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令和7年広島県議会12月定例会(令和7年12月10日)

印刷用ページを表示する掲載日2025年12月10日

知事説明要旨

はじめに、今月8日に発生した青森県東方沖を震源とする地震について申し上げます。

この度の地震により、青森県、北海道、岩手県において被害が発生しており、被災された皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

地震はいつどこで発生するか分かりません。

県といたしましても、市町をはじめとする関係者と連携し、地震・防災対策の強化を図ってまいります。

また、県民の皆様には、住宅の耐震化や家具の固定など、日頃からの備えや、津波からの迅速な避難行動を心がけていただきますようお願い申し上げます。

それでは、12月定例県議会の開会に当たり、提出議案の概要を御説明申し上げたいと思いますが、今回が知事就任後初めての議会でございますので、最初に、私の県政に対する基本姿勢と県政運営の基本的考え方について申し述べたいと存じます。

1.県政に対する基本姿勢

広島県は、原子爆弾による破壊を経験し、その廃墟から力強く復興してきた地です。

平地が少ない中でも田畑が作られ、農耕が行われ、農業のための牛が育てられ、瀬戸内海の物流により文化的にも栄え、様々な産業が興り、今につながっております。

本県には、たくさんの宝がございます。

瀬戸内海の島々が織りなす多島美、田畑が広がる豊かな原風景。厳島神社、原爆ドームの2つの世界遺産。かきやレモン、日本酒、お好み焼きなどの豊かな食文化。地域に根差したスポーツチームや文化芸術。そしてグローバルに展開する自動車関連産業を始めとしたものづくり産業。

これらの宝は、本県の誇りであり、未来を拓く大きな力でございます。

一方で、想定を上回るペースで進む人口減少、とりわけ若者の転出超過や長引く物価高、緊迫した国際情勢などの厳しい社会経済情勢の中、多くの課題に直面しております。

私は、本県が直面する課題、そして県民の皆様のお声に真摯に向き合い、新しい時代の要請に応え、県民の皆様が広島県に誇りを持ち続けることができるよう、挑戦をしてまいります。

2.県政運営の基本的考え方

こうした基本姿勢の下で、私が目指す、県政運営の基本的考え方について御説明いたします。

基本的な施策の方向性

まず、私が挑戦したい基本的な施策の方向性でございます。

本県が持つ多彩な宝や強みを磨き、魅力を高め、県内外の人々の交流により創造性と活力を生み出し、更に多くの人を惹きつけ、経済も成長していく、こうした好循環により、あらゆる分野で本県が発展していくことを目指します。

また、その土台として、県民の皆様の安全・安心な暮らしを確保してまいります。

人を惹きつける地域づくり

具体的には、まず、人を惹きつける地域づくりを進めます。

現在、人口減少は避けられないとの認識の下、社会減と自然減を抑制する取組を進めております。

構造的な問題も含め、多くの要因が影響していることから、さらに、様々な立場のご意見を伺いながら、新しい対策も含め、幅広く検討してまいります。

<社会減対策>

社会減対策につきましては、若者や女性が住みたいと思う地域づくりが必要であり、第一に、経済が元気であることが重要でございます。

県内企業の魅力の発信、企業の誘致、先端・成長産業の育成と集積、職場や働き方の改革を進めます。

特に、これまで女性が少なかった業種を中心に、環境整備や男女の給与格差の解消など、若者や女性に選ばれる職場づくりを進めてまいりたいと考えております。

また、広島県でチャレンジができ、挑戦が形になっていくという希望が持てることが重要でございます。

これまでの多くの方々の努力があり、今、職場でも家庭においても、固定的な性別役割分担意識は徐々に変わってきていると思います。

性別に関わらず社会で活躍する姿の発信にも取り組んでまいります。

さらに、人々を惹きつけるものとして、音楽やアートといった文化芸術や祭り、スポーツなどの振興・発信にも取り組んでまいります。

<自然減対策>

自然減への対策として、子供を産み育てたいと望む方が、その希望を実現しやすい社会を目指すことに加え、多くの方々が子供を持ちたいと思い、安心して子供を持つことができる社会にしていきたいと考えます。

子育て世代が、日々の暮らしや子育てが楽しいと感じられる社会環境づくりを進めてまいります。

<教育>

また、住みたいと思える地域づくりには、教育の充実も重要でございます。

私は、様々な能力を持つ子供たちが、自分がどのような仕事で社会に貢献できるのかを探究し、自ら成長していくことを後押しすることこそが、教育の役割だと考えております。

一人一人の能力を見出し育て、生きる力を養うために、広島県のものづくりなどの産業、県土や県民の暮らしと安全を支える仕事に触れながら基礎的な力を培う、「広島ならではのキャリア教育」に取り組んでまいります。

