6月定例県議会の開会に当たり、ただいま提出いたしました議案の説明に先立ちまして、本県を取り巻く情勢及び本年度主要施策の取組状況について、御報告いたします。
はじめに、先週19日、20日の2日間、天皇皇后両陛下におかれましては、「地方事情御視察」のため、本県に訪問いただきました。
両陛下の御来県は、御代替わり後初めてとなり、また、両陛下おそろいでの御来県は25年ぶりでございました。
両陛下には、原爆死没者慰霊碑に御供花いただいた後、被爆遺構展示館、平和記念資料館、広島市豪雨災害伝承館等を熱心に御視察いただき、被爆者の方々や被災された方々などと親しく御懇談いただきました。
被爆80年を迎え、平成26年8月豪雨から10年が経過した節目の年に御来県を賜り、原爆死没者及び被爆者の方々、災害により犠牲となられました方々及び被災者の方々にお心を寄せていただいたことは大変ありがたく、また、御来訪は、私ども広島県民の大きな励ましと喜びとなり、心より感謝を申し上げます。
この度の御来県は、核兵器のない平和な世界の実現に向けた取組や、防災・減災対策に取り組む本県にとりまして、大変意義深いものであり、引き続き施策の実現に向けて取り組んでまいります。
次に、本県を取り巻く情勢と認識について でございます。
本県経済につきましては、引き続き、電気機械製造業での生産が好調であるほか、本年3月発表の日銀短観によりますと、県内景気は緩やかな回復基調にございますが、3%台程度の消費者物価上昇が続き、個人の消費意欲減退が懸念されるところでございます。
さらに、各国の通商政策等の影響を受けた海外経済の動向や、それに伴う企業の賃金・価格設定行動などが県経済に与える影響について、不確実性が高まっており、引き続き動向を十分注視していく必要があると考えております。
なかでも、現在、米国新政権の発足に伴い、日本からの輸入品に10%の相互関税に加え、自動車等には25%、また、鉄鋼・アルミニウムには50%の追加関税措置が課せられております。
この措置は、県内企業や県経済に大きな影響を及ぼす可能性があり、特に本県の基幹産業である自動車産業は米国への輸出が多く、サプライヤー企業への影響も懸念されるところでございます。
県といたしましては、全国知事会等と連携し、米国に対して自動車等への追加関税及び相互関税の見直しを粘り強く求めるよう、国に要請するとともに、関税措置の影響を強く受ける県内事業者への支援を機動的に行えるよう、私自ら石破内閣総理大臣に対して、積極的な財政措置の検討を要望したところでございます。
また、現在、関係機関の情報連絡会議等を通じた状況把握に努めながら、相談窓口の設置、県制度融資による資金繰り支援などの取組を進めており、今後とも、米国政府の動向を注視し、関係機関と連携して迅速かつ適切に対応してまいります。
また、ロシアによるウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナの武力闘争に加え、この度、米軍がイランの核施設を攻撃し、その報復として、イランが国際的な海上交通の要衝であるホルムズ海峡を封鎖する可能性が高まっているとの報道が多数あったところでございます。これが現実のものとなると、日本にとっても大変な影響が生じることとなるため、今後とも引き続き状況を注視していく必要があると考えております。
次に、令和7年度主要施策の取組状況について御説明いたします。
まず、物価高への対応について でございます。
先般、国において、「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」の一環として足元の物価高にも対応する観点から、夏場の電気・ガス料金の負担軽減支援の実施が決定されたところでございます。
本県におきましても、国の対策に歩調を合わせ、家庭業務用LPガスや特別高圧電力を使用されている、一般家庭及び中小企業等に対し、料金高騰の負担を軽減するための支援に要する経費を6月補正予算に計上しております。
次に、人口減少対策について でございます。
