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生涯学習審議会答申本文

広島県生涯学習審議会

平成14年11月6日

生涯学習を支援するシステムの構築について

答申

1 はじめに

 21世紀を迎えた今日,国際化・情報化の進展や産業構造の変化,少子・高齢化の進行等,急激な社 会・経済の変化と社会の成熟化の進展に対応して,県民一人ひとりが心豊かに充実した生活を送っていくためには,生涯にわたって,自ら学び,自己を高め,さらに学んだ成果を社 会で生かす「生涯学習社会」の実現が求められている。
 このような状況の中で,今後の生涯学習の一層の推進を目指して,広島県生涯学習審議会は,平成 13年6月18日に広島県教育委員会教育長から次の事項について諮問を受けた。

(1)生涯学習を支援するシステムの構築について

(2)家庭の教育力を充実するための方策について

(3)広島県スポーツ振興計画の見直しについて

 このうち,(1)生涯学習を支援するシステムの構築については,生涯学習システム小委員会が付託を受け審議を進めることとした。
 審議に当たっては,次の二つの項目及び視点で検討することが示された。

1. 生涯学習を総合的に支援するシステムの構築
 〔審議の視点〕
  ・学習機会の提供から学習成果の活用までの総合的な支援

2. 生涯学習を支援する人づくり
  〔審議の視点〕
 ・ ボランティアリーダー等の人材養成
 ・ 完全学校週5日制の実施(平成14年度)への対応

上記諮問事項について審議を行い,平成13年11月9日には,「中間まとめ」を行った。
 本審議会は,この「中間まとめ」における,生涯学習を支援するシステムの構築に係る提言を基に,できるだけ具体的な内容となるようさらに審議を重ね,ここに答申をとりまとめた。
 今後,県教育委員会においては,生涯学習県ひろしまの実現に向けて,できるだけ早期に本審議会の提言を具体化されることを期待する。

