第3節 瀬戸内海の環境保全と創造(横断的項目)
  
現状と課題
 
  高度経済成長期に,工場排水や生活排水などにより悪化した瀬戸内海の水質環境は,これまでの規制的措置により,危機的な状況は脱したものの,近年の改善は横ばいの状況にあります。
 また,本県の藻場干潟は,沿岸域の環境変化や開発行為等により近年減少傾向にあり,自然海岸も,約31.5%が残存するのみで、全国の53.1%に比べ少なくなっています。
 今後の瀬戸内海における環境施策には,従来の規制を中心とした,保全型施策の充実に加え,失われた自然や自然のもつ機能をどのように回復していくかという視点で,地域の特性に応じた新たな環境修復・創造施策を展開していくことが求められています。
 
図表 3-3-1 藻場・干潟の現存面積と消失面積(再掲)
  藻場(ha) 干潟(ha)
現存面積 消滅面積(昭和53年度以降) 現存面積 消滅面積(昭和53年度以降)
広島県 1,842 251 1,068 99
全国 142,459 65,156 49,380 5,920
出典:環境庁第5回(平成7・8年度)自然環境保全基礎調査
 
図表 3-3-2 海岸線の状況(再掲)
   自然海岸 半自然海岸 人工海岸 河口部 総延長
延長km 延長km 延長km 延長km km
H8 349.0 31.5 59.3 5.3 692.9 62.5 8.3 0.7 1,109.5
全国 17,413.9 53.1 4,252.8 13.0 10,821.6 33.0 310.7 0.9 32,799.0
H5 355.3 33.0 49.4 4.6 663.7 61.7 6.9 0.7 1,075.3
全国 18,105.7 55.2 4,467.5 13.6 9,941.8 30.3 264.0 0.8 32,778.9
S59 366.0 34.3 57.5 5.4 637.0 59.7 6.9 0.6 1,067.3
全国 18,402.1 56.7 4,511.4 13.9 9,294.5 28.6 263.8 0.8 32,471.9
S53 369.6 35.0 59.0 5.5 621.0 58.8 6.9 0.7 1,056.5
全国 18,967.2 59.0 4,340.4 13.5 8,599.0 26.7 263.7 0.8 32,170.2
出典:環境庁第2回〜第5回自然環境保全基礎調査
 
瀬戸内海(安芸灘諸島)
瀬戸内海(安芸灘諸島)
 
施策の展開
 〔瀬戸内海環境保全・創造施策の展開〕
 
(1)総合的な環境保全・創造施策の推進
 「広島県瀬戸内海環境保全・創造プラン」及び「瀬戸内海の環境の保全に関する広島県計画」に基づき,残された貴重な自然の維持と海域環境悪化の防止,失われた環境の修復と創造のための施策を,地域住民をはじめとした幅広い主体の参加と連携のもとに地域の特性を踏まえて総合的に推進します。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 環境保全・創造施策の推進[環境調整室]
 「広島県瀬戸内海環境保全・創造プラン」及び「瀬戸内海の環境の保全に関する広島県計画」に掲げる各種施策を総合的に推進します。
[平成16年度事業実績]  施策の推進を図るとともに,施策の進行管理を行いました。
[平成17年度事業内容]  引続き,施策の進行管理を行います。
 
(2)環境の保全
 貴重な自然環境等の保全や海域利用の適正化を図ります。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 第5次総量削減計画の推進[環境対策室](再掲)
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 生活排水処理施設の整備推進[一般廃棄物対策室,生活基盤室,漁港漁場整備室,下水道室](再掲)
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 放置艇の規制[港湾管理室](再掲)
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(3)環境修復・創造事業の推進
 海域環境の修復や生息環境の維持・回復,自然と人とのふれあいの場の確保等を図ります。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 藻場・干潟等の造成
 
(ア)水産基盤整備事業[漁港漁場整備室](再掲)
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(イ)漁港海岸環境整備事業[漁港漁場整備室](再掲)
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(ウ)農地海岸環境整備事業[生産基盤室](再掲)
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(エ)港湾環境整備事業[港湾企画整備室](再掲)
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(4)健全な水循環の維持・回復
 上流域の森林から下流域の干潟や海に至るまでの流域を一体的に捉え,多様な主体の参加と連携による健全な水循環の維持・回復に向けた具体的な取組を推進します。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 健やかな流域づくり事業(黒瀬川モデル)[環境調整室](再掲)
[平成16年度事業実績]  住民・事業者・学校・行政の協働・連携による流域づくりを推進するため,黒瀬川をモデルとして,有識者等で構成する協議会を設置し「健やかな流域づくり構想」を策定するとともに,流域の住民団体等の参加により具体的な取組を検討する「流域ワークショップ」を開催しました。
[平成17年度事業実績]  平成16年度に策定した構想を黒瀬川流域以外の流域に普及させるため,流域フォーラムを開催します。また,構想に盛込まれた住民による環境の保全の取組を進めていきます。
 