本県では、今後予想される人口減少は避けられないとの認識の下、「社会動態の均衡」と「県民の希望出生率の実現」による人口減少の抑制を目指し、取組を進めております。
「社会動態の均衡」につきましては、昨年度実施した若年層の社会減少要因調査分析の結果を踏まえ、「県内企業や大学等の認知向上の後押し」、「魅力的な産業の集積や職場環境の整備の支援」、「地域の魅力及び暮らしやすさの向上」を柱とした若者減少対策に取り組んでいくこととしております。
さらに、これらの対策の効果を最大限まで高めるため、若者の広島に対するポジティブなイメージの浸透に向けたブランド戦略の策定や具体的なプロジェクトの実施について、現在、専門家の御意見を伺いながら、準備を進めているところでございます。
また、若者のUIターンなど、広島への定着・回帰に向けて、県と市町で実効性の高い施策の創出を目指す「県・市町一体型プロジェクト」につきましても、現在、市町と議論を重ねているところでございます。
「県民の希望出生率の実現」に関しましては、令和7年3月に、少子化対策や青年期の若者への支援の観点を新たに盛り込んだ、子供・子育て施策に係る新たな分野別計画である「ひろしま子供の未来みんなで応援プラン」を策定いたしました。
この計画では、「すべての子供・若者が、社会の宝として、成育環境の違いに関わらず、健やかに夢を育むことができ、子供を持ちたいと思う人が安心して子供を持ち、育てられる社会」の実現を目指しており、社会全体で子供の健やかな育ちと子育てを支える意識の共有を図りながら、各種の子供・子育て施策を総合的に推進してまいります。
また、本県では、共働き家庭が7割近くとなっている一方で、家庭内では依然として、女性に家事・育児の負担が偏っている傾向にあることから、男性の家庭内での活躍を促進するとともに、固定的役割分担意識を解消することが、子供を持ちたいという希望の実現や、女性の社会生活における更なる活躍、さらには、経済の活性化や男女共同参画にもつながるものと考えております。
このため、男性の家事・育児参画に係る意識変容を促し、具体的な行動を広げるためのプロモーション活動に引き続き取り組むとともに、企業など多様な主体を巻き込みながら、社会全体で、その意義や理念を共有し、それぞれの立場から、家庭内での男性活躍を促進する機運醸成や環境整備を進めることができるよう、県民や議会の皆様等から丁寧に御意見をお伺いしながら、引き続き、条例の検討を進めてまいります。
次に、人手不足対策について でございます。
生産年齢人口の減少が見込まれる中におきましても、本県の持続的な経済成長や県民の安全・安心な暮らしの確保に向け、各種事業に取り組んでおります。
具体的には、トラック運送業界において、運送事業者を対象に、賃上げ原資となる適正運賃の確保や、物流効率化などを目的としたDXを後押しする支援金を創設し、8月から申請受付を開始いたします。
また、業界横断的な取組では、外国人材の円滑な受入れや定着に向け、育成就労制度を見据え、外国人材への日本語学習等の支援に取り組む企業に対し、学習体制の構築を後押しするほか、円滑な住宅確保に向けた支援の検討にも着手しているところでございます。
引き続き、昨年度とりまとめた人手不足対策に係る事業を着実に推進し、各業界における人手不足の解消を目指してまいります。
次に、AI活用をリードする取組について でございます。
生成AIなどのデジタル技術が急激に進展し社会環境が大きく変化する中、本県では、「『AIで未来を切り開く』ひろしま宣言」の下、イノベーション先進県としてAI活用をリードし、地域課題の解決と新たな価値の創出に向けて挑戦しております。
具体的には、「広島AIラボ」につきまして、引き続き、企業や大学、研究室へのAI技術の最新動向調査などを実施するとともに、AIを活用して、多様な声を視覚的にわかりやすくまとめる技術の導入可能性の検討など、社会課題の解決につながる活用方法を探求してまいります。
