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豊かな自然の中で変化した、考え方とワークスタイル。勢い付く広島に移って来た2人の「ホンネ」

三宅さん、土屋さんの写真

豊かな自然の中で変化した、考え方とワークスタイル。
勢い付く広島に移って来た2人の「ホンネ」

「田舎暮らし」と聞くと、地方に移住して優雅に生活を送る“人生の先輩たち”の顔が浮かぶ人が多いだろう。

働き盛りの世代からすれば地方移住を検討する一歩目として知りたいのは、同世代の人の姿だ。彼らが地方に移り住んでどんな暮らしをしていて、どんな変化を感じているのかを聞きたい。そう思い、広島県の神石高原町(じんせきこうげんちょう)と大崎上島町(おおさきかみじまちょう)に足を運んだ。

はじめに、それぞれの地域の紹介を少しだけ。

神石高原町は広島県の中東部、標高400〜700mの高原地形に位置する町。高速道路は通っていないが、牧場やツリーハウス、キャンプ場を有する自然体験型テーマーパークがあったり、2020年4月には日本初の小学生向けインターナショナルボーディング(全寮制)スクールが開校して話題になった。

大崎上島町は、瀬戸内海に浮かぶ島。本土と島を結ぶ橋は無いため、行き来の手段はフェリー。観光移動用の二人乗り電気自動車「超小型モビリティ」がレンタルできるようになったり、英語で授業を実施する広島県立初の全寮制・中高一貫校が開校したりと、こちらの町も新しい動きが次々と起きている。

このような興味深い地域で暮らし働く、2人のエピソードを紹介しよう。

神聖で心地よい空気と、自治体の軽やかさに惹かれた

「朝、目覚めたときに鳥の声が聞こえることが当たり前なんです。ときどき、聞こえない朝があると、逆に不安になってしまいますね」

こんな表現を用いて、今暮らす場所の自然の豊かさを教えてくれたのは、三宅紘一郎さん。神石高原町で酒造りに励んでいる37歳だ。

三宅さんは、日本酒文化を未来に引き継ぐための事業を行うナオライ株式会社の代表取締役。ナオライは、2015年から瀬戸内海に浮かぶ三角島(みかどじま/広島県呉市)に拠点を構え、スパークリングレモン酒「MIKADO LEMON」をプロデュースしている。

三宅さんの写真1

ナオライが神石高原町にも拠点を置いたのは、「浄酎(じょうちゅう)」をつくるため。浄酎とは、極限まで熱をかけずに日本酒を蒸留する「低温浄溜」技術によって作られ、ブレンド、熟成させたライスウイスキーのようなお酒。開発や実験を経て商品化の目処が立ち、製造拠点を探していたとき、三宅さんは神石高原町の「サテライトオフィス・お試しモニターツアー」に出会う。

「初めて訪れたとき、直感的に空気が良いなあと感じました。1000年以上の歴史を持つ神社が点在する、珍しい土地だからかもしれません。雪が多く降るのでスタッドレスタイヤが必須と、気候も三角島とはまったく違いました」(三宅さん)

空気感だけではない。神石高原町の、自治体としての軽やかさにも惹かれた。

「モニターツアーの最初に、町長と直接話すことができたんです。『浄酎の製造拠点にできる、今使われていない酒蔵さんを探している』と言うと協力してくれて、酒蔵さんとの交渉にも町役場の方が同行してくれました。町としての意思決定や動きが早いんです」(三宅さん)

「ここだ」と決め、100年以上の伝統を持つ酒蔵の一角にある蔵を借りて、浄酎造りの拠点とした。現在は、三角島と神石高原町を行き来する日々だ。

近付いた自然との距離。潮の満ち引きや満月の満ち欠けに敏感に

三宅さんは、ずっと広島で暮らしてきたわけではない。三角島に拠点を構える以前は、上海で9年、東京で2年ほど過ごした。都会に住んでいた頃のことをこう振り返る。

「満員電車に乗ることが当たり前だったし、せかせかと働いている自分が偉いと思っていたこともありました。けれど、星や月が見えないこと、海や森の匂いがしないことなど、自然との距離が遠いことにストレスを感じていた気もします」(三宅さん)

