示談とは,損害賠償額やその支払方法などについて,当事者双方が話合いにより解決することであり,法律上は民法第695条の和解契約に当たります。
口頭による確認であっても示談とみなされる場合があり,いったん示談が成立すると特別な場合を除いてやり直しがききません。また,基金としても,示談内容を踏まえて求償や免責の手続を行う必要がありますので,第三者加害事案に係る示談に当たっては,次の点に留意して慎重に交渉を行ってください。
示談交渉を行うのはあくまでも被災職員本人(基金ではありません)ですが,所属・任命権者においては、留意事項を踏まえて適切な示談交渉ができるよう,被災職員に指導・助言をしてください。
また,示談内容については事前に基金に協議してください。
1 一般的事項
(1) 災害発生現場では,「治療費は基金から支払われるので要らない」や「こちらが悪いので…」など請求権や過失割合に影響を及ぼす発言はせず,後ほど話合いを持つ旨を伝えること。
(2) 示談交渉に当たり,第三者に白紙委任状を絶対に渡さないこと。
(3) 示談の材料となる事実関係資料(事故現場の写真,現場見取図,治療費の領収書,交渉記録,過失割合資料など)を,事故直後から十分収集すること。(なお,交通事故の過失割合は,通常「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズ38号,全訂5版)が参考とされている。)
(4) 相手方や相手方保険会社からの連絡を待つのではなく,被災職員側から積極的に損害賠償義務者やその交渉窓口を確認し,その者と示談交渉を行うこと。
損害賠償義務者が複数ある場合には,交渉能力のある者を選んで交渉すること。
(5) 代理人と交渉する場合は,代理権の有無や範囲を確認し,代理権のない者や示談屋とは交渉しないこと。
(6) 交渉したときには,ささいな事項でも記録に残しておくこと。(日時,場所,内容,相手方氏名等)
(7) 治療費等を自分が支払った場合には,必ず記帳し,領収書を取っておくこと。
(8) 必要に応じて時効中断の措置をとること。(不法行為に基づく損害賠償請求権は災害発生から5年,自賠責保険への被害者請求権は災害発生時から3年で消滅時効となる。)
2 示談締結の時期
最終的な示談締結は,傷病が治ゆ(症状固定)し,損害範囲が明確になった時点で行うこと。(これはあくまでも正式な示談締結という意味で,過失割合等についての示談交渉は災害発生時から速やかに行うこと。)
3 示談書の作成
(1) 示談内容は必ず書面にすること。
(2) 「一切の損害賠償として○○円支払う。」といった示談ではなく,「治療費○円,慰謝料○円,休業損害○円」など,損害賠償の内訳を明確にした形で示談をすること。
(3) 安易に請求権を放棄したり,不利な過失割合で示談しないこと。
(4) 後遺症や傷病の再発に関する事項についても,明記すること。
【例】今後,本件による後遺障害が生じたときは,改めて賠償条件を協議する。
(5) 補償先行の場合には,基金に求償権があること,及び相手方が基金の求償に応じる旨を明示すること。
【例】 地方公務員災害補償基金広島県支部が補償先行している治療費等について,加害者は,当該支部長の賠償請求に応じるものとする。
示談締結の際に提出が必要となる資料の例は次のとおりです。
なお,示談を締結する前に,基金にその内容について相談してください。
1 示談書
損害賠償の受領報告書提出の際に添付(任意様式可)
2 交通事故解決に係る免責証書
任意保険会社が示談先行によって解決した場合 (Wordファイル)(52KB)
3 交通事故の損害賠償金算定内訳書
保険会社から損害賠償金の提示を受ける場合 (Wordファイル)(37KB)
交通事故及びそれ以外の事故のいずれの場合でも,示談時又は損害賠償受領時には次の書類を提出してください。
提出の際は,示談書又は免責証書の写しや損害賠償受領書の内訳書等の写しを添付してください。