昨年度から開始した「ひろしまAI部」におきましては、企業のサポートを受けながらAI活用の可能性を探求してきた高校生が社会課題等の解決をテーマにアイデアを競い合う「HIROSHIMA AI PITCH」を開催し、約200名が参加いたしました。
AI部の活動をきっかけに、県内大学の情報系学部への進学を決めるなど、高校生たちのデジタル分野への進路決定にもつながっており、この6月からは、AI研究の第一人者である東京大学松尾教授の研究室が監修した新しいカリキュラムにより、38校が、AIの活用可能性の探求活動を開始したところでございます。
「ひろしまAIサンドボックス」につきましては、今月20件を採択し、県内企業とAI開発者の協業によるソリューション開発や実証の支援を開始しており、今後は、取組状況を県内外に発信し、AIを活用して新ビジネスに挑戦しようとする企業・人材の集積を目指してまいります。
また、広島への移住を検討されている方などに対して、生成AIを活用し、住まいや移住支援制度、仕事といった情報を、個別にウェブサイトを検索することなく複数のサイトから集め、ワンストップで提供する「ひろしま移住AIナビ」を4月にリリースいたしました。
今後は、利用状況や利用者アンケートの結果などを踏まえ、広島への移住に関心が高まるよう、情報を充実させてまいります。
次に、観光の更なる振興について でございます。
本県の多彩な食資産を多様な主体と磨き、その魅力を発信する「おいしい!広島」プロジェクトにつきましては、「おしい!」ではなく、「おいしい!」イメージを一気に引き上げるため、6月17日に都内で記者発表会を開催し、広島県出身で「Ooochie Koochie」としても活躍中の、奥田民生さんと吉川晃司さんを応援団長に任命し、プロモーションをスタートいたしました。
このプロモーションをきっかけに広島を訪れた皆様を、魅力ある広島の食に誘導し、「広島県は美味しさの宝庫である」と実感いただくとともに、食に関わる様々なステークホルダーの方々と県内の更なる盛り上がりを創出してまいります。
先月開催された第20回世界バラ会議福山大会2025では、700人を超える参加があり、ばら祭などの関連行事を含め、国内外から約50万人以上の方が福山を訪れました。
県といたしましても、大会と連携し、プログラムの一つである、大会参加者を対象とした県内観光地を巡る「デイツアー」での昼食において、ひろしま料理人コンクール優秀者が考案したお弁当を提供するなど、「おいしい!広島」プロジェクトの取組などを実施し、訪れた方々に福山をはじめとする本県の多彩な魅力に触れていただくことができたものと考えております。
広島空港の国際線につきましては、インバウンド需要の高まりや、中国・日本の両国における観光客向けのビザの発給要件緩和等により、利用状況が好調であることを受け、上海線が7月1日から3往復増便され、週7往復とデイリー化される予定でございます。
また、7月から10月にかけて、広島と韓国・清州を結ぶ直行便が期間限定で就航されることとなっております。
これにより、本県とのビジネスや観光など幅広い分野での相互交流が一層活発になっていくものと期待しております。
こうした機会を捉え、旅行者の満足度を高める観光施策に取り組むことにより、更なる訪日観光客の増加にもつなげていくとともに、引き続き、空港運営権者と連携し、広島空港の国際航空ネットワークの拡充等を図り、更なる利便性の向上に努めてまいります。
また、現在開催中の大阪・関西万博におきまして、8月5日から9日まで、会場内に広島県ブースを出展し、国内外からの来場者に向け、人類初の原子爆弾投下から復興を遂げた広島の溢れるエネルギーと魅力を発信いたします。
ブース内では、被爆から復興、そして今の広島の魅力を一連のストーリーとして、大画面の映像と音楽で体験できるコンテンツや広島の多彩な食の魅力を体感できるコンテンツ等を設置し、来場者に本県への関心を高めていただき、今後の誘客につなげることができるよう取り組んでまいります。
