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配置転換命令を争点とした裁判例-1/2|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

労働相談Q&A

配置転換命令を争点とした裁判例-1/2

日本テレビ放送網事件 (東京地判昭和51年7月23日)

アナウンサーの他業務配転を無効とした例
事案概要
テレビ会社のアナウンス課から審査室考査部への配転を命じられた女性アナウンサーが配転命令の効力停止の仮処分を申請した。
「申請人(労働者)が労働契約締結の際に被申請人(会社)に対しテレビ放送のアナウンス業務以外の業務にも従事してよい旨の明示または黙示の承諾を与えているなどの特段の事情の認められないかぎり,申請人は,被申請人との間に,テレビ放送のアナウンス業務のみに従事するという職種を限定した労働契約を締結したものであって,その後申請人が個別に承諾しないかぎり,被申請人会社におけるその余の業務に従事する義務を負わないものと解すべきである。そして,本件の全疎明資料を検案しても,申請人が労働契約締結の際に被申請人に対しテレビ放送のアナウンス業務以外の業務にも従事してよい旨の明示また黙示の承諾を与えているなどの特段の事情は認められない。そうすると,申請人がその後個別に承諾しないかぎり,被申請人は,申請人に対し,テレビ放送のアナウンス業務以外の業務に従事することを命ずる労働契約上の権利を有しないものといわなければならない。」
「なお,…被申請人会社の職員就業規則第38条は,従業員(職員)の転勤,転職等につき,「会社は業務に必要あるときは職員に転勤,転職または社外業務に出向を命ずることがある。出向の際の取り扱いは別に定める。」と規定していることを認めることができるけれども,この就業規則の規定が右に述べたような職種を限定した労働契約に優先して適用されその契約の効力を失わせると解すべき根拠は全く考えられないから,この規定の存在は右に述べた結論を左右するに足りるものではない。 」
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九州朝日放送事件 (最一小判平成10年9月10日)

アナウンサーの他業務配転を有効とした例
事案概要
24年間アナウンサーとして従事してきた者に対するアナウンサー業務以外への配転について,本件労働契約において,アナウンサー業務以外の職種には一切就かせないという趣旨の職種限定の合意が成立していたとは認められないとした原審の判断が争われた。
「原審認定の事実関係の下では,その判断は正当として是認することができる。」
原審(福岡高裁判決 平成8年7月30日)
「控訴人(労働者)は,控訴人がアナウンサーとしての業務に従事する労働契約上の地位にあることの確認を求めるものであるところ,控訴人に右のような地位があるというためには,本件労働契約においてアナウンサーとしての業務以外の職種には一切就かせないという趣旨の職種の限定が合意されることを要し,単に長年アナウンサーとしての業務に就いていたのみでは足りない…。」
「アナウンサーとしての業務が特殊技能を要するからといって,直ちに,本件労働契約において,アナウンサーとしての業務以外の職種には一切就かせないという趣旨の職種限定の合意が成立したものと認めることはできず,控訴人については,本件労働契約上,被控訴人の業務運営上必要がある場合には,その必要に応じ,個別的同意なしに職種の変更を命令する権限が,被控訴人に留保されているものと解するのが相当である。」
「…本件労働契約が締結された当時,右契約上,控訴人がアナウンサーとしての業務に従事する地位にあったものといえないことは明らかである。」
「さらに,控訴人は長年にわたってアナウンス業務に従事してはいたが,そうであるからといって,当然に,アナウンサーとしての業務に従事する労働契約上の地位が創設されるわけではなく,本件労働契約が職種限定の趣旨に変更されて初めて右のような地位を取得することになるものと解されるところ,控訴人については,本件労働契約の締結後に,右のような職種限定の合意が成立したことを認めるに足りる直接の証拠はないし,前認定の事実経過からいっても右合意の成立は考えられない。」
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