2 生涯学習を支援するシステムの構築についての基本的な考え方

 これまで,教育や学習という活動は,専ら学校という場でのみ中心的に行われ,長い生涯の中での青少年期という限られた時期に完結すると一般的に捉えられてきた。
 また,生涯学習に対する人々の関心が高まっている今日においても,必要 な教育・学習活動は学校段階で終了し,成人してからの学習については周辺的・境界的な学習という評価しか与えられていない傾向がある。
 しかし,私たちが日常生活の中で課題を解決するために,ものを考えたり何かに取り組むとき,使用しているのは学校教育で習得した知識・技能・価値観のみではない。家庭・職場・地域社会など,学校以外の場での学習・体験を通して,私たちは多くの知識・技能・ものの考え方・感性などを身に付けている。生活・体験などあらゆる場面で,私たちは学習活動を行っているのである。
 一方,急速な情報技術の進展,国際化,地球環境の変化,少子・高齢化の進展など,変化の激しい時代に私たちは生きている。こうした中で,人生の初期に集中して学んだ知識・技能・価値観が生涯にわたって機能することは困難である。
 急激な社会変化や日常生活の中で生じてくる様々な課題に対処し,より豊かに生きていくために,私たちは生涯にわたり学習活動を継続していく必要がある。
 また,複雑化している社会の中で様々な課題が生まれ,価値観が多様化する中で人々の学習ニーズも多様化・高度化している。こうした状況の中,いつでも,どこでも,だれでも,学びたいときに学びたいことを学ぶことができ,その成果を生かすことができる基盤や仕組みをつくっていくこと-それが生涯学習を支援するシステムを構築するということである。
 近年,生涯学習への関心が高まるにつれて,学習活動によって獲得した成 果を個人で蓄積していくだけでなく,それを地域の課題解決,生活・文化・福祉の向上,コミュニティの活性化,まちづくり,他の学習者の支援などに役立てたり,自らの職業生活の可能性を広げることなどに生かしたいと考える人が多くなっている。また,市町村合併が進展していく中で,地域社会の一員としての意識や連帯感が希薄化するとともに,地域アイデンティティーの低下が懸念されており,地域社会をベースとする生涯学習への期待は,以前にもまして大きくなっている。
 さらに,これまでは社会の課題は行政が解決していくという考え方が主流であったが,複雑化し様々な課題を抱える現代社会において,例えば,ごみ処理,自然環境の保全や介護・福祉等,様々な現代的課題に見られるように,住民の参画なしには問題を解決していくことがむずかしく,社会自体が人々の学習成果を活用することを必要としている。また,学習活動の発展という意味においても,学習成果を生かした実践を通して学習を深め,さらに次の学習活動につなげていくという効果的な学習活動の循環が起こってくることが期待される。
 私たちは,学校以外の場所で,あるいは学校を卒業した後の人生の長い期 間において多くを学んでいるが,さきに述べたように,現在,評価は人生初期の極めて限られた期間の学習経験によって行われている。学校以外のところでの評価については,国が認定している検定資格や,公民館,カルチャーセンターなどが実施する講座などの修了証・認定証によるもの等が考えられる。しかし,それらの中でも社会的流通価値を持つものは少なく,成人してからの学習については,適切な評価が十分に行われていない状況にある。評価は成果の活用と密接な結びつきを持つが,評価が適切に行われなければ,学習した成果は社会的流通価値を持つことができない。
 ここでいう評価とは,学歴社会の弊害の中で偏った認識をされている人間 の選別や序列化,あるいは指導者が学習者をコントロールするなどを意味するものではない。評価はもともと学習を支援し,人間を生かすもので,学習者自身にとって生涯学習能力を開発し,自らの学習経験を点検・評価し,自己の学習の充実・発展への課題や可能性を再発見する契機になるとともに,学習成果を社会活動に生かすうえで学習活動と社会活動の接点に位置し,両者の適切な接続を支援・促進するという機能を持っている。
 学習活動とその成果を生かすことが有機的に結びつき,生涯学習社会が進 展していくためには,学習成果の適切な評価の研究開発に取り組み,これを社会に浸透させていく必要がある。
なお,学習者によっては,評価を望む場合と望まない場合があり,評価の在り方もこれらに配慮していくことが大切である。
 また,平成14年度からの完全学校週5日制の実施は,子どもたちにゆとり をもたらすとともに,学校の中に集中していた教育機能を地域や家庭に,より持たせるようにするとともに,学習が,生涯にわたり,あらゆる機会,場面,方法で行われる環境をつくる契機となる。人々が,いつでも,どこでも自由に学習機会を選択し,生涯を通じて学び続けることができるよう環境を整備していくことが重要である。
 生涯学習システムの構築は,家庭・学校・職場・自然等を含む地域社会のあらゆる場所,機会が,学習するための教室,キャンパスとなることを目指している。その実現には,各組織・機関の連携・協力が重要な鍵を握っており,何よりも,学習者の視点から,実効性・発展性のあるシステムを構築していくことが重要である。

3 広島県における生涯学習を支援する施策等の現状と課題

1 生涯学習を支援する施策

 (1)生涯学習需要の喚起

 県では,平成11年度の「全国生涯学習フェスティバル」をはじめ,「国民文化祭・ひろしま2000」,「全国健康福祉祭・2001ねんりんピック広島」,「全国スポーツ・レクリエーション祭・スポレク広島2002」の開催等により,生涯学習需要の喚起に努めてきている。
 今後も,「地域伝統芸能全国フェスティバル」など,全国規模の行事が計画されており,一般的な啓発,学習需要の掘り起こしは継続的に行われている。
 これらの事業が一過性に終わることなく,喚起された学習や活動への意欲を発展させる機会につなげる方策を考えたり,人々のネットワークづくりを支援していくことが必要である。