宿泊税につきましては、去る3月21日付けで、税の新設について総務大臣の同意が得られたところであり、令和8年4月1日の制度開始に向けて、税制度及び宿泊事業者のシステム整備支援事業の周知を図るため、特別徴収義務者となる宿泊事業者に対し、今月から県内各地で説明会を開催しております。
また、宿泊税の使途につきましても、引き続き、市町や観光関係団体などの御意見を踏まえ、先行して宿泊税を導入している自治体の活用事例等も参考としながら、関係者との議論を重ね、検討を進めてまいります。
次に、平和の取組について でございます。
8月に向けて、核兵器廃絶に向けた国際的な機運が一層高まるよう、本県の取組を大きく進展させてまいりたいと考えております。
このため、4月には、米国で開催された「NPT運用検討会議第3回準備委員会」に参加し、サイドイベントの開催、国連事務総長や各国政府関係者との面会等を通じて、本県の取組への賛同を得たほか、派遣いただきました県議会訪問団の皆様とともに平和の取組を推進する姿勢を示すことができ、大変意義深いものとなりました。
また、5月には、首脳経験者等で構成される「エルダーズ」が広島を訪問され、核兵器廃絶に向けた力強い声明を発出されたほか、「2025ひろしま国際平和&ビジネスフォーラム」を開催し、ビジネスによる平和貢献について様々な主体が具体的に行動していくための「ひろしま宣言」を、世界に向けて発信したところでございます。
さらに、関連事業であるアーバンスポーツ大会「アーバンフューチャーズ広島」が4月に開催され、日本を代表する選手が広島に集い原爆死没者慰霊碑への献花が行われたほか、3日間で延べ5万人を超える方が来場され、スポーツを通じて多くの方が、広島の平和の願いに触れる機会となりました。
今後も、多様な主体と連携し、国際社会への働きかけや平和のメッセージの発信を積極的に行い、核兵器のない平和な世界の実現に向けて全力で取り組んでまいります。
次に、「それぞれの欲張りなライフスタイルの実現」について でございます。
はじめに、教育分野について でございます。
本県の「学びの変革」を先導的に実践する役割を果たしている広島叡智学園においては、本年3月に第1期生45名が卒業いたしました。
それぞれの生徒が、国内外におけるリアルな体験に基づいた探究的な学びを通して、新たな価値を生み出す創造的・批判的思考力等を身に付け、結果として目標としていた海外の大学や国内大学に合格しております。
また、リベラルアーツ教育等を通じて、社会で必要となるコンピテンシー修得に取り組む叡啓大学においても、第1期生58名が卒業し、多様な企業への就職や、自ら起業するなど、4年間の学びを通じて芽生えた、一人ひとりの興味・関心のある道へと進んでいきました。
叡智学園、叡啓大学の卒業生の皆さんが、新たな環境においても、自らの豊かな可能性を更に伸ばし、活躍されることを期待しております。
続いて、いわゆる高校授業料の無償化につきましては、家庭の経済状況にかかわらず、全ての高校生等が安心して教育を受けられることができるよう、これまで所得制限により支給対象外となっていた世帯に、新たに支援金を支給いたします。
加えて、経済的に困難な世帯を対象に授業料以外の教育費に係る給付金を増額することにより、家庭の教育費負担の軽減に努めてまいります。
高校生スポーツ最大の祭典である全国高等学校総合体育大会、通称インターハイにつきましては、7月23日から8月20日にかけて、中国地方を中心に8道県で開催いたします。
本県では、57年ぶりとなる総合開会式を7月24日に広島県立総合体育館で行うこととしており、総合開会式の公開演技の合同練習や、競技会場地の実行委員会と連携した運営準備など、高校生による高校生のための安全・安心で一生心に残る大会の実現に向けて、準備を進めてまいります。
次に、地域医療構想の実現に向けた取組について でございます。
高度医療・人材育成拠点の整備に向けましては、今般の建築費高騰等を受け、新病院の理念や果たすべき役割を損なわないことを前提として、整備計画などの必要な見直しを行うこととし、検討を進めてまいります。
また、本年4月に新病院の運営主体となる地方独立行政法人広島県立病院機構を設立すると同時に、4月臨時会で御議決いただきました中期計画に基づき、令和7年度の年度計画を策定いたしました。
