高齢者のための住宅改修ポイント【ポイント2】
ポイント2 失敗しない手すりの選び方・取り付け方
失敗しない手すりの選び方・取り付け方についてご紹介しています。
手すりの取り付けを成功させるために《建築士からのメッセージ》
身体能力の低下に伴う動作の困難さや怪我の危険性を避けるには手すりが有効な働きをしてくれます。何気なくそっと支えてくれる住まいの備えをしておくことが本人の生きがいにもなりますし家族の介護を軽減してくれるのです。
手すりはこんなにも有用なのです
廊下など滑りや転倒によるケガを防ぐ
足元が滑って転倒しそうになったときしっかりと支えてくれる。
高齢になるほど転倒事故が急増しております。
階段などでの転落事故を防ぐ
階段での転落事故が多く危険なことから、新築住宅の階段手すり設置が義務付けられました。
便所・浴室など立ち座り動作がしやすくなる
立ち座り動作が辛くなってきますし転倒事故も多く起こります。手すりがあると安全で楽です。
身体のバランスを助けてくれる
足腰の衰えは思わぬところで身体のバランスを失いよろけて危険です。 手すりがそっと支えてくれます。
暗いところでも誘導の助けになる
視力の低下は避けられませんが、伝い歩きを助けてくれます。 足元灯が有ればなお助かります。
手すり…身体にあわせて,使いやすい高さで
- 手すりがあると,廊下を歩くとき安心です。また浴室・トイレで立ち上がるときのよろけや事故の防止になります。
- 手すりの高さは80cm前後を目安に本人の使いやすい位置に,握りやすい太さと形状を考えて取り付けましょう。
- 手すりをつける位置・形状を考えて,壁の補強をしておきましょう。
手すりを取り付ける前にチェックしておきましょう
- どんな生活動作が手すりを必要としているか
- 手すりを取り付ける位置や周辺の状況,スペースなど
- 使用者本人の身長や動作に合わせた手すりの形や長さ
- 手すりは固定するのか,可動性の必要があるのか
- 手すりの断面形状は円形か上部平坦か
- 手すりの材質は木質かステンレスか,
ビニールコーティングか - 手すりの取付は壁面か,床面か,下地は
板かコンクリートか
作業療法士“L型手すりを考える”
便所の手すりは、ケガの防止、座位を安定させる、車いすからの移乗を助ける、など多くの有用性があります。L字型の取付方法は使用者の使い勝手を優先すべきですよね。
手すりを取り付けるとケガ防止だけでなく,動作が楽になります
◎は特に重要です
便 所
転倒・よろける・引っ掛ける
狭小空間なのに複雑な動作が極めて多いところです。身体の安定を保ち、ケガを防ぐには手すりが必要不可欠。L字型手すりの取り付け位置は、縦手すりは便器先端から200~300mm、横手すりは便器上端から220~250mmが適当です。
動作など | 適した手すりの種類 |
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◎出入り口の動作安定 | 縦手すり |
◎立ち座りと座位の安定 | L型手すり |
○身体の向きを変える | 横手すり |
○車いすから便器に移乗 | 横手すり |
浴 室
滑る、転倒、ふらつき
水濡れで足元は滑りやすく、浴槽をまたいで出入りする際によろけたり転倒して危険です。手すりは水濡れに耐える材質を選び、動作にあわせた位置に付けましょう。
動作など | 適した手すりの種類 |
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◎出入り口ドア・段差 | 縦手すり |
○浴槽をまたぐ | 縦手すり |
○浴槽内の立ち座り | L型手すり |
○浴室内の移動 | 横手すり |
洗面・脱衣室
よろける・転倒する
顔を洗ったり、歯を磨いたり、服を脱ぎ替えたりなどの中腰動作が多いので体のバランスを失ってよろけやすいところです。身体を支えてくれる手すりが必要です。
動作など | 適した手すりの種類 |
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◎出入り口ドアをまたぐときの安定 | 縦手すり |
○前屈み,中腰を安定させる | 横手すり |
○立ち座りを楽にする | L型手すり |
寝室・居室
転倒・よろける
ベッドやソファーなどから移動するときの体のバランスを支えます。ベッドの近くや居室出入り口の柱やドアなどに手すりがあると安心です。
動作など | 適した手すりの種類や位置 |
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○出入り口 | ドア近くの壁に縦手すり |
○室内の移動 | 横手すり |
○ベッドへの着座など | ベッドの縦手すり |
○ベッドの上の移動 | ベッドの移動バー |
階 段