三宅さんの写真2

忙しく充実していながらも、どこか窮屈さやひずみを感じていた都会での生活。三角島に来て以降は、自然との距離がぐっと近づいた。

「潮の満ち引きを意識するようになったり、『今日は明るいなあ、満月だからか』と月の満ち欠けに敏感になったりしました。夜は目が働かない代わりに、嗅覚や聴覚が敏感になんだよと有機農業を教えてくれた地元の方が教えてくださり、五感も研ぎ澄まされていきましたね」(三宅さん)

田んぼにゲンゴロウやタガメがいたり、蛍がたくさん飛んでいたり、朝に雲海が見えたりといった景色は、神石高原町ならではだという。

自然との触れ合いは、時間の捉え方も変えた。「時短こそ美」と言わんばかりにライフハックが溢れる現代で、三宅さんは逆を行く。

「時間を掛けることや遅いことこそ、素晴らしくて価値があると思うようになりました。米やレモンは1年に1度しかできないし、自然相手なのでじっくり待つことが増えたからだと思います。暮らしのペースもゆっくりになって、玄米のおにぎりを一口で100回くらい噛んで食べてますよ。すると体調が良くなってきました」(三宅さん)

豊かさの基準が自分の中にある人は、地方にフィットできる

有名な商売の基本に、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」という言葉がある。三宅さんは、この三方よしに危機感を唱える。売り手が儲かり買い手が喜ぶことを追求した結果、安価な酒を摂取し続けて病気になる人が増え、無理な生産を行い自然環境が破壊されてしまっている現実があるからだ。

そこでナオライが加えたのが、「未来よし」と「自然よし」だ。三方よしにこの2つを加えた、計5つの「よし」を満たしているかを常にチェックしながら、事業を育てているのだという。

自然に背くことをせず、自然のペースに合わせて生活すれば、人は無理なく心地よく暮らせる。三宅さんの話を聞いてそう思えた。けれど、三宅さんのように暮らすには、コツというか、小手先ではない心構えが必要なように思う。最後に聞いてみた、「地方にフィットして豊かに暮らすには、何が必要か」と。

「今までの常識や、都会での当たり前を一度脱ぎ捨てることではないでしょうか。ここに来ても、テレビを点ければ東京のレストランが紹介されているし、SNSのタイムラインには都市で楽しく暮らす人の様子が流れてくる。いったん、色々なものをリセットしないと、都会が羨ましくなってしまうと思いますよ。豊かさの価値基準を、他人との比較の中ではなく、自分の中に持っておくことが大切です」(三宅さん)

ここに住めば必ず豊かになれる、なんてユートピアは無い。移り住んだ土地の良さを見出し、気付けるかどうかは自分しだいだ。都会と比べると娯楽が少ない地方では、そうした「受信」の感覚が問われるのだろうと思った。

サテライトオフィス開設は「本気の証」

別の日、「東京との二拠点生活を送っている人がいる」と聞き、大崎上島町に向かった。広島空港から車で南に約30分走り、竹原港へ。そこからフェリーに30分乗船すると到着した。

伝えられた住所通りに港から車を走らせると、辿り着いたのは立派な民家。迎えてくれたのは土屋淳一さん、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社(以下ポッカサッポロ)の社員だ。ここはポッカサッポロのサテライトオフィスである。

『ポッカレモン』や『キレートレモン』で知られるポッカサッポロは、国産レモンの生産振興を目的に、大崎上島町と協定を締結した。国内のレモン農家は高齢化や後継者不足などの課題を抱えている。自分たちもレモンの栽培に関わり、現場の課題を理解した上で生産振興を進めよう、という考えからだ。

土屋さんの写真1

それ以来、定期的に出張という形で大崎上島を訪れていた土屋さんだが、拠点が無いために「どこかお客様感が拭えなかった」のだという。そんなとき、広島県が推進している「チャレンジ里山ワーク」を知る。モニターツアーへの参加や半年間のお試しオフィスの利用を経て、サテライトオフィスを構えようと決めた。