(5)住民参加の促進
 環境に対する認識を深め,自主的な行動を促進していくための環境学習や住民参加の促進を図ります。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 せとうち海援隊支援事業[環境調整室]
 海浜における環境保全活動(海浜清掃・美化及び海岸・干潟生物調査)を実施する団体等を「せとうち海援隊」として認定し,活動に対し,(1)傷害保険,賠償保険への加入,(2)活動団体等を表す海援隊旗の作成,(3)活動状況のPR等,により支援します。
 
[平成16年度事業実績]  海浜清掃等の環境保全活動を実施する8団体を新たに認定し,せとうち海援隊を合計17団体に拡大するとともに,海岸・干潟生物調査を実施する団体を対象として,生物調査研修会を実施しました。
せとうち海援隊認定団体
地域名 団体名 活動区域(市町名)
広島 宇宙船地球号の会 包が浦地区海岸(宮島町)
阿多田島漁業協同組合 阿多田地区海岸(大竹市)
THE EARTH 上室浜,腰細浦,革篭崎海岸(宮島町)
宮島の磯・生きもの調査団 大元公園前海岸外(宮島町)
広島環境サポーターネットワーク 元宇品海岸太田川河口(広島市)
NTTドコモ中国グループ ベイサイドビーチ坂(坂町)
フジこどもエコクラブ広島  包ヶ浦海岸(宮島町)
海越(かいごし)女性会 海越地区海岸(呉市)
豊浜町公衆衛生推進協議会 豊浜町内海岸(呉市)
東広島 昔の海をとりもどす会 安芸津町全域(東広島市)
白水区 白水区海岸通り外(大崎上島町)
小松原の海を守る会 小松原地区海岸大芝島(東広島市)
尾三 むかいしま大好き子どもクラブ 立花地区海岸等(尾道市向島町)
くる2(くるくる)みはら発見隊 鷺浦町広瀬谷海岸(三原市)
三原市立鷺浦小学校 鷺浦町須ノ上,佐木,向田地域海岸(三原市)
福山 環境市民ネット松永 松永湾一帯(福山市)
盈進中学校環境研究部生物班 仙酔島(福山市)
 
[平成17年度事業実績]  せとうち海援隊の認定団体数の拡大を図ります。
 また,せとうち海援隊と関係市町とで意見交換会を行い,さらなる活動の充実を目指します。
(6)技術開発・モニタリング調査の推進
 海域環境の修復・創造のための技術開発や自然環境,海洋生物に関するモニタリング調査の普及を図ります。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 海洋生物等モニタリング調査[環境調整室]
 海岸などの生物分布など生態系の面から海域環境を的確に把握し,今後の環境保全・創造施策の検討・実施等に活用するために,海洋生物等のモニタリング調査を実施します。
[平成16年度事業実績]  宮島において,周辺環境の異なる海岸3地点(下図)で,年4回(春,夏,秋,冬)の調査を実施しました。
調査時期
春,夏,秋,冬
調査地点
上室浜(かみむろはま)地区,革篭崎(こうござき)地区,腰細浦(こしぼそうら)地区
調査対象
海岸の生物(潮間帯生物※:貝類,藻類など8種類),植物,ごみ・漂着物,土質等
潮間帯生物:大潮時の最高高潮面から最低高潮面の間に生息する生物
調査地点図
[平成17年度事業実績]  せとうち海援隊の協力を得て,海洋生物等モニタリング調査を実施するとともに,調査方法の普及を図ります。
 
(7)広域連携の推進
 豊かな自然と歴史・文化を共有する中国・四国地方の共通財産であり,人口,産業等の集積している瀬戸内海地域において,閉鎖性水域という特性に配慮した環境保全と内海多島美の自然景観の保全を図るため,関係府県等と連携して広域的な取組を推進します。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 「瀬戸内海環境保全知事・市長会議」,「(社)瀬戸内海環境保全協会」への参画[環境調整室]
 「瀬戸内海環境保全知事・市長会議」,「(社)瀬戸内海環境保全協会」に参画し,関係府県・市や漁協・環境保全団体等と連携して,総合的な瀬戸内海の環境保全対策の推進や普及啓発活動,調査研究等を行います。
 また,「瀬戸内海環境保全知事・市長会議」において,瀬戸内海再生のための取組を沿岸府県と連携して行うとともに,同会議の設置した「瀬戸内海の環境に関する課題に係る検討会」に参画し,瀬戸内海の環境保全及び再生方策についての対策を検討します。
[平成16年度事業実績]  瀬戸内海の共通課題等に係る協議検討,瀬戸内海の環境保全に関する国への要望(「瀬戸内海環境保全知事・市長会議」)や,瀬戸内海環境保全普及啓発事業・調査研究(「(社)瀬戸内海環境保全協会」)などを実施しました。
[平成17年度事業実績]  引続き,関係府県等と連携して広域的な取組を推進します。
 
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