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魚の生鮮度「K値」

印刷用ページを表示する掲載日2020年10月22日

Q 魚の鮮度を示す客観的指数のひとつであるK値について教えてください。

A 鮮度は魚にとって重要な問題であり,品質の良否を規定する重要な因子です。
 従来,魚の鮮度は腐敗を目安に,物理学的,細菌学的,組織学的及び化学的方法で検討されましたが,実際には腐敗を問題にするのではなく,“活きの良さ”あるいは鮮度を問題にしていると考えなければなりません。

 このような観点から,斎藤ら 1)によって提唱されたK値による品質判定法が注目を集めました。魚類の筋肉中には,アデノシン三リン酸(ATP)という運動のエネルギー源となる物質があり,魚の死後には次のように分解されることが明らかになっています。

ATP→アデノシンニリン酸(ADP)→アデニル酸(AMP)→イノシン酸(IMP)→イノシン(HxR)→ヒポキサンチン(Hx)

 分解される速度は魚種によって異なりますが,HxRまでの経路は一定です。漁獲後に速やかに締められた魚にはATP,ADP,AMPが多く,時間が経つにつれてIMPが増加し,最後にはHxR,Hxが増えることから,K値を次のように求めます。

K(%)=(HxR十Hx)/(ATP十ADP十AMP+IMP十HxR十Hx)X100

 すなわち,K値はATPとその分解生成物全量に対するHxR十Hx量の百分率であり,その値が小さいほど鮮度が良好なことを示します。昔から“腐ってもタイ”とか,タラの“沖汁”といいますが,氷蔵実験をしてみると,タラの場合は3日でK値が60%を超えましたが,タイの場合は4日後も5%前後であったそうです 2)。また,そのほかにも様々な魚を用いて同様の氷蔵実験を行ってみると,それぞれにK値の上がり方が異なり,タラや赤身の魚ではK値の上昇速度が大きく,タイやヒラメなど白身の魚はK値の上昇速度が小さい傾向が認められました。魚種によってK値の上がり方が異なるため,一概にK値を比較することはできませんが,一般的にK値が低ければ鮮度が良いといえると思われます。

引用文献

1)日本水産学会誌 Vol.24(9)(斎藤 恒行, 榎本 則行, 松吉 実,日本水産学会,1959,p 749-750)

2)魚の科学(鴻巣章二 監,朝倉書店,1994,p45)


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