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出生前検査(NIPT)について

印刷用ページを表示する掲載日2022年12月1日

はじめに

出生前検査では,おなかの中の赤ちゃんに生まれつきの病気があるかどうかを調べることができます。
中でも「NIPT(母体血胎児染色体検査)」は,おなかの中の赤ちゃんに染色体疾患があるかどうかを検査するものです。
 
NIPTにはメリット,デメリットがあり,おなかの中の赤ちゃんについて病気の可能性を判断したり,病気を診断することが良いことなのかについては,様々な考え方があります。
 
本ページは,出生前検査について,正しい情報を得ていただくことを目的としており,
検査の受検を勧奨するものではありません。
 
※「出生前検査」という言葉は,妊婦健診の検査を含めておなかの中の赤ちゃんの検査全体を指す場合もありますが,本ページでは,希望した人だけが受ける検査を出生前検査とします。
※本ページの監修:母と子のまきクリニック 院長 兵頭麻希先生

出生前検査について

1.出生前検査を実施する医療機関の認証制度が始まりました​​
 妊娠中におなかの中の赤ちゃんの病気の可能性を判断したり、病気を診断する検査が「出生前検査」です。検査にはいくつかの種類があり,「NIPT」は染色体異常について母体の採血のみで検査を行うものです。近年,不安を抱える妊婦に対して採血と結果報告のみを実施し、検査に伴う適切な診療(遺伝カウンセリングや他の検査や治療に関わる診療)を行わない施設が増えてきていることから,遺伝カウンセリングの実施や検査の精度管理,検査によって先天性疾患等が見つかった場合のサポートなど,適正な実施体制を担保するための認証制度が日本医学会によって設けられ,令和4年7月1日から運用が開始されました。
 広島県内の医療機関で,日本医学会の「出生前検査認証制度等運営委員会」の認証を受けた機関は次のとおりです。検査を希望される方は,各医療機関に直接お問い合わせください。
 
■広島県内の認証機関施設・連携施設(令和6年1月時点)
基幹施設 ホームページ
広島大学病院 https://www.hiroshima-u.ac.jp/hosp

独立行政法人国立病院機構 呉医療センター・中国がんセンター

https://kure.hosp.go.jp/
広島赤十字・原爆病院 https://www.hiroshima-med.jrc.or.jp/
 
連携施設 ホームページ
東広島医療センター https://higashihiroshima.hosp.go.jp/index.html
母と子のまきクリニック Mother and fetus Maki Clinic https://www.motherandfetusmc.com/
医療法人あかね会 土谷総合病院 http://www.tsuchiya-hp.jp/tsuchiya/
医療法人双藤会 産科・婦人科 藤東クリニック  https://fujito.clinic/
広島中央通り香月産婦人科 https://www.katsuki-medical.com/
県立広島病院 http://www.hph.pref.hiroshima.jp/

