通勤による災害については,公務災害の場合と同様に,「通勤遂行性」と「通勤起因性」により通勤災害に該当するかどうかを認定します。通勤による災害のほとんどが負傷であることから,認定に当たっては通勤遂行性がポイントになります。
通勤遂行性を判断する際にまず問題になるのが,通勤の定義と範囲です。
地方公務員災害補償法第2条第2項により,通勤とは「職員が,勤務のため,次に掲げる移動を合理的な経路及び方法により行うこと」と定義されています。
(1) 住居と勤務場所との往復 (2) 複数就業者の場合,他の就業場所から勤務場所への移動(無許可兼業等に係るものは除く。) |
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通勤の範囲については,「『通勤』の範囲の取扱いについて」(昭和62年5月20日地基補第81号理事長通知)により,事例が示されています。
勤務に就くため,又は勤務を終了したことにより行われる移動(勤務と密接な関連性をもって行われるもの)をいいます。
通勤災害とする事例 |
通勤災害としない事例 |
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○通勤の途中で作業衣,定期券等,勤務又は通勤に関係あるものを忘れたことに気付き,これを取りに戻る場合 ○交通途絶,スト等の交通事情により,許可を受けて引き返す場合 ○公務災害の対象となるレクリエーションに参加する場合 ○次の勤務時間までの間に相当の間隔がある場合において,住居との間を移動する場合 ○遅刻して出勤し,又は早退する場合(勤務時間中に私用で帰るのは通勤としない。) ○単身赴任者が月曜日からの勤務に備え,日曜日に帰省先住居から赴任先住居に移動する場合 |
×出勤途中で自己都合により引き返す場合 ×休日等に勤務公署の運動施設を利用するため住居と勤務公署との間を移動する場合 ×任意参加の親睦会等に参加する場合 ×勤務終了後相当時間にわたり囲碁・将棋等私用を弁じた後帰宅する場合 ×単身赴任者が日曜日の私的な用事のため,土曜日に帰省先住居から赴任先住居に移動する場合(勤務日が月曜日の場合
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職員が居住して日常生活の用に供している生活の本拠としての家屋のほか,勤務の都合その他特別の事情がある場合において特に設けられた宿泊場所などをいいます。
通勤災害とする事例 |
通勤災害としない事例 |
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○ 家族と共に生活している家等,通常勤務のための出勤の始点 ○ 単身赴任者等が家族の住む家から反復・継続性をもって通勤をする場合の家族の住む家 ○ 通常の勤務のために,又は長時間の残業,早出出勤等に備えて設けた宿泊場所 ○ 交通事情等のために一時宿泊する旅館,ホテル等 ○ 家族が長期入院し看病する必要がある場合の病院 ○ 台風等で避難した場所から出勤する場合の当該避難場所 |
× 地方出身者の一時的帰省先 × 単身赴任者が年末年始のみ家族と共に過ごす場合の家族の住居 × 家族と共に郷里の実家に行き,そこから出勤する場合の当該実家
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職員が職務を遂行する場所として,明示又は黙示の指定を受けた場所をいいます。
通勤災害とする事例 |
通勤災害としない事例 |
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○ 通常の勤務の提供の場所(通常の勤務公署,外勤職員の外勤先) ○ 公務災害の対象とになるレクリエーションの場所 |
× 同僚との懇親会,同僚の送別会の会場
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住居と勤務場所間の移動,複数就業者の就業の場所から勤務場所への移動及び単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居との間の移動を行う場合に,社会通念上,一般に職員が用いると認められる経路
通勤災害とする事例 |
通勤災害としない事例 |
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○ 経路の合理的解釈によるもの ・定期券による経路ではないが,通常これと代替することが考えられる経路 ○ 通勤事情によるもの又は通勤に伴う合理的必要行為 ・経路上の道路工事等,当日の交通事情によりやむを得ず迂回する経路 ・事故,スト等の場合の代替輸送機関による経路 ・座席確保や急行列車利用のため1~2駅戻る経路 ・誤って1~2駅乗り越して戻る経路 ・乗降駅以外の駅へ定期券を購入しに行く経路 ・通常の経路を少し離れた場所にある便所に行く経路 ・自動車通勤の者がガソリン補給のためにガソリンスタンドに立ち寄る経路 ・自動車通勤の者がその自動車の修理のため最小限度の迂回をする経路 ○ 共働きの職員が子どもを託児所に連れて行く経路 |
× 交通事情によらず,著しく遠回りとなる経路
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住居と勤務場所との間の往復,複数就業者の就業場所から勤務場所への移動及び単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居との間の移動を行う場合に,社会通念上,一般に職員が用いると認められる方法
通勤災害する事例 |
通勤災害としない事例 |
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○ 電車,バス等公共交通機関を利用する場合 ○ 自家用自動車(友人のものに同乗する場合を含む。),自転車等を使用する場合 ○ 徒歩による場合 |
× 運転免許を受けていない者の運転する自動車を利用する場合 × 飲酒運転又はそれを知りながら同乗する場合
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