<関係人口・交流人口の拡大>

加えて、地域の担い手不足、イノベーションを生み出す多彩な人材の確保といった課題の解決に向けて、関係人口・交流人口の拡大に取り組んでまいります。

関係人口から、県内に定住する方々が現れるよう、環境整備をしていくことも必要でございます。

市町や関係団体等と連携し、中山間地域において地域活動を行う人材の確保や、大都市圏のプロフェッショナル人材と県内中小企業等とのマッチング、スタートアップ人材の交流などの取組を進めます。また、転出した方々に広島での活躍の場を紹介するなど、広島県と関わる方を増やす取組を進めます。

(交流人口(観光))

また、観光客を始めとする交流人口の拡大は、観光消費額という直接的な効果があるほか、本県の誇る自然や食、歴史、文化を観光資源として磨いていくことで、地域の価値を高めることにもつながります。

産業の歴史、音楽・アートなどの文化芸術、食文化を磨き、滞在を楽しめるようにするなど、そこでしか得られない価値を提供できる地域づくりを進めてまいります。

また、これらの観光プロダクトをテーマ・ストーリーで結びつけ、ターゲットに応じた効果的な情報発信により、県内各地への周遊を促進してまいります。

県民の安全・安心な暮らしの基盤づくり

人を惹きつける地域づくりのためには、その土台として、県民の皆様の安全・安心な暮らしと豊かな生活の基盤を整えることが不可欠でございます。

気候変動や災害の激甚化・頻発化、既存インフラの老朽化の進行、人口減少に伴う担い手不足など、暮らしの基盤に関わる課題にしっかりと対応してまいります。

<農林水産業の生産力の強化>

中でも、県民の食生活を支えるだけでなく、地域の維持、県土の保全、さらには観光業の振興という観点からも重要な役割を果たしている農林水産業については、企業経営体の育成に加え、集落営農や兼業的な農業においても農地を集約し、基盤整備や作付け品種の工夫などにより生産性を高め、新規就農者に技術指導を行う地域の体制づくりを進めるとともに、気候変動に対応した技術開発にも注力してまいります。

畜産につきましては、広島和牛や特徴ある乳製品の安定的な供給が可能となるよう、生産体制の強化、自給飼料の拡大などにより、収益性の高い経営体の育成に取り組んでまいります。

水産につきましては、品質の高い水産物の流通を拡大し、瀬戸内さかなのブランドを強化するとともに、海底耕うんによる底質改善、藻場造成、栄養塩類の流入などによる水産資源の維持・増大を図り、収益性を高めてまいります。

林業につきましては、所有者が不明な森林への対応も含め、林業経営適地の集約化を進め、持続的な経営管理体制により、県産材が安定的に生産されるよう、取り組んでまいります。

<防災・減災・危機管理>

また、防災・減災対策や危機管理の強化を着実に進めます。

具体的には、県土の強靱化に向けた計画的な防災インフラの整備、施設の老朽化に対応した維持管理、建設業の担い手確保に取り組みます。

加えて、マイ・タイムラインの普及、自主防災組織による活動の促進、大規模災害に備えた訓練の実施など、ハード・ソフト両面での対策の強化を進めてまいります。

<医療・介護>

さらに、人口減少と高齢化を見据えた医療・介護や福祉の充実も、県民の皆様の生活を支えるためには欠かせません。

全ての県民が、質の高い医療等のサービスを受け、地域で暮らし続けることができるよう、高度医療・人材育成拠点構想について一つ一つの課題に対し、検討を進めながら、持続可能な体制づくりを進めてまいります。

<治安・暮らしの安全>

あわせて、県民の日々の安全な生活環境を維持するため、インターネットの安全利用の推進、詐欺被害防止対策の推進など、県民、事業者、行政等が協力して、「安全・安心なまちづくり」に取り組んでまいります。

被爆を経験した広島県の使命

広島には、被爆と、そこからの復興の歴史を世界に発信し、核兵器のない平和な世界の実現のために取り組む使命がございます。

本県では、これまで、「国際平和拠点ひろしま構想」を掲げ、広島市や国、関係団体等と連携しながら、核兵器のない平和な世界の実現を目指し、取組を進めてきております。

私は、これを継承し、発展させてまいります。

今月1日から活動を開始した「一般社団法人 へいわ創造機構ひろしま」とともに、核抑止に頼らない安全保障政策づくりなど、核廃絶に向けた具体的道筋やその行動についての研究、国際社会への連携の働きかけなどを、これまでに得られた様々なネットワークを活用して進めてまいります。

