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熱中症

印刷用ページを表示する掲載日2025年12月26日

熱中症とは

 熱中症は、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなったり、体の水分や塩分のバランスが崩れたりすることで起こる、めまい、頭痛、けいれん、意識障害などの症状の総称です。

 緊急搬送が必要になったり、場合によっては死に至る恐れもありますが、適切な予防方法を知っていれば防ぐことができます。

 

広島県内における熱中症による救急搬送者数

 熱中症で救急搬送される患者も近年は広島県内で毎年1,000人を超えており(図1)、熱中症患者数が急激に増えるとされる暑さ指数が28を超えた日数が多い年は救急搬送者数が多い傾向にあります。(図1)

広島県内における熱中症による救急搬送者数

(環境省と消防庁のデータからひろしま気候変動適応センター作成)

図1 広島県内における熱中症による救急搬送者数

 図2は、2023年7月と9月の日最高気温と熱中症による救急搬送者数の関係を示したものです。35℃付近の救急搬送者数を見ると、9月は10人程度であるのに対し、7月は40人程度と多くなっています。これは、7月は、まだ体が暑さに慣れていないためだと考えられます。暑い日が続くと、体が暑さに慣れ(暑熱順化)、暑さに強くなっていきます。また、適度な運動や入浴などによって、体温を上げ、汗をかくことで、暑熱順化は促進されるとされています。

熱中症による救急搬送者数と気温

(気象庁と消防庁のデータからひろしま気候変動適応センター作成)

図2 熱中症による救急搬送者数と気温

広島市内における熱中症による救急搬送者数

 2004年度から2015年度まで国立環境研究所が実施した調査によると、広島市内で救急搬送された熱中症患者数は、10年あたり約230人のペースで増加しています(図3)。
 日最高気温が29℃程度から患者の発生に増加傾向が見られ、31℃、32℃を超えると急激に増加する様子が観察されています(図4)。
 広島市の真夏日(日最高気温30℃以上)日数は増加傾向にあり(詳しくはこちら)、今後さらに熱中症患者数が増加する可能性があります。

熱中症患者数

  • 直線(赤)は長期変化傾向

(熱中症患者速報 平成27年報告書、国立環境研究所のデータからひろしま気候変動適応センター作成)

図3 広島市の熱中症患者数の経年変化

 

熱中症患者発生状況

  • 折れ線(赤)は最高気温
  • 棒線(青)は熱中症患者数

    (熱中症患者速報 平成27年報告書、国立環境研究所のデータからひろしま気候変動適応センター作成)

    図4 広島市の日別熱中症患者発生状況

 

熱中症予防

 熱中症を防ぐためには、「暑さを避ける」と「水分補給」の2つが大切です。下記を参考に適切な対策を実施しましょう。

1.暑さを避ける

(室内)部屋の温度・湿度の確認、扇風機やエアコンの使用、風通しを良くする、遮光カーテン・簾などの利用

(屋外)日傘や帽子の着用、日陰など涼しい場所・施設の利用、晴れた日は日中の外出を控える

2.水分補給

 喉が渇いていなくても、こまめに水分・塩分、スポーツドリンクなどを補給

 熱中症予防には、気象庁と環境省が発表する「熱中症警戒アラート」を活用しましょう。暑さ指数を基に、熱中症の発生リスクが高いと予測されると、前日17時または当日5時に、警戒アラートが発表されます。

 2024年4月には、さらに強い警戒を呼び掛ける「熱中症特別警戒アラート」も新設されました。

※環境省熱中症予防情報サイト:https://www.wbgt.env.go.jp/

暑さ指数

 熱中症の予防や「熱中症警戒アラート」の指標には、暑さ指数(WBGT〔湿球黒球温度〕:Wet Bulb Globe Temperature)が採用されています。1954年にアメリカで提案された指標です。熱中症の発生リスクを、気温の高さだけではなく、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に与える影響の大きい1.気温、2.湿度、3.日射等からの輻射熱、風の要素をもとに算出しています。

暑さ指数

 日常生活における熱中症予防の指針としては、暑さ指数が25未満で注意、25以上28未満で警戒、28以上31未満で厳重警戒、31以上で危険となります。日本スポーツ協会の運動指針では、28以上31未満で激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける、31以上で運動は原則中止とされています。日頃から自分のいる環境の暑さ指数に注意をしましょう。

 自分のいる環境の暑さ指数は、「熱中症予防情報サイト」にて、確認することができます。運用期間は4月下旬から10月中旬で、広島県では、18地点の暑さ指数情報が提供されます。

 随時、熱中症予防情報サイトを確認しなくても、暑さ指数や熱中症警戒アラートをメール配信やLINEで通知してくれるサービスがあります。熱中症予防情報サイトから登録できるので、熱中症予防にご活用ください。

日常生活に関する指針

 熱中症は屋外だけでなく室内でも発症します。室内の作業場所等に熱中症リスクがあるかどうかを評価するためにも、暑さ指数の活用が有用です。

 暑さ指数計は市販されています。作業場所等へ小型の暑さ指数計を配備しておくことで、比較的簡単に暑さ指数を計測することができますので、作業場所等の暑さ指数を実測して熱中症対策に役立ててください。

小型の暑さ指数計の例

職場における熱中症対策

 厚生労働省によると、職場において熱中症で死に至る割合は他の災害と比較して約5~6倍高く、死亡のほとんどは初期症状の放置や対応の遅れが原因とのことです。そして、職場における死亡者の約7割は屋外作業中に発生しているため、気候変動による気温上昇の影響を受けて更に増加する可能性があります。

 このため、2025年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行され、事業者に対して職場における熱中症対策の強化が義務付けられました。改正は、熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止する目的で行われ、対象となるのは、「暑さ指数28以上又は気温31度以上の環境下で、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて実施」が見込まれる作業です。

熱中症対策の基本的な考え方

 具体的内容としては、1.熱中症が疑われる症状がある作業者を早期発見するための「体制整備」、2.熱中症の重篤化を防ぐため、迅速・的確な判断が可能となるように必要な措置や手順をあらかじめ決めておく「手順作成」、3.これら内容の「関係者への周知」です。詳しくは労働局等のHPにあるパンフレットに記載されています。

※職場における熱中症対策の強化について:https://jsite.mhlw.go.jp/hiroshima-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/newpage_00019.html

 上記リンクのパンフレット中に示された処置の例(フロー図)は、個人や学校など、事業者以外にも役立つ内容となっていますので、一度ご覧になってみてください。

 


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