2.​出生前検査について

 出産前におなかの中の赤ちゃんが病気を持っているかどうかを検査する方法として,羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査がありますが,これらは子宮に針を刺す検査のため,流産などの危険性を伴います。危険性を伴わずに赤ちゃんが染色体疾患を持つ可能性を検査する方法として,母体血清マーカー検査、超音波胎児ドック、NIPT(非侵襲性出生前遺伝学検査)などがあります。
 母体血清マーカー検査やNIPT(非侵襲性出生前遺伝学検査)は,染色体の病気を、採血だけで検査できるため、希望される妊婦が増えています。超音波胎児ドックは染色体の病気以外にも様々な先天奇形の可能性が分かります。
 染色体とは、ひとの体の構造や機能の設計図となるもので、すべての細胞の中に通常46本(1~22番のペアの染色体と,性別によって異なるX・Y染色体のペア)で構成されています。
 NIPTは,妊娠9~10週以降の妊婦の血液を採取し,21トリソミー,18トリソミー,13トリソミーの3つの染色体疾患の可能性を調べる検査です。トリソミーとは,通常は2本ペアである染色体が3本ある状態をあらわしています。
 NIPTで「陽性」の結果となった場合,21番目,18番目,13番目の染色体のいずれかが3本ある可能性が極めて高く,21トリソミーはダウン症候群,18トリソミーはエドワーズ症候群,13トリソミーはパトウ症候群という染色体の病気の原因となります。
 ただし,NIPTの陽性結果は3つのトリソミーの可能性が極めて高いことを示すもので,診断を確定するものではありません。診断を確定するためには,おなかの中の赤ちゃんの染色体そのものを調べる「羊水検査」や「絨毛検査」を受ける必要があります。
 しかしながら、生まれてくる赤ちゃんの100人に3~5人は何らかの先天性の病気を持って生まれてきます。このうち、染色体が原因の病気は約25%で,NIPTの検査対象となる3つの染色体疾患はさらにその約70%です。NIPTでは,対象となる3つの病気以外の先天性疾患の可能性については調べることができませんので,留意してください。
 NIPTについて,日本医学会作成のホームページに情報が掲載されています。併せてご活用ください。
 
3.認証機関は認証されていない機関とどう違うの?
 認証施設には、基幹施設と連携施設があり、それぞれが密接な連携をとり,検査のみでなく、検査前後に妊婦やおなかの中の赤ちゃんに必要な診療をすべて行える体制となっています。
 
【基幹施設に必要な要件(主なポイント)】
・臨床遺伝専門医の資格を有する(あるいはそれに準ずる知識や診療経験を有する)産婦人科医師と小児科医師が常勤すること。
・検査前と検査後に十分な時間をとって遺伝カウンセリングを行うこと。
・妊婦が検査を行うかどうかの意思決定を行う際に,希望すれば小児医療の専門家の支援を受けられるようにすること。
・検査後,分娩までを含めた妊娠経過の観察,及び妊婦の希望による妊娠中断の可否の判断及び処置を自施設において行うことが可能であること。
・検査の結果,絨毛検査や羊水検査等の確定的検査を妊婦の希望に応じて行うことができること。
・出生後の児への医療やケアを実施できる施設と密に連携する体制を有すること。
・地域の母子保健担当者と連携を取れる体制づくりに努めること。
 
 連携施設は、基幹施設と密接な連携をとり,遺伝カウンセリング及び陽性の結果の妊婦に対するその後の対応につ いて,基幹施設による支援の下でNIPTを実施します。そして,連携施設では対応が困難な場合は,基幹施設が責任をもってそれを補うことで,連携施設でのNIPTの実施においても基幹施設での実施と同等の遺伝カウンセリング及び検査後の支援を受けられます。
 
 検査を考えている場合には,検査前の遺伝カウンセリングを通じて,検査の内容やその後の対応について理解をした上で,おなかの中の赤ちゃんについてしっかり理解し考えられるよう準備し,検査を受けるかどうかを判断することが大切です。また,検査の結果が判明した後も,適切なフォローが受けられるよう,確定的検査や出生後のフォロー体制まで整っている認証医療機関を選択されることをお勧めします。
 
4.出生前検査をしなかった場合,赤ちゃんに先天性疾患があるかどうかは,いつのタイミングでわかるのでしょうか?
 NIPTの対象となる3疾患は,いずれも顔や手足の発達に特徴があり,心疾患などの複数の病気を持っている場合があるため,妊娠中期から後期に妊婦健診で行われる超音波検査でみつかることもありますが,多くは出生後に診断され,時に生後1か月の乳児健診等でみつかることもあります。
 同じ超音波検査でも、超音波胎児ドックでは妊娠初期から染色体の病気や心疾患、先天奇形などの検査が可能です。
 なお,広島県及び広島市では,新生児マススクリーニング検査として,県内で生まれたすべての赤ちゃんを対象に,出産された医療機関で,生後5~7日の赤ちゃんの血液を採取して検査を行う先天性代謝異常等検査を実施しています。NIPTとは検査の対象となる病気が異なり、この検査では,アミノ酸の代謝異常症など,ある種の酵素の不足やホルモン分泌の異常などによる20疾患について,早期に発見して適切な治療につなげることを目的としています。
 出生前検査でも早期に病気のリスクや診断を行うことで、おなかの赤ちゃんをしっかり診ていくことができ、生まれるまでにご両親が良く理解して準備していくことができます。
 
