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ひろしま保健環境だより:第3号 薬剤耐性菌を知っていますか?

印刷用ページを表示する掲載日2018年11月13日

薬剤耐性菌とは

 抗菌薬は細菌感染症の治療には欠かせません。しかし,新たな抗菌薬をいくら開発しても,細菌は新しい薬剤に対して次から次へと耐性化してしまい,抗菌薬の開発と薬剤耐性化はいたちごっこ状態です。
 1993年に耐性菌への最終兵器であったカルバペネム系抗菌薬に対しても耐性をもつカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が発見されました。CREの中には,ほとんどの抗菌薬に耐性を示すタイプもおり,このような細菌に感染した場合,もはや抗菌薬で感染症を治療する術はありません。このような大半の抗菌薬が効かない薬剤耐性菌が近年,世界で猛威を振るい,医療現場で危機感が高まっています。

耐性を獲得する仕組み

 細菌は様々な方法を駆使して抗菌薬曝露から生き延びようと試みます。
例えば,(1)酵素を産生して抗菌薬を不活化する(β-ラクタマーゼなど),(2)抗菌薬の作用点を変化させる,(3)細菌内に入ってきた薬を外に汲み出す(排出ポンプ)などの方法があります。

薬剤耐性菌
細菌が薬剤耐性を獲得する仕組み

薬剤耐性菌の種類

基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌

 ペニシリン,セフェム,カルバペネムなどのβ-ラクタム系抗菌薬を分解する酵素はβ-ラクタマーゼと呼ばれます。
 ESBLはβ-ラクタマーゼの一種で,ペニシリンを分解するβ-ラクタマーゼであるペニシリナーゼが変異し,より多くの抗菌薬を分解できるようになったものです。

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)

 CREは「悪夢の耐性菌」と呼ばれ,現在世界で最も恐れられている耐性菌のひとつです。
 CREの耐性機構のうち,カルバペネマーゼというあらゆるβ-ラクタム系抗菌薬を分解してしまう酵素をもつ細菌を「カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)」と呼びます。

多剤耐性アシネトバクター(MDRA)

 カルバペネム系,フルオロキノロン系,アミノグリコシド系抗菌薬に耐性を示すアシネトバクター属菌のことを言います。
 多剤耐性アシネトバクターは排除するのが難しく,しばしば院内感染で問題となっています。

保健環境センターで実施している薬剤耐性菌検査

 当センターでは,県内の医療機関等で検出された薬剤耐性菌(特にCRE)について,ディスク法によるスクリーニング検査や,PCR法による薬剤耐性遺伝子の検出を行っています。
 薬剤耐性遺伝子型を調べることで薬剤耐性の機序等を把握することができます。
 また,院内感染等の集団感染が疑われる場合はパルスフィールドゲル電気泳動(Pfge)法によるタイピング解析を行っています。

検査結果
薬剤耐性遺伝子型別とタイピング解析例

耐性菌が生まれる原因とその対策

  • 医療現場での抗菌薬の過剰投与・過剰処方 

抗菌薬の適正使用

  • 患者が自らの判断で抗菌薬の服用を途中でやめてしまう

適正服用の啓発

  • 医療機関における不十分な院内感染対策 

院内感染対策の充実

  • 新しい抗菌薬開発の遅れ 

抗菌薬の開発・迅速診断法の開発

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