 (2)多様な学習機会の提供

 県内の市町村教育委員会及び公民館等社会教育施設が主催した講座等は,平成12年度は12,543事業あり,対象別では,成人一般対象のものが過半数を占め,青少年,高齢者対象の事業がこれに続いている(「平成13年度広島県生涯学習・社会教育行政基礎調査」広島県教育委員会)。
  講座の内容では,教養・趣味・家庭教育等に関するものが約6割であり,現代的な課題に取り組むものや職業に関する知識・技術の向上を図るなどの実際的・専門的な内容のものは約4割となっている。
 近年,社会人等の学習ニーズは多様化・高度化し,より高度で専門的な学習を求めるようになってきている。
そこで,県においては,専門的・体系的・継続的な学習機会を全県的に提供していくことを目指して,大学や民間等と連携し,多様な公開講 座が実施されている。県内にある31の大学, 15の短期大学, 97 の専修学校などの大学等高等教育機関においては,社会人特別選抜(平成13年度 352人)や社会人の科目等履修生の受入れ(平成13年度 268人),人文科学,産業・技術,文化・スポーツ,市民生活・国際関係の分野など多様な公開講座(平成13年度 約260講座,約1万1千人の社会人が受講)の開催などを積極的に進め,様々な学習ニーズをもった社会人に対して,高度な学習機会を提供している。
  また,「瀬戸内しまなみ大学」や「中国山地やまなみ大学」等,市町村や県域を越えて広域で,講座の総合化や情報提供に取り組むものも出てきている。
 しかし,県内各地で様々な機関が実施している講座等の学習機会が,体系化され,提供されるには至っていない。
 今後は,各地・各機関で実施されている様々な講座を体系化・総合化していくとともに,地域社会の課題解決に資する実際的な学習,社会参加活動に必要な力を養成する学習,職業能力開発に関する学習等の機会の充実に重点的に取り組み,さらに多様な学習機会を提供していく必要がある。
 また,大学等のキャンパス内における高度な学習機会は充実してきているが,こうした高度な学習機会を身近な公民館等で受講したいという県民ニーズは高く,今後一層の充実が望まれる。さらに,地理的条件に関わりなく,県内どこに住んでいても,継続的・発展的に学習するための情報や機会が得られるよう考慮する必要がある。

 (3)学習成果の活用

 ただ学ぶだけでなく,学んだ成果を実際に活用したいという希望を持つ学習者が増えてきている。
 学習成果を生かす場としては,個人のキャリア開発,様々なボランティア活動,地域社会の問題解決・活性化への参画などの場面が考えられるが,活動を希望する人は多くいても,実際に活動する場がまだ十分でないという現状がある。
 県では,生涯学習の成果を地域社会の発展やボランティア活動に生かすことを普及啓発するとともに,フォ-ラム自体を成果発表や他の人々の生涯学習活動を支援する場として「生涯学習実践交流フォ-ラム」を開催し,フォーラム開催後も,実践発表したグループが県内各地へ招かれ活動支援を行ったり,グループ間のネットワーク強化のため情報交換会を開催するなど,活動の広がりがみられる。
なお,このフォーラム自体の企画と運営も,約7割のボランティアが行っている。
  また,地域の人が学校教育を支援する「学校支援ボランティア」の制度をつくり人材登録を行っているが,「学校支援ボランティア」の活用状況をみると,小学校においては「総合的な学習の時間」,中学校では「部活動」での活用の割合が高くなっている。また,「日常的に協力してもらっている」学校が約3割にとどまり,「時々協力してもらっている」学校が5~6割といった状況にあり,さらに活用が図られることが望まれる。
 今後は,学習成果を生かした活動への普及・啓発を引き続き積極的に行うとともに,活動の場を学習支援の相談員・コーディネーターなどとして,また,講座等の企画,地域社会の活性化・まちづくり,キャリア開発など,幅広い分野・領域で開拓・拡充していくことが必要である。
 また,学習成果を提供しようとしている人とそれを求める人が適切に結びつくような実効性のある人材バンクの運営が必要である。人材バンクには,両者のマッチングが円滑・効果的に行われるようコーディネーターをおくとともに,インターネット等を活用して,広く容易にアクセスできるようきめ細かな配慮が必要である。

 (4)生涯学習の基礎づくり

 平成14年度から段階的に施行される新学習指導要領においては,子どもたちの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとし,「生きる力」とは,自分で課題を見つけ自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力と定義している。
 これは,生涯にわたって多様な学習資源を活用して自分で学び続ける能力―生涯学習能力―を身に付けるということと重なるもので,あらゆる基礎・基本を学ぶ学校教育の中で,生涯にわたり自ら学習していく態度・技能等を培っていくことが重要であり,その基礎づくりの第一段階は,高等学校等を卒業するまでに達成することが期待される。そのうえで生涯学習の基礎づくりとして,生涯学習能力の段階的,継続的な維持・改善を図る必要がある。