「安心▷ 誇り▷ 挑戦 ひろしまビジョン」の見直し

現在、県では、10年間の県政のビジョンを示すものとして令和2年に策定した、「安心▷ 誇り▷ 挑戦 ひろしまビジョン」について、令和6年7月より、これまでの取組と成果、社会情勢の変化などを踏まえ、改定を進めてきております。

私といたしましては、これまでの1年半にわたる議論を十分尊重した上で、この度の選挙を通じて県民の皆様から頂いたお声と、今説明いたしました、私の目指す、基本的な政策の考え方との関係を確認しながら、改定を進めてまいります。

行政運営の考え方

次に、行政運営の考え方を御説明いたします。

直面する重要課題への対応

現在直面している重要な課題には、多くの分野が関係し、総合的に対策を打っていく必要があるものも多く、解決が難しく、時間がかかるものの、後回しにはできない課題にしっかりと取り組んでいくために、重要かつ広がりのある政策課題について部局の分担を超えた検討ができる組織体制を、早急に作ってまいります。

組織文化の継承と発展

また、新しい施策を打ち出していくためにも、これまでも県政が担っている業務、継続すべき業務については、過去の経緯を含めて情報、知識、知恵を蓄積し、その専門性を高め、将来を見据えて、着実に進めていく必要がございます。

これまで蓄積した、人材育成の仕組みの良いところは認識し、改善していきながら、これからの人材確保にも生かしてまいります。

具体的な施策については、成果を確認し、見極めながら、より効果的な施策へと常に見直してまいります。

行政運営に当たっては、AIを始めとするデジタル技術を積極的に取り入れるとともに、県職員一人一人がその能力を最大限発揮し、成長していくことにより、県庁組織全体のパフォーマンスを高めていくことが重要だと考えております。

情報収集力を高めるとともに、自由闊達な議論ができ、成長を促していけるよう、風通しの良い組織を目指して、業務プロセスの改善や、マネジメント力の向上などに取り組んでまいります。

また、コンプライアンスを重視し、県民の皆様の信頼に応える、公平・公正で透明性のある県政を進めてまいります。

市町との関係

また、県政で目指す政策目標を達成していくためには、市町との連携が欠かせません。

一方、人口減少の中で、今後県も市町も、人材確保が難しくなってくることが想定され、既にその傾向は現れてきています。

現在、デジタル人材について、DXShip(デジシップ)ひろしまの取組により、県・市町共同で採用し、市町に配属する取組を実施しております。

こうした専門人材を中心とした人材交流を更に進めるとともに、県と市町で課題を共有し、それぞれの市町の状況に応じた柔軟な役割分担によって解決していくなど、市町との連携を強化してまいります。

議会との関係

県政の推進に当たっては、執行部とともに県政の両輪となる県議会とも一丸となって進めさせていただきたいと考えております。県民の暮らし、命、安全を守り、県の発展を目指すという点では、県議会も県執行部も目標は同じです。知事は行政の執行、県議会は行政執行のチェック及び議決を通じた意思決定を行うという役割の下で、相互に信頼関係を構築し、互いに切磋琢磨しつつ、協力して公平、公正で透明な広島県政を作ってまいりたいと考えております。

以上、県政に対する基本姿勢と県政運営の基本的考え方を御説明させていただきました。

私は、これまでの行政経験や民間経験、社会に関して考えを深めてきたことを、広島県政に最大限に生かし、県政の先頭に立って、全力を尽くしてまいる所存でございます。

人々を惹きつける広島県、次の世代が生まれ育ち、挑戦し、心身ともに豊かな暮らしができる広島県を、県議会の皆様、県民の皆様や本県に関わる皆様と一緒に、築いてまいります。

3.提出議案の概要

当面する県政の諸課題への対応

それでは、今回提出いたしました議案についての概要を御説明いたします。

まず、議案につながるものとして、当面する県政の諸課題への対応について、御説明いたします。

最初に、かきのへい死対策について でございます。

広島を代表する産品であるかきのへい死につきましては、かき養殖業の継続が危ぶまれる深刻な状況にあり、このことは生産にとどまらず、地域経済にも影響する事態であると重く認識しております。

このため、今月1日に庁内関係部署で構成する「かきへい死対策に向けた庁内連絡会議」を立ち上げ、幅広く情報収集と対策の検討を進める体制を構築し、4日には、かき養殖の現地に伺い、生産現場の状況を聞かせていただいたところでございます。

