中型獣による農作物被害に遭われた方のお話をうかがっていると、よく「ハクビシンにやられた!」というお話をお聞きします。実際にハクビシンによる被害ももちろんあると思いますが、実は必ずしもハクビシンによる被害ではない場合も実際にはあります。
また、実際にその中型獣を目撃された方の話もお聞きしても、「ハクビシンだった!」と言われることがあります。
どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?
その理由の一つは、被害の状況から、「中型獣で木に登ることができる種」=「ハクビシン」という思い込みがあるのかもしれません。
そこでここでは、ハクビシンと、ハクビシンと間違われる可能性が高い3種の獣類の外観を比較してみましょう。
あなたが目撃したその中型獣、本当に「ハクビシン」でしたか?
混同しやすい中型獣4種
混同されやすい中型獣は、アナグマ、アライグマ、タヌキ、ハクビシンの4種です。体の大きさはいずれも似たようなサイズですが、よく見ると外観は結構違いがあります。
写真左から順に、アナグマ、アライグマ、タヌキ、ハクビシン
確かにこうやって見ると、一見よく似ていますね。
でも正面から見てみると、それぞれ特徴があるのがよくわかります。
・アナグマ(一番左)
目の周りが少し黒いです。また、おでこのあたりがすこし薄くなっていることからハクビシンとよく間違われますが、ハクビシンはもっとしっかりと白い筋が入っています。
・アライグマ(左から二番目)
目の周りがはっきりと黒く、眉のあたりは白くなっています。また、耳がしっかりと立っています。
・タヌキ(左から三番目)
一見アライグマとよく似ていますが、アライグマのような眉の白さはありません。また、耳もアライグマほどしっかりとは立っていません。
・ハクビシン(一番右)
おでこから鼻先にかけてはっきりと白い筋が入っています。これが名前の由来でもあります。
さらに特徴的なのは後ろ姿です。
・アナグマ(一番左)
尾は短く、特に模様はありません。他の3種と比べて足も短く見えます。
・アライグマ(左から二番目)
尾に縞模様が入っています。日本に生息している中型獣でこのような模様がある種はアライグマだけです。
・タヌキ(左から三番目)
アナグマよりも尾も足も長く見えます。
・ハクビシン(一番右)
尾が他の3種と比べて明らかに長いのが特徴です。日本に生息している中型獣で、ここまで長い尾をもつのはハクビシンだけです。
思い込みは捨ててそれぞれの種に応じた対策を
基本的な対策はどの中型獣でも同じですが、それぞれの種の特徴に応じた対策が必要な場面もあります。
被害の状況だけで加害種を特定するのは難しい場合もあります。ここでお伝えしたいのは、必ずしも「中型獣による被害は全てハクビシン」とは限らないということです。決して最初から決めつけずに、被害状況を適切に判断してから対策をしましょう。
なお、実際にそれぞれの種による被害の特徴、対策などの詳細については、以下の書籍に詳しく解説されていますので、ご参照ください。
・ハクビシン・アライグマ おもしろ生態とかしこい防ぎ方 古谷益朗著 農山漁村文化協会
・本当に正しい鳥獣害対策Q&A 江口祐輔著 誠文堂新光社
・最新の動物行動学に基づいた動物による農作物被害の総合対策 江口祐輔監修 誠文堂新光社
・決定版農作物を守る鳥獣害対策 江口祐輔編著 誠文堂新光社