 (5)生涯学習支援体制の整備

 県民の生涯学習活動を支援するため,インターネットを利用した「生涯学習情報提供システムひろしままなびネット」や「県立総合体育館スポーツ情報センタースポーツデータベース」等により,学習情報の収集・提供・相談などの事業が行われている。
 すべての社会教育施設や文化・スポーツ施設は,人々の生涯学習活動を専門的に支援する施設として,学習機会の提供,相談,グループの育成,活動の場の提供などの機能の充実を図り,住民の文化・スポーツ・生涯学習活動への多様な参加が促進されるよう整備していくことが必要である。
  また,学習者の主体的な生涯学習活動の支援を考えるとき,図書館の果たす役割は極めて重要である。各図書館においては,それぞれの特色を持ちながら計画的な資料収集が行われているところであるが,個別化する学習需要に対応し,学習者へのサービス充実に引き続き努めるとともに,市町村域を越えた情報ネットワークをさらに広げ,資料等の提供,相互利用について推進していくことが必要である。

2 生涯学習を支援する人づくり

 (1)全国生涯学習フェスティバル等で生まれた人材の活用

 平成11年度に開催された全国生涯学習フェスティバルでは,117万人の参加があった。続いて開催された国民文化祭,全国健康福祉祭,全国スポーツ・レクリエーション祭にも多数の県民が参加し,生涯学習に対する県民の関心の高さを知ることができた。これらのイベントには,近年多くのボランティアが企画・運営・広報等についての重要な役割を担っている。様々なイベント・事業に参加し,出会った人たちが事業終了後も活動や交流を重ね,ネットワークを広げていくことは,生涯学習社会の進展において重要な意味を持つ。
また,市町村で継続して開催されているフェスティバルにおいては,毎年出展するグループ自らが,年間を通じて自主企画講座や人材養成を行うことや,地域をよりよいものにするため,大人と子どもたちの交流や,異年齢の子ども同士の交流など,定期的な情報交換の場が設けられ,ネットワークを拡充している動きもある。
  これらの人々が,交流の輪を広げ,お互いを刺激し合い,影響を与え合いながら新たな学習や活動の場を広げていくことができるよう,さらに交流の場をつくっていくことが必要である。

 (2)完全学校週5日制の実施への対応

 平成14年度から実施されている完全学校週5日制では,子どもたちが,多様な体験活動を通じて,生き生きと休日や放課後を過ごすことができるよう,学校・家庭・地域が一体となって取り組むことが求められている。
  子どもたちが,生活体験,社会体験,自然体験,文化・スポーツ活動などの様々な体験活動を行う際,地域の人材やこれまでの活動で開発されたノウハウなどの生涯学習資源を十分活用して,地域全体で子どもたちを見守り,育てていくことが必要である。
  また,子どもたちは育成する対象として捉えるだけでなく,子どもたち自身が主役・当事者として活動に参画し,地域社会の構成員として貢献できるよう配慮する必要がある。

4 広島県生涯学習キャンパス構想の実現に向けて

 【広島県生涯学習キャンパス構想】

  家庭・職場・地域社会など,県全域学ぶところすべてが教室であり,学習を支援する人すべてが指導者となって,最適の学習機会や情報提供・相談事業などを提供し,人々の学習を充実・向上する「学びの入り口」から,学習成果を生かした学習の発展や社会活動を促進する「学びの出口」までを,総合的に支援する仕組みを「広島県生涯学習キャンパス構想」という。

 1 学習圏(広域)の構築-体系的な学習機会を行政区域を越えて提供-

  「生涯学習支援センター」が総合的に支援
    ~身近なところで,広範囲に多様なレベルの学習サービスを利用することができるシステムをつくる~

身近な生活圏の学習から,アクセス容易な広域圏の学習まで,学習圏ごとに多様な学習機会を提供し,支援することが必要である。
"いつでも,どこでも,だれでも,学びたいことを学べる"を可能にする学習機会の体系化・総合化を図ることが必要である。
 この広域な学習圏を構築するため,学習圏域内の拠点的な機能として,新たに「生涯学習支援センター」の設置が必要である。

