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【@呉市】このまちには、挑戦を見守る風土がある ~自由だからこそ「どう暮らしたいか」を考え、日々生きる~

雅也さんの写真1

【@呉市】このまちには、挑戦を見守る風土がある
~自由だからこそ「どう暮らしたいか」を考え、日々生きる~

自然豊かな環境の中にある、サテライトオフィスでの勤務は魅力的だ。ただ「その場所に行って働くだけ」ではもったいないように思う。

せっかく新しい地域に飛び込むなら、自ら新しい価値を生み出せた方が面白い。“外から来た視点”で地域に隠れている課題のタネを見つけて、課題解決に携わるのもやりがいがありそうだ。

そんな、自ら変化を起こせるフィールドが、広島県呉市に広がっている。

呉市は、広島市まで車で1時間ほど、平地と山地と島が入り混じった市である。「海軍のまち」としても有名で、臨海工業都市として発展してきた。

本記事に登場するのは、呉市倉橋町に移住して「seaside cafe ALPHA(シーサイドカフェアルファ)」を経営する天本(あまもと)雅也さん。地域の課題解決を目指し、現在はオンラインストア「倉橋ZIMAE」も運営している。天本さんは、移住者として地域とどう関わってきたのか。そしてどんな変革に携わっているのか、話を伺った。

都会暮らしが一転。ビーチが目の前に広がる、新しい場所での挑戦

瀬戸内海に浮かぶ倉橋島にあるseaside cafe ALPHA。店内に一歩足を踏み入れると「日本の渚100選」にも選出された桂ヶ浜ビーチが目の前に広がる。開放的な空間だ。

店主の天本さんは、もともと外資系メーカーに勤め横浜で暮らしていた。倉橋は奥さんの地元。15年ほど前から定期的に訪れていたが、倉橋で過ごす時間は心地良く「定年後に移住できたら」とぼんやり思っていたという。だが、転機は予定よりかなり早く訪れた。

「仕事も子育ても忙しく、都会での生活が気ぜわしくなってきたタイミングがあって。けれど、倉橋に来て海を眺めていると『都会とは時の進み方が違うのでは?』と思うほど、時間の流れがゆっくりに感じられて。身体が元気で動けるうちに新しい土地で挑戦をしたい。移住するなら今だと思いました」

こうして、天本さん一家は2015年に倉橋へ移住する。

移住前から、天本さんは倉橋に対して「この素晴らしい環境をもっと活かせられるのではないか」と思っていた。奥さんの実家が「シーサイド桂ヶ浜荘」という旅館を経営していることもあり、倉橋の人の流れにも敏感になっていたからだ。

「島の人口が減っていることや、島外から訪れる方がそう多くないことに寂しさを感じていました。町を盛り上げるためにも、まずは地元の人が集まれるカフェを作ろうと思ったんです」

こうして、奥さんのお父さんが30年前に営業していた喫茶店を改装し、seaside cafe ALPHAを開店。開業にあたっては、呉市の「島のにぎわい拠点公募事業」に応募し、奨励金の支援も受けた。

雅也さんの写真2

地域の人との繋がりから見つけた、島の課題に取り組む

もともと、大人数での集まりが苦にならない性格の天本さん。ボランティア・地域活動・飲み会など、地域住民からの誘いには積極的に参加した。

現在、カフェでは倉橋産の野菜を使った料理を提供しているが、野菜の生産者さんに出会えたのも地元の人の紹介のおかげだという。天本さんは、倉橋の土地柄をこう分析する。

「倉橋島は愛媛や山口とも県境を接しているため、昔は港からさまざまな人の出入りがあったそうです。そんな歴史もあって、島の外の人を受け入れることに抵抗が無いし、まったく閉鎖的ではなくて。人と人との距離が近いことを煩わしく思う方もいるでしょうけど、僕にとってはありがたい距離感でした」

地元の生産者さんとも交流を深めていった天本さんだが、その中で新たな島の課題に気付く。

「後継者がいないから、廃業するしかないと話す生産者さんが多かったんです。また、一升瓶サイズの商品しか取り扱っていないお醤油屋さんに『観光客の方が買って帰りやすいサイズの商品を出しませんか』と提案したときには『新商品を出す体力も気力も無くてね』とこぼされてしまって…」

何とか生産者さんの力になりたいという思いもあり、天本さんは仲間とともにオンラインストア「倉橋ZIMAE」の運営を開始。倉橋の良い商品を販売するだけでなく、地元産の醤油や味噌などのパッケージデザインもプロデュースしている。

「『このままではもったいない。もっとこうなればいいのに』と思ったときに、主体的に変化を起こしやすい環境が倉橋にはあるんです。新しい取り組みをすると変化が目に見えてわかることも魅力ですね」

雅也さんの写真3

やりたいことを携えて、呉市に来てほしい

天本さんが倉橋に移り住んで6年目。最近は周りに移住者も増えてきた。マリンレジャーの会社を設立した人や、ゲストハウスを開いた人もいる。天本さんの友人は、リモートで英会話講師や映像制作の仕事をしているそうだ。

「自由な分、自分がどのように働き、暮らすのかをしっかり考えないといけない。だから、都会での生活や会社員生活に疲れたからといった、ネガティブな理由だけで田舎に来てもなかなかうまくいきません。

事業を立ち上げる人や、場所にとらわれず自分がやりたい仕事をする人など、挑戦に意欲的な移住者の方が増えてきたので、これからが楽しみです」

挑戦を支える風土もある。呉市の職員は、地域で積極的に活動する住民の声によく耳を傾けており、天本さんが「市内で起業する人を増やすためにも、ビジネスプランコンテストを開催してみてはどうか」と提案したところ、すぐに実施された事例もあるそうだ。

ただ、天本さんは「市に求めたい制度や支援は特に無い」とも強調する。

「『支援ありき』で走り出すのではいけなくて。何事も自分たち次第だと思うんです。
暮らす町を良くするために挑戦できる風土があって、必要なときにサポートを依頼できるような関係性さえあれば十分ですね」

呉市は現在、挑戦を求めて移住してくる企業や個人を受け入れるべく、新たにお試しオフィス(コワーキングスペース)を整備中だ。場所は、瀬戸内海に浮かぶ安芸灘諸島の下蒲刈島(しもかまがりじま)にある「コテージ梶ヶ浜」。呉市中心部から車で40分ほど走り、安芸灘大橋を越えるとたどり着く。

下蒲刈島は、倉橋よりもさらに車通りの少ない、美しい海のある穏やかな町だ。コテージ梶ヶ浜は古民家風の宿泊施設で、敷地内では海水浴、キャンプ、レンタサイクルなどのレジャーや豊かな自然環境を楽しめる。取材当日も、敷地内の海水浴場でのんびりと泳ぐ人たちがいた。

呉市は島が多く、各地域で景色や特色が異なる。今回登場した二つの島以外にも、上蒲刈島、豊島、大崎下島など大小たくさんの島があり、瀬戸内の多島美は絶景だ。市の中心地も含めた個性豊かな地域から、自分に合う土地を選ぶ過程も含めて楽しめるだろう。

自分次第で変化を起こしていける余白と、見守りの風土があるまち。呉市を訪れて、そんな印象を抱いた。


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