被害状況を調査しながら、必要な対策を遅れることなく実施してまいります。

具体的な支援策といたしましては、まずは、経営に支障をきたす生産者に対し、経営を維持するために必要な運転資金を無利子で融通することにより、資金繰りなどの不安の解消を図ってまいります。

また、へい死の実態を把握するため、現地における漁場環境や養殖工程などの詳細な調査を実施し、有識者からの意見を踏まえて原因を分析するとともに、海水温上昇などの環境変化に対応した新たな養殖技術の確立につなげていくことができるよう、必要な経費を12月補正予算に計上しております。

これからも、全国の研究者や関係者と連携し、広島県にとって重要なかき産業が継続できるよう、対応してまいります。

次に、物価高や米国関税措置への対応について でございます。

本県を取り巻く経済情勢は、半導体需要の押上げなどにより電気機械製造業の生産が堅調に推移しており、造船業の持ち直しや、インバウンド需要の好調さから、宿泊・観光業の好調が続くなど、県内景気は緩やかな回復基調にございます。

一方、エネルギー価格や物価の高騰、人手不足を起因とした労働環境の変化や、各国の通商政策等の影響を受けた経済動向の不確実性が、県民生活や事業活動に、幅広い影響を及ぼすことが懸念されます。

特に、燃料や電力などの基礎的コストの上昇は、家計負担を増大させるとともに、中小企業や地域産業の収益構造に直接的な圧力を与えています。

また、食料品や生活必需品の価格上昇は、教育や福祉の現場にも波及し、社会的な安定性を揺るがす要因となっています。

今後、県経済が持続的な成長をするためには、労働者の処遇改善や企業の競争力強化が不可欠であり、経済環境の変化に対応した、新たな対策も求められています。

こうした状況の変化を踏まえ、県といたしましては、事業者の経営安定や産業の発展を後押しするための取組を展開していく必要がございます。

このため、先般、国において策定された「『強い経済』を実現する総合経済対策」を踏まえ、物価高や米国関税措置への対応を着実に推進するために必要な経費を12月補正予算に計上しております。

具体的には、物価高による影響の緩和といたしまして、国のエネルギー価格対策に歩調を合わせ、家庭業務用LPガスや特別高圧電気料金の高騰に対する支援を実施してまいります。

また、食材価格が高騰する中におきましても、これまでどおり栄養バランスや量を保った学校給食等を実施するため、県立・私立学校等に対し、給食等における米飯の価格上昇分への支援を行うことにより、保護者の負担軽減を図ってまいります。

このほか、物価高等の影響を受けている中小企業等に対して、持続的に賃上げを実施できる環境を整備するため、生産性向上に資する設備投資等に要する経費を支援してまいります。

さらに、製造業者等に対し、長引く物価高や米国関税措置による影響下においても、競争優位性獲得のための投資を減退させることがないよう、高付加価値な製品開発やコスト低減に向けた生産技術開発等に対する支援を行ってまいります。

この他にも、本県は、芸備線再構築協議会における議論、高度医療・人材育成拠点の整備、不適正処理事案・公益通報事案に係る対応など、様々な課題に直面しております。

課題に対しては、一つ一つの検討事項に真摯に取り組み、関係者とも連携しながら、解決に向けて迅速かつ丁寧に進めてまいります。

提出議案の概要

次に、提出議案の概要を御説明いたします。

まず、一般会計補正予算案につきましては、9月補正予算編成後の状況変化などを踏まえ、必要性が認められる事業に適切に対応することを基本として、編成しております。

具体的な補正の内容でございますが、かきのへい死対策、物価高や米国関税措置への対応、県土の強靱化などに、時機を逃さず対応するための経費について、予算を計上しております。

また、職員の給与について、去る9月30日に行われました、人事委員会の勧告の趣旨を尊重し、給料月額や期末・勤勉手当などを引き上げる措置を講ずることとしております。

これらの結果、一般会計の歳入歳出補正予算額は335億1,043万円の増額となり、本年度予算の累計額は、1兆1,335億591万円となります。

次に、予算以外の議案といたしましては、「職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例」などの条例案6件、人事案件といたしまして、「広島県収用委員会委員の任命の同意について」の1件、その他の議案では、「工事請負契約の締結について」など25件を提出しております。

また、報告事項として、専決処分報告を提出しております。

どうぞ、慎重に御審議いただき、適切な御議決をいただきますよう、よろしくお願いいたします。

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