(1)学習圏で体系化・総合化し,各学習圏が機能分担

 (ア) 身近な学習圏(行政区域) 地域課題に関わる基礎的な学習機会を提供する。
 各行政区域が,学習者のニーズに対応した学習領域,内容,段階等の特色ある学習機会を提供する。
 (イ) ブロック学習圏(県内6ブロック程度) 居住行政区域で開催されていない領域,内容,段階等の学習機会を,ブロック内の学習圏が連携・ 協力して共同で提供する。(生涯学習支援センターがコーディネート)
なお,ブロック学習圏間のネットワークにより,アクセスが容易な範囲での学習機会の充実も可能とする。
 (ウ) 全県的広域学習圏 より高度で専門的な学習機会が,広域生活圏で提供される。

(2)多様で高度な学習機会の充実

 文化・教養・趣味的な学習に偏ることなく,地域課題の解決,生活に密着した内容,職業能力の開発などに資する学習機会を充実させることが必要である。
 生命,健康,人権,豊かな人間性,家庭,地域の連帯,まちづくり,高齢化,男女共同参画,情報化,国際化,環境・エネルギー問題などの現代的な課題に関する学習機会や,高度な学習機会が身近な生活圏で提供されることが必要である。

(3)マルチメディアで学習圏を越えて支援

 インターネット,衛星通信,ケーブルテレビなど,近年,急速に技術革新と普及が進んでいる情報媒体を活用することにより,時間的・空間的制約を超えて,学習機会を充実させることができる。
 県内には,CSデジタル放送等を利用して自宅で大学教育を受けることができる放送大学の機関が,広島市(学習センター)と福山市(サテライトスペース)にある。
 様々なマルチメディアや支援体制を活用し,在宅での学習や個人学習の可能性をさらに広げていく必要がある。
 特に,インターネットを活用して,講義録などの学習教材,個人の学習計画を管理するための学習ツール(各種のモデル様式)などを提供することにより,自己学習を支援し,生涯学習のバリアフリー化を図っていくことが必要である。
 インターネットによる情報提供システム"ひろしままなびネット"については,求められる有用な情報を必要とされるところに提供することを目指し,常に生きた情報を積極的に取材して提供するよう努めるとともに,人材情報については,人材とニーズがネット上で出会うことができるよう,双方向での登録・提供する仕組みが必要である。
 また,図書館の情報ネットワークを行政区域を越えてさらに広げ,学習者への情報提供サービスを,充実させる必要がある。
  さらに,生涯学習・文化・スポーツ関連施設の情報提供・相談・活動グループの育成・施設利用予約等について情報媒体を活用し,機能を充実していく必要がある。
 これらの学習支援方策によって,県内すべての地域において,一方で身近なところで豊かな学習機会が利用できると同時に,他方で高度な知的学習機会が地域社会ベースで利用できる学習基盤の整備に努める必要がある。そのうえで,地域社会における幅広い学習成果の適切な評価の累積と転換を図ることにより,大学や大学院の学習の利用も含め,それぞれの学習活動を継続的に発展できる仕組みを整備するとともに,これによって,切れ目のない,かつ,開かれた「学びの道」を各学習者が主体的に創造することを支援するシステムを全県的に構築する必要がある。

2 学習成果の評価・活用

生涯学習の評価は,多面的・多元的に行われなければならない。
 学習者が自由に自らの判断で学習成果の活用や社会参加の機会を求め,活動できるよう学習の成果を適切に評価し,学習活動のさらなる発展や,社会活動への参加を支援・促進するための評価方法を検討する必要がある。
(ポートフォリオによる学習と評価)
 
