第2節 身近な自然と快適で潤いをもたらす環境の保全と創造
 
1  身近な自然環境の保全
 
現状と課題
 
  農山村地域等は,里山,水田・畑などの農用地や集落などで構成される多様な環境が存在し,その中で多くの生物が生息していますが,過疎化・高齢化の進行により,里山・農用地等の有する環境保全機能の維持が困難な地域も発生しています。
 一方,都市域及び都市近郊では,地域住民の良好な生活環境の維持に資する自然環境の保全を図るとともに,公園や緑地等の整備・保全等により,安らぎのある快適な生活環境を創造していく必要があります。また,都市の主要なみどりを構成する街路樹についても,都市景観の美化,緑蔭の提供による安らぎや快適性の向上,防塵,防風等効用,空気の清浄化等の働きや公園や緑地を結ぶ生態空間としての重要性が認識されつつあります。
 河川,渓流,海岸などの水辺については,地域の人々が親しみやすく,憩いの場となるような水辺環境の整備を進める必要がありますが,全国1位のレッジャーボート保有県であり,適切な係留を行っていない放置艇があることなどから,沈廃船等による海域環境への悪影響が発生しています。
 
図表 3-2-1 都市公園面積及び1人当たり都市公園面積
資料:県都市整備室
 
図表 3-2-2 緑地環境保全地域数及び面積(平成17.4.1現在)
区分 地域数 総面積(ha)
緑地環境保全地域 22 818
資料:県自然環境保全室
 
[施策の方向]
身近な生き物やみどりとのふれあいの場となる農用地や里山林,都市公園などの保全と創造
 
施策の展開
 
(1)農用地の保全
 農用地は,生産基盤や水源かん養の機能に加え,営農活動と調和して多様な生物が生息する空間であり,みどりの空間を保持し,県民にやすらぎを与える機能を持っていることから,こうした機能の維持・増進のため,中山間地域では集落等を単位とする地域ぐるみの永続的な農業生産活動を推進し,都市近郊では,みどり空間として地域ぐるみで計画的・集団的土地利用を図るなど,その保全管理と有効利用を誘導します。
  
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 中山間地域等直接支払事業[農地保全室]
 農用地の持つ水源かん養などの公益的機能の維持を目的に,農業生産条件の不利な中山間地域等を対象として,集落等を単位とする農業生産活動を推進し,耕作放棄の原因となる農地生産条件の不利性を補正する直接支払を実施します。
[平成16年度事業実績]  協定面積18,626haに対し,2,834,530千円を交付しました。
[平成17年度事業内容]  平成17年度以降5年間の継続が決まり,協定面積はさらに拡大が見込まれます。
 
 中山間ふるさと水と土保全基金事業[土地改良室]
 非農家を含めた中山間地域の住民一体による共同活動を支援し,地域コミュニティーを発展させることにより,農地及び土地改良施設(用水路,ため池,農地法面等)の維持保全活動を活発化させて,農業農村のもつ公益的・多面的機能の良好な発揮や自然環境の保全・再生を推進します。
 また,都市住民に対する情報提供や啓発,普及活動を進め,農村と都市との共生・対流を促すことにより,中山間地域のもつ資源が県民全体の財産として評価され,利活用されていくことを目指します。
[平成16年度事業実績]
基本的対策作成(ワークショップ手法による地域資源の保全を進めるための将来構想の作成)
実施地区:湯来町砂谷地区
畦畔管理省力化実証展示(農地法面へのシバザクラの植栽による管理省力化のモデル展示)
実施地区:御調郡御調河内地区,三次市青河下地区
「ひろしまの農村フォトコンテスト」開催
吉田町可愛地区において,「ふるさと水と土探険隊」を開催しました。
[平成17年度事業内容]
基本的対策作成
実施地区:庄原市南地区
水路・ため池再生支援事業
実施地区:2地区
「ひろしまの農村フォトコンテスト」開催
東広島市高屋町貞重地区において,「ふるさと水と土探険隊」(広島市立大町小学校5年生約120人参加予定)を開催します。
 