現在、民間の大規模病院において、医療の品質向上や経営の可視化と改善などの改革を実施してこられた役員の下、県立広島病院、県立安芸津病院、県立二葉の里病院の経営の改善とあわせ、高度急性期機能の充実や人材の確保・育成など、新病院の整備に向けた取組を開始しております。
本県といたしましては、機構とともに、引き続き、全国トップレベルの医療の提供や、中山間地域をはじめとする県内全域の医療提供体制の確保に向け着実に取り組んでまいります。
次に、防災・減災分野について でございます。
はじめに、出水期への備えについて でございます。
近年、台風や線状降水帯などに伴う、短時間の記録的な豪雨により、大規模な河川の氾濫や土砂災害が全国各地で相次いでいることから、出水期を迎えている本県におきましても、災害への最大限の注意が必要となっております。
県では、より多くの県民の皆様に適切な避難行動をとっていただくため、防災気象情報や避難情報等を自宅周辺に絞り込んで確認できるよう、4月に広島県防災Webをリニューアルするとともに、LINE版マイ・タイムラインを機能強化したところでございます。
県民の皆様には、災害への備えとして、再度、避難場所や避難経路を御確認いただき、避難情報が発令された際には、速やかに避難行動をとっていただくようお願い申し上げます。
次に、先般、国において策定された、第1次国土強靭化実施中期計画について でございます。
本計画では、令和8年度から12年度までの5年間の施策や目標、さらに、現在の5か年加速化対策を上回る、20兆円強という事業規模が示されました。
本計画の策定にあたっては、本年4月や、6月の施策提案において、国に対し、資材価格や人件費の高騰等を踏まえ、国土強靭化の目標達成に必要な財政措置を確実に行うよう要望したところであり、引き続き、あらゆる機会を通じて国に働きかけながら、将来にわたって、県民の皆様が安全・安心に暮らすことができるよう、県土の強靱化に取り組んでまいります。
激甚化・頻発化する水災害への対策といたしましては、法的枠組みを活用して流域治水の実効性を高め、早期に地域の治水安全度を向上させるため、東広島市・ 呉市を流れる黒瀬川流域の来年4月の特定都市河川流域の指定に向け、取り組んでいるところでございます。
本年3月に関係市の意見聴取を行うなど手続を進めており、今後は、地域住民へのパンフレット配布や企業向けの説明会などを通じて、関係者に対し、特定都市河川流域への指定の必要性や効果等について周知を図ってまいります。
次に、治安・暮らしの安全について でございます。
特殊詐欺につきましては、特に警察官を名乗るオレオレ詐欺により、高齢者をはじめ幅広い世代で被害が急増し、本年4月末時点の被害総額は約6億8千万円と、前年同期から約5億2千万円増という大変深刻な状況にございます。
県といたしましては、被害防止のため、SNS等を通じて県民の皆様へ広く注意喚起するとともに、被害の発生状況や新たな手口、被害防止対策を共有し、金融機関等の事業者の皆様との連携を深め、顧客への声かけや通報による水際阻止対策に取り組んでまいります。
次に、産業イノベーションについて でございます。
本県経済の持続的な発展に向けて、今後も大きな成長が見込まれる先端・成長産業の競争力を強化していくため、今年度から産業政策審議官組織を新設し、半導体産業課などの専属の組織を設置いたしました。
とりわけ、半導体関連産業の集積に向けましては、企業が必要とするインフラの整備や、中長期的な視点からの人材育成など多様な課題に対して、企業ニーズを把握しながら、関係機関・市町と連携し、取り組んでいるところでございます。
「ひろしまユニコーン10」プロジェクトにつきましては、これまで40社以上のスタートアップを支援し、そのうち15社において、累計約40億円の資金調達につながったほか、事業会社等との協業・連携を実現してまいりました。