  ポートフォリオ(注1)は,学校歴も含めた様々な学習成果の評価,社会的活動,職歴,表彰歴などを蓄積した個人の情報ファイルであり,ポートフォリオをみれば,一人ひとりの学習の歩みや現在の到達状況,次に取り組むべき課題を明らかにできることから,近年,欧米における成人の学習成果の評価や,国内においても,総合的な学習の時間での評価など,学校教育の中で注目されるようになってきた。
 地域課題を学習する課題解決型の生涯学習では,ポートフォリオを活用して,自ら課題を見つけ,解決のための資料・情報を収集し,思考しながら,解決策や結論を導き出していく学習が有効である。学習のプロセスと成果がひとつのファイルにまとめられたポートフォリオにより,学習者は,自らの学習を自己評価できるとともに,その発表や学習履歴として活用することにより,他者評価やキャリアアップ,学習進路等の開拓に生かすことが可能となる。
 ポートフォリオを活用した課題解決型の講座やポートフォリオを活用した学習方法に関する研修を実施することにより,多元的な評価への社会的理解を深め,生涯学習の成果が広く流通価値を持つよう取組む必要がある。
なお,ポートフォリオを導入したモデル講座については,行政と高等教育機関,NPO等が協働して,例えば,社会人・大学生・高校生等を対象とし,ボランティア活動等地域社会に貢献する活動を取り入れたプログラムをポートフォリオにより大学の単位として認定するといったものが考えられる。
 社会人にとっては,大学の単位認定を可能とする高度な学習機会であり, 大学生等にとっては,ボランティア活動,サービスラーニングのキャンパス外での単位認定の機会が促進されることとなる。
  また,完全学校週5日制のもと,高校生にとっては,土・日曜日に地域社会で行った学修の成果が,高校の単位として認定される機会となる。
  このことは,現代的課題や身近な課題に対して,体験的・問題解決的に取 組み,それを総合的に評価し,次の活動につなげていくという「生きる力」を育むことにつながるものである。
(時間の単位換算による評価)
 
 行政,大学,団体,民間事業者等が実施する講座等において学習した実績を時間等により単位換算する評価方法も,その目的や内容によっては学習評価の評価方法として有効であり,かつ個人の生涯学習を奨励したり,その計画・管理において資するところがある。これが,「生涯学習単位」と呼ばれているものであり,その精巧化に向けて,検討する価値がある。

(注1)ポートフォリオ(portfolio)
 ポートフォリオは,もともと,持ち運びのできる(ポータブル(portable)な)二つ折りにした紙や本(フォリオ(folio)),すなわち紙ばさみや折りかばん,書類入れやファイルなどを意味するものであるが,学習の過程や成果に関する資料と情報を,目的を持って長期間収集するところから,学習活動を意味するようになった。
近年,欧米における成人の学習成果の評価において活用されるとともに,国内においても,小・中・高校などにおける総合的な学習の時間での評価や,大学におけるAO(Admissions Office)入試の導入など,学校教育の中で注目されるようになってきたものである。

(注2)サービスラーニング
 アメリカ等において,大学の正課教育の中にボランティア活動等の社会貢献活動を導入したもの。
 サービスラーニングとは,「社会の要請に対応した社会貢献活動に学生が実際に参加することを通じて,体験的に学習するとともに,社会に対する責任感等を養う教育方法」であり,大学教育と社会貢献活動との融合を目指したものとされている。

3 生涯学習をリードする人づくり

 ~すべては,人に始まり人に終わる~

 生涯学習を支援するシステムを機能させるためには,生涯学習をリードする指導者・ボランティアリーダーの推進力が不可欠である。このため,専 門的な指導者・リーダーを全県的に養成する必要がある。

(1)生涯学習の牽引力となる指導者・ボランティアリーダーの養成

 人々の生涯学習活動を支援し,生涯学習を推進する指導者・ボランティアリーダーは,専門的な研修を実施して養成し,専門家としての役割と位置付けを明確にすることが重要である。
さらに,住民の力によって地域社会の課題を解決し,地域を再生させるという視点から,指導者やリーダーが育成され,指導者ネットワークが地域に広がることが重要である。
なお,高齢化社会が進展していく中で,定年退職前後の人生・生活のスムーズな移行と,高齢者が職業経験や生活経験等を生かして,リーダーとして活躍することへの支援も大切である。
また,市町村合併が進展する中で,地域のアイデンティティーを醸成するため,公民館等で活動する地域リーダーの育成に努める必要がある。