 棚田地域水と土保全基金事業[土地改良室]
 美しい日本の原風景といわれる棚田の公益的・多面的機能を広く県民にPRし,維持保全に対する理解と認識の向上を図ることにより,地域住民だけでなく都市住民やボランティア団体による保全・利活用活動の活性化につなげます。
[平成16年度事業実績]  「ひろしまの農村風景ポストカード」を作成し,棚田の魅力について広くPRしました。
[平成17年度事業内容]  棚田地域親子ふれあいバスツアーを開催し,都市住民の親子から参加を募り,棚田に対する理解向上を図ります。
 
 中山間地域緊急保全対策事業[生活基盤室]
 中山間地域の中で最も条件不利地域である棚田地域を対象に,緊急的な整備や持続的保全に係る支援を実施し,棚田のもつ国土保全,環境保全の機能を良好に発揮させます。
[平成16年度事業実績]  該当地区なし
[平成17年度事業内容]  該当地区なし
 
(2)里山林の保全
 都市周辺の森林において緑豊かで良好な生活環境や自然環境の保全・形成に努めるとともに,多様な生物の生息・生育環境等として貴重な存在となっている里山林において,地域住民と都市住民との交流・協力等によりその保全を推進します。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 里山林整備推進事業[森林保全室](再掲)
 県民参加の森林づくりの拠点となる森林の整備並びに森林ボランティア団体等と森林所有者等との協定締結を推進するため,推進委員会の設置及び運営,現地検討会の開催,作業器具の整備等を支援します。
[平成16年度事業実績]  東広島市において,森林ボランティア団体の行う森林整備等の活動を支援しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,森林ボランティア団体の行う森林整備等の活動を支援します。
 
 共生保安林整備事業[治山室]
 都市周辺の森林において,緑豊かで,良好な生活環境や自然環境の保全・形成を図るため,保健休養・自然環境保全機能の高い森林を整備します。
[平成16年度事業実績]  保安林の機能を多目的かつ高度に発揮させるための造成改良整備等により保健休養・自然環境保全機能の高い森林整備を8区で実施しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,同様の事業を5地区で実施します。 
 
(3)まちのみどりの保全・創造
 「広島県自然環境保全条例」に基づく緑地環境保全地域の指定により,市街地やその周辺地域の緑地等の保全を図ります。
 また,住区基幹公園,都市基幹公園等の重点的な整備や,風致地区,緑地保全地区の指定等により,都市域及び都市近郊の良好な生活環境の形成を推進します。
 さらに,街路樹の植栽などによる道路緑化,法面における自然植生の回復等により良好な道路環境の整備を推進します。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 緑地環境保全地域の指定等[自然環境保全室]
 「広島県自然環境保全条例」に基づく緑地環境保全地域を指定し,市街地やその周辺地域の緑地等の保全を図ります。
(緑地環境保全地域指定状況は,資料編「自然環境5」参照)
[平成16年度事業実績]  県内22箇所の緑地環境保全地域の保全に努めました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,緑地環境保全地域の保全に努めていきます。
 
 植樹帯などによる道路緑化[道路企画室]
 みどりに恵まれた快適な環境が身近な空間に創出されるよう,道路改良や維持修繕の際,植樹帯や法面の緑化などを必要に応じ行い,良好な道路環境の整備を推進します。
 
 緑の斜面整備事業[砂防室]
 緑豊かな自然の活用や,斜面空間の利用により,地域の環境にとけ込んだ斜面整備を推進するため,補強土工法を実施し,既存木の保存を行います。
[平成16年度事業実績]  呉市・天応中学下地区において整備しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,呉市・天応中学下地区において整備します。
 
 都市公園事業[都市整備室](再掲)
 都市公園の整備や都市における緑化の推進は,都市環境を改善するとともに自然的環境を創出し,快適で潤いのある生活環境を形成します。
[平成16年度事業実績]  新宮中央公園(廿日市市),東広島運動公園(東広島市)他15箇所で緑化を行いました。
[平成17年度事業内容]  みよし運動公園(三次市),三原運動公園(三原市)他10箇所で緑化を行います。 
 
