労が生じます。実際に官能評価を行う際、一度に評価する試料数が多い場合は、休憩や分割して実施します。
試料を提示する際には、パネルが試料に対して先入観を持たないように、商品名等を隠し、無意味な記号や乱数を使って区別します。また、提示の順番も結果に影響します。例えば、2つの食品試料を比較する際、先に提示された試料が過大評価されることが多いと言われています。対策として、試料を評価した後に口をゆすぐ等がありますが、食品分野では順序効果を完全に防ぐことは難しいため、提示順を逆にして同数回評価することもあります。
目的にあった官能評価手法の選択と統計的解析手法の適用
評価の方法には、分別する、順番をつける、点数をつける等様々な方法がありますが、各試料に対する評価の差が本当に意味のある差なのかを判断するために、統計的な手法が用いられます。いずれの場合でも、実験の目的、制約条件、パネル、試料、解析手法等について事前に十分な計画を立て、適切な方法を選択する必要があります。
参考文献
おいしさを測る(古川秀子、幸書房、2012)
官能評価の理論と方法(井上裕光日科技連盟、2012)
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