(2)専門家の育成と活用

 (生涯学習専門職員の育成)
 
 高度で多様化した学習ニーズに対応した学習の企画立案や,連絡調整能力を備えた人材を育成するため,専門的な研修機会を充実させることが必要である。
 (すべての行政部局に生涯学習の視点を)
 
生涯学習は,あらゆる分野の行政課題を解決し,施策を実現させる基礎となることから,すべての行政施策に生涯学習の視点が加わるよう,あらゆる行政部局の職員に対して研修を実施するよう努める必要 がある。
 (講師に対する研修機会の充実) 学ぶところすべてがキャンパスとなる,生涯学習キャンパス構想の実現に向けて,講師に対する生涯学習に取り組む際の基本的な事項について,研修機会を提供することが必要である。

(3)完全学校週5日制への対応

 (子どもたちを育む活動が生涯学習のステージに)
 
 家庭,地域社会における豊富な生活体験,社会体験,自然体験,文化・スポーツ活動などの様々な体験活動を通じて,子どもたちの「生きる力」をはぐくむことをねらいとして,平成14年度から完全学校週5日制が実施されている。
 学校週5日制は,平成4年9月に月1回が導入され,平成7年度からは月2回の導入と段階的に実施されてきた。その間,行政はもちろんのこと,大学等の高等教育機関,民間(企業・事業者),団体,NPO等がそれぞれに子どもたちの体験活動の機会を提供してきたところであるが,平成14年度からの完全実施においては,学校週5日制の目的を達成するためには,体験活動の機会をさらに広げ,子どもたちが生き生きと休日や放課後を過ごすことができるよう,学校,家庭,地域が教育力を結集し,一体となって取り組む必要がある。
 この取り組みは,まさに生涯学習活動のステージとして,学びの場,実践の場となる。体験活動の企画・実施等に生涯学習に関わる人材が重要な役割を担い,これまで蓄積されたノウハウ等の生涯学習資源が生かされていくことが強く求められる。
 また,保護者や地域の大人が,これらの学習活動や実践活動に取り組むとき,子どもたちは,大人の"学ぶ"姿に触れ,地域全体が学習・文化・スポーツなどの活動を楽しむ雰囲気を感じ取りながら,向上心や理想をもって自らの人生を豊かにひらいていくことを学んでいく。このようにして,大人と子どもが相乗効果で,それぞれの"学び"を発展・充実させることが重要である。
(子どもを地域の一員として育成する)
 
 事業の計画においては,高校生・大学生などが,地域の子どもたちの育成に積極的に関わっていけるよう配慮する必要がある。生徒や子どもたち自身が企画段階から参画して事業を実施するなど,子どもた ちを,大人が提供する体験活動の受益者として位置付けるのではなく,子どもと大人が共同して企画し,共に参加し,楽しむ機会を提供するよう計画することが望まれる。
 また,子どもたちの社会体験,自然体験,文化・スポーツなどのプログラムを計画するとき,子どもたち自身が地域に貢献するという視点を持つことが必要である。子どもが主役として,主体的に活動に関わり,その中で体験を深めていくことが必要である。大人が教え,子どもが学ぶという構図だけでなく,共に体験し,切磋琢磨するプロセスにより,豊かな学習経験を持つことができる。
 県民総ぐるみで県内全域で子どもたちの多様な体験活動が展開されるよう,体制づくりに着手する必要がある。

4 具体的な方向性

~県民,大学等高等教育機関,市町村,団体,民間(企業・事業者),ボランティア,専門家,地域社会,学校教育,社会教育など―あらゆる組織,機関,人,活動がつながり,ひとつの大きな仕組みに~
(1)生涯学習キャンパス運営機構