転落事故が多い
手すりは両側設置がよいのですが、片側の場合は下る時の利き腕側です。手すりの端部は水平に200mm以上伸ばします。高さは750mmが標準です。
動作など | 手すりの形状等に関する注意事項 |
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○上下移動の連続 | しっかりと握れる太さと手すりの高さにしましょう。 |
廊 下
転倒事故が多い
移動用横手すりです。床からの高さは750~850mmですが、伝い歩きしやすい高さに取り付けます。手すりの支持金具は下から受けるものが良いです。端部にはエンドブラケットをつけましょう。
動作等 | 手すりの形状等に関する注意事項 |
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○水平移動 | 連続した横手すり |
玄 関
転倒事故・滑る
履物を脱ぎかえるとき、体の上下移動で体のバランスを失います。土間と上がりかまちとの段差が大きい時は土間にベンチを置きます。
動作など | 適した手すりの種類 |
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○ふらつきを安定 | 縦手すり |
○立ち座りを楽にする | 縦手すり、横手すり |
屋 外
転倒,転落が多い
玄関口から駐車場や道路までの階段や段差があると手すりが必要です。屋外の手すりはステンレスなど対候性の高い材質であることが必要です。
動作など | 適した手すりの種類 |
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○スロープ移動 | 斜面に沿った手すり |
○階段 | 階段勾配にあわせた手すり |
私の体験“手すりが太すぎ,あわや”
階段で滑って体がふらついたとき,とっさに手すりを強く握ったが,太すぎて握りきれず危ないところであった。
- 便器とL字型手すりの取付
- 浴槽の出入り
- 洗面台の手すり
- 階段昇降用手すり
- 移動用横手すり
- 受けブラケット
- 玄関上がりかまち用手すり
手すりの取付工事は,どこにでもというわけではありません
チェックしておくべきこと
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取り付ける壁の材質は何か
板壁、プラスターボード、コンクリート、タイル、コンクリートブロックなどその材質に適した工事が必要です。
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取り付ける壁の全体状態を把握しておく
古い木造住宅の場合、壁全体が崩れることもあります。
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取り付けたい箇所に下地があるか
新築など下地準備されているものは問題ありませんが、古い住宅は下地補強の必要が出てきます。下地補強の方法は、壁の一部を除去するものと、壁の上に板材を貼って補強するなどがありますが、いろいろな工法がありますのでこの限りではありません。
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浴室など,水濡れ箇所は特に防水の注意が必要です
手すり取り付けの参考事例
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木造の場合
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下地が柱もしくは間柱
直接取り付けます。しかし,取付位置に骨組みがないときは、コンパネ(12mm以上)のような補強板を使います。
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壁がプラスターボード
クロス張りなどの下地プラスターボードは材質がもろいので、手すりの取付部分は板材(12mm以上)などの固い材料とします。
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浴室壁面がタイル
浴室などのタイルに取り付けるときはステンレスねじでしっかり固定します。
後付ユニットバスの場合は異なります。 -
コンクリート造の場合
浴室などのタイルに取り付けるときはステンレスねじでしっかり固定します。
後付ユニットバスの場合は異なります。
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プラスターボード壁
既存の壁を一部取りはずし補強を行う
既存の壁はそのままにして,その上に板(手すり受け材)を取り付ける