「レモン栽培農家さんやJAの方とコミュニケーションをとるにしても、毎回会議室を貸していただくより自分たちの拠点に招く方が、ポッカサッポロの本気度や覚悟も伝わりやすいと思ったんです」(土屋さん)

アクセスの良い離島だから、東京との二拠点勤務が可能

月曜と火曜に東京本社で勤務し、水曜の朝に大崎上島に上陸、そして金曜の夜に東京へ。これが、土屋さんの1週間のスケジュールだ。二拠点勤務はなかなかハードそうだが、実際はどうなのだろう。

「空港からのアクセスも良く、フェリーも30分に1本は入出港しているから、それほど遠くないですよ。正直言うと最初に大崎上島へ来るまでは、島=孤立した場所というイメージを持っていました。『過疎化が進み、地域課題の多い場所なのだろう』と決め付けていて、不安でしたね。いざ来てみると、普通に一つの“まち”だったんです。人口も7000人ほどいるから活気があるし、最近は島外へのPR活動にも力を入れているから、地元の方もまったく閉鎖的ではないんです」(土屋さん)

土屋さんの写真2

東京では味わえない大自然や食文化にも魅せられている、と土屋さんは続ける。

「日本で海が綺麗な場所と言えば沖縄しか知らなかったんですが、瀬戸内海は波が穏やかですごく美しいんです。高台の農地で、海を眺めながらパンとコーヒーを食べる時間はすごく贅沢ですね。食べ物もおいしいですよ、タチウオとか。サテライトオフィスで一緒に働いているメンバーが料理上手で、釣れたての新鮮な魚を捌いてくれるんです」(土屋さん)

もう一つの拠点があることで、得られる安心感

二拠点勤務は、仕事にもメリハリと良い影響を及ぼしている。大崎上島では、レモン農地の栽培管理などの体力仕事や、レモンの生産振興やブランディングに向けての話し合いを地元の人とともにすることが多い。東京本社では、社内関係者とのミーティングや資料作成に時間をあてるという。

「大自然に囲まれた生産現場は、発想したり構想したりといった、未来を向く仕事をするのに適しているように感じます。一方で、ロジカルに考えをまとめたり資料を作成したりといった、構想を叶えるための準備は東京で行います」(土屋さん)

未来を向くという点では、得意先の企業を大崎上島に招待して、サテライトオフィスで来期の提案プレゼンを行うことも。農地視察やレモンの収穫体験もしてもらい、ポッカサッポロが持つレモンへのこだわりも知ってもらうそうだ。

二拠点勤務を満喫している土屋さんだが、東京本社と自宅を往復していた時代も日々は充実しており、不満は無かった。ただ、大崎上島という新たな拠点ができてから、安心感が生まれたという。

「自分を必要としてくれている人や、期待してくれている人がここにもいる。その事実がうれしく、安心できるんです。地元の人と連携を取りながら、ここでしかできない仕事をしているから、そう思うのかもしれませんが」(土屋さん)

一つの居場所しかないと、行き詰まったときに苦しくなってしまう。その点で、別の居場所があることは救いになる。土屋さんは仕事がら地域と深く関わるため、人との繋がりの中に安心感を感じているが、それは人に限らないはずだ。

「明日と明後日は、海の見えるあのオフィスで仕事ができる」と、もう一つの拠点がある事実だけでも安心感は得られるだろう。そして、安心して働けることは、仕事のパフォーマンスにも良い影響を与える。これは二拠点勤務ならではのメリットかもしれないと感じた。

今回訪ねた神石高原町と大崎上島町は、最長1ヶ月のお試し勤務や生活周辺環境の視察ができる、法人向けのプロジェクト「チャレンジ里山ワーク」に参画している。オフィス賃借料や通信回線使用料の補助制度もあるので、拠点の地方移転やサテライトオフィス開設を検討している企業は、ぜひ選択肢に含めてみてほしい。


 

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  • 広島県庁 中山間地域振興課

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