 生涯学習システムを構築するために,関係機関,団体,行政,企業等が実効性のある連携・協力をしていく,生涯学習キャンパスの運営機構を組織することが必要である。

(2)県立生涯学習センターの役割の強化

 生涯学習の拠点施設として,県立生涯学習センターは,関係機関・団体との連携,学習情報の収集・提供,学習相談,学習者の社会参加活動の促進等について,コーディネート機能を発揮していくことが重要である。
 また,学習者のみならず,県民の学習を支援する人々をサポートしていく中心的機関として機能していくことが重要である。その中で,大学,民間(企業・事業者),NPO等と連携して,ポートフォリオを活用して,学習成果の多元的な評価・活用を可能とするなどの,先進的な学習プログラムの研究・開発や,指導者養成のためのプログラムの研究・開発に取り組むことが望まれる。
なお,ポートフォリオの導入に当たっては,大学・NPO等との協働により,社会人・大学生・高校生等を対象とした,ボランティア活動等地域社会に貢献する活動を取り入れたプログラムの開発・普及が有効である。

(3)生涯学習支援センターの設置

各教育事務所に,学習圏域内の拠点的な機能として,新たに生涯学習支援センターを設置し,圏域内の市町村間の相互連携が円滑に推進される,広域な学習圏の構築を実現させることが期待される。

(4)市町村の役割

(学習者(地域住民)への支援) 各自治体が,学習者(住民)のために,地域の学習資源を活用して,多様な学習機会を提供していく必要がある。
また,暮らしの中における自己学習や,相互学習(家族・近隣・職場などでの学習)及び学習に取組むライフスタイルの確立などへの支援が大変重要である。
(公民館を中心としたコミュニティーの形成等)
 公民館を,そこで活動している人たちの活動拠点として位置付けることや,地域づくりのための拠点として活用することにより,新しいコミュニティーの形成が促進されることを期待する。
 また,学習者のニーズに的確に対応し,高等教育機関等との連携・協力によって,公民館における高度な学習機会を一層充実する必要がある。

(5)大学等高等教育機関の生涯学習資源をさらに地域に提供

 大学等高等教育機関の教育機能や生涯学習資源(人材・ノウハウ・施設設備等)が,さらに地域の高度で専門的な生涯学習の推進のために開かれ,積極的に提供されることを強く期待する。
また,大学生等のボランティア活動,サービスラーニングの促進に当たっては,社会教育施設でのポートフォリオ導入のモデルプログラムによる単位認定等について,積極的に協力することが望まれる。

(6)企業等の参画

 生涯学習システム構築のパートナー,学習成果をキャリアアップ等に活用する場の提供者としての役割を期待する。
 また,試験や学業成績などによる一元的評価でなく,ポートフォリオの活用等による,多元的評価を採用等において活用されるよう期待する。
 さらに,職業能力を開発する分野の生涯学習プログラムを充実させるため,プログラム開発への協力・支援を期待する。

(7)民間事業者への期待

  民間の柔軟な発想による多様で創意にあふれる学習機会の提供,学習プログラムの開発,教材提供等の分野で,より一層,生涯学習の推進を支える力となることを期待する。

(8)NPO・ボランティアグループへの期待

学習成果を活用する場の提供や,生涯学習を支援する人づくりへの協力を期待する。
また,分野の異なるNPOとボランティアグループが互いに交流することによって生まれる,新たな活動の展開を期待する。

5 おわりに

 本審議会では,地域社会ベースの県民の生涯学習を支援するシステムの構築に向けて,一方では,生涯学習の県内全域への拡がりを可能とする支援の仕組みづくりと,他方では,身近な学習から高度な知的学習までの生涯学習の発展を支援する仕組みづくりに焦点化し,今後取組むべき重点的課題と,基本方針について取りまとめた。この生涯学習支援システムは,事柄の性質上,社会教育や学校などの教育機関はもとより,県,市町村,民間(企業・事業者),各種の地域団体,NPO,マスコミなどの関係機関全体の協力によってはじめて実現するものである。
しかし,全県域の多様な学習ニーズを前提とする,一貫性のある総合的な学習支援システムの整備なしには,本県全体をベースとする生涯学習社会実現への戦略的展望を開くことはできない。県及び市町村と関係機関の協働とパートナーシップによって,本構想が速やかに実現することを期待するものである。

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