5.出産する年齢が高いと赤ちゃんの染色体異常による疾患の可能性が高まるというのは本当ですか?
 厚生労働省の「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」資料によると,何らかの染色体異常をもつ赤ちゃんが生まれる頻度は,女性が30歳の場合は出生1,000人に対して2.6人,35歳の場合は5.2人,40歳の場合は15.2人,45歳の場合は47.6人と,出産年齢が高くなるにつれて割合が増えていきます。この染色体異常による病気のうち、ダウン症候群のお子さんの割合は約半数です。
 近年,晩婚化や不妊治療技術の高度化によって,出産年齢が高まる傾向にありますが,高齢での出産には,妊娠高血圧症など母体のリスクが高まるだけでなく,お子さんの染色体異常などのリスクも高まることを念頭に置き,なるべくリスクのない妊娠・分娩となるよう,ライフプランを立てることも大切です。

ダウン症のお子さんが生まれる頻度

何らかの染色体異常を持つお子さんが生まれる頻度

​6.検査を受ける・受けないを決める上で大切なことは

 染色体異常を始め,先天性疾患を持った赤ちゃんが生まれる頻度は20~30人に1人と言われています。受精卵の段階では、受精卵の約半数は染色体異常をもっているといわれていますが、ほとんどは流産となり、成長し生まれてくる染色体異常をもった赤ちゃんはわずかなのです。
また,先天性疾患がなくても,他の様々な病気や事故により,医療的ケアが必要となったり障害を持つお子さんもいます。
 NIPTの検査を受けることにより,赤ちゃんに何らかの先天性疾患があることが分かったとしても,お子さんや子育てを支える様々な医療や公的サービスがあり,また,お子さんの先天性疾患をそのお子さんの持つ個性の一つとして,大切に育てていらっしゃる多くのご家族や助け合える地域社会もあるということを心にとめておいてください。
 出生前検査を考える時には,ご自身とパートナーのお二人で,検査結果によってはどういう選択が考えられるのかをよく話し合って,この検査を受ける必要が本当にあるかどうかをご判断ください。そのようなご相談がしっかりできるようサポートできる体制の整った施設で,検査を受けましょう。

ご案内(広島県性と健康の相談センター)

~NIPT検査について悩まれている,不安を抱えている皆様へ~
ご妊娠おめでとうございます。
新たな命が生まれるにあたり,検査を受けることをご決断されることは,とても不安であり,
悩ましく,なおかつ勇気がいることであると思います。
 
〇こんな気持ちをどこに相談したら良いか分からない…
〇悩んでいるのは自分だけ?
〇パートナーとの温度差がある…
〇検査の結果を聞くのが不安で,心が落ち着かない
など,揺れる気持ちを安心してお話してみませんか?
相談員(助産師)が,あなたのこころに寄り添い,丁寧に対応いたします。
 
毎週 月・木・土曜日10時~12時30分 
 火・水・金曜日 15時~17時30分
 (祝日・年末年始はお休みです)
 
※医療技術に関する詳細な説明や,個別の医療機関を紹介することはできません。受診や検査費用等に関する相談は各医療機関へお願いします。また,カウンセリング等による心の治療を目的としてのご利用はご遠慮ください。
※相談は無料です。また,相談に関する秘密は堅く守ります。お気軽にご相談ください。
※電話が混み合っている場合,繋がりにくいことがあります。ご了承ください。

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