 街路事業[都市整備室](再掲)
→詳細はこちら
 
(4)親水施設の整備
 河川環境は地域の自然,生活,文化等の形成に大きな役割を果たしていることから,その環境整備においては,それら多面的な価値を十分に活かし,長期的・広域的な視野に立った川づくりを推進します。
 港湾,漁港,海岸の環境整備においては,交流の促進,生活環境の向上等を目的とし,緑地や親水施設等の整備を推進します。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 漁港環境整備事業[漁港漁場整備室]
 漁港における景観の保持・美化を図り,快適にして潤いのある漁港環境を形成するため,植栽,休憩所,親水施設等を整備します。
[平成16年度事業実績]  豊島漁港・田尻漁港において,緑地等を整備しました。
[平成17年度事業内容]  新規箇所の柿浦漁港を含んだ,豊島漁港・田尻漁港において整備します。
 
 漁港海岸環境整備事業[漁港漁場整備室]
 国土の保全と併せて,海岸部の総合的レクリエーション機能の整備をします。
[平成16年度事業実績]  豊島漁港において,人工海浜等を整備しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,豊島漁港において整備します。
 
 農地海岸環境整備事業[生産基盤室]
 農地海岸において,農地の保全を図るとともにレクリエーション活動の場とするため,植栽や人工海浜及び突堤を設置し環境整備を行います。
[平成16年度事業実績]  大野浦海岸において,階段式護岸を整備しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,大野浦海岸において整備します。
 
 河川環境整備事業[河川企画整備室]
 河川環境は地域の自然,生活,文化等の形成に大きな役割を果たしていることから,その環境整備においてはそれら多面的な価値を十分に活かし,長期的・広域的な視野に立った川づくりを推進します。
[平成16年度事業実績]  出口川・四川において親水性護岸等の河川整備を行いました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,親水性護岸等の河川整備を行います。
 
 自然再生事業(緑の砂防ゾーン創出)[砂防室]
 荒廃した渓流の渓流内部や渓流周辺において砂防設備としての樹林帯や遊砂地を設け,土砂の移動の抑制や流出土砂の捕捉を図るとともに,流域及び渓流周辺の自然環境を保全します。
[平成16年度事業実績]  向山支川・市場川において用地買収,八幡川において用地買収・管理用道路工事を行いました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,向山支川・市場川において,用地買収・管理用道路工事,八幡川において樹林帯・遊砂地の工事を行います。
 
 環境学習事業(水辺の楽校プロジェクト)[砂防室]
 子ども達の自然とのふれあいを通した遊びや生活体験等の機会が減少しているため,河川等のもつ様々な機能を活かし,河川等が身近な遊びの場,教育の場となるように,水辺の整備を推進します。
[平成16年度事業実績]  御衣尾川において,護岸工事を完了しました。
[平成17年度事業内容]  なし。
 
 砂防の歴史・文化拠点づくり[砂防室]
 地域の文化・歴史に配慮し,歴史的な遺産や砂防施設を積極的に保存するとともに,周辺の環境整備を行い,地域の人々に砂防に対する啓発活動を展開し「砂防の歴史・文化拠点づくり」を行います。
[平成16年度事業実績]  大通院谷川において護岸工事・管理用道路工事,堂々川において調査を行いました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,大通院谷川において護岸工事・管理用道路工事,堂々川において用地買収を行います。
堂々川 6番砂留と堂々公園
堂々川 6番砂留と堂々公園
 
 放置艇の規制[港湾管理室](再掲)
 広島県プレジャーボートの係留保管の適正化に関する条例,及び港湾法第37条第3項に基づき,禁止区域を順次指定して水域の適正な管理を行います。
[平成16年度事業実績]  放置艇の撤去指導や廃船処理の指導を行いました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,水域の適切な管理を行います。
 
 港湾環境整備事業[港湾企画整備室](再掲)
 港湾におけるアメニティを高め,人々が集い,賑わい,やすらぐ場とするため,緑地などの環境整備を行います。
[平成16年度事業実績]  干潟(県内3箇所),緑地(県内7港)を整備しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,干潟・緑地を整備します。
 
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