今年度は、スタートアップの成長スピードを加速させるため、資本政策に特化した取組の実施や海外市場の獲得に向けた支援を拡充し、7月には支援先企業を採択する予定でございます。
さらに、内閣府が推進する「第2期スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」において、広島地域が選定を受けたところであり、選定された大学や金融機関等から構成されるコンソーシアムを活性化させ、地域の支援機関が一体となってスタートアップの成長を後押ししてまいります。
カーボンリサイクルにつきましては、国のロードマップの改定や、これまでの取組で見えてきた課題を踏まえ、本年4月に「広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進構想」を改定いたしました。
具体的には、コストや技術面のハードルから、事業化・社会実装まで進められる案件が限られているといった課題に対し、サプライチェーンの構築支援や、2030年頃の早期社会実装を睨んだ、カーボンリサイクル製品の導入支援の強化に取り組むなど、今後3年間の具体的な取組方針を整理したところでございます。
こうした方針を踏まえ、先月には、リニューアルした研究・実証支援制度の募集を開始するなど、基礎研究から実証、事業化まで切れ目のない研究開発支援や、協議会を通じたマッチング支援を行うことにより、カーボンリサイクルの社会実装を進めてまいります。
次に、農林水産分野について でございます。
かき殻につきましては、一時保管場所の確保や、漁業協同組合が主体となった藻場造成での活用などにより、超過堆積が発生することなく、順調に今シーズンのかきの出荷を終えることができました。
引き続き、漁場環境改善への利用に加え、リサイクル製品の開発など、新たな用途の創出にも取り組んでまいります。
また、近年、東部海域を中心に大量発生しているミズクラゲの被害軽減対策につきましては、福山市と連携して、ミズクラゲの被害が拡大する前の5月上旬から早期駆除の試験を実施しているところでございます。
今後、発生源となるポリプにつきましても、駆除に適した12月に向けて、専門家からの御意見を伺いながら、駆除方法の検討を進めてまいります。
次に、交流・連携基盤について でございます。
主要地方道鞆松永線鞆未来トンネルにつきましては、本年3月の開通以来、町中の交通量が6割程度減少しており、生活道路として利用される皆様の安全性の向上につながっているものと考えております。
引き続き、福山市と連携しながら、観光交通の流入抑制に資する交通・交流拠点の整備や、町中の道路拡幅、無電柱化、高潮対策などの生活環境の整備を着実に進めるとともに、「『鞆・一口町方衆』応援プロジェクト」による町並みの再生の取組などを進めてまいります。
次に、「特性を生かした適散・適集な地域づくり」について でございます。
持続可能な中山間地域の実現につきましては、安心して暮らすことができる地域づくりに向け、デジタル技術を活用した生活サービスの実装支援や、集落の将来を見通した話合いをサポートする人材の派遣などのほか、新たに、都市部住民と中山間地域のつながりづくりに向けた地域づくり活動実践者や市町が行う取組の支援を進めてまいります。
また、「第2期広島県中山間地域振興計画」が今年度末をもって終期を迎えることから、引き続き、県民の皆様、市町、県が密接な連携の下で総合的な取組を進めていくため、次期計画を策定してまいります。
続いて、魅力ある都心空間の創出について でございます。
広島市都心につきましては、本年3月に広島駅の新駅ビルが開業し、8月に予定されている路面電車の新駅ビル2階への高架乗り入れによって、紙屋町・八丁堀への更なる人の流れが促進され、都心全体の回遊性や、一層のにぎわいの向上が期待されます。
引き続き、広島市や広島都心会議等と連携して、広島市都心の活性化に向けて取り組んでまいります。
また、県庁舎敷地の有効活用といたしまして、県民や来県者の皆様にほっと一息ついていただける空間の創出を目的とした「憩いの施設」等が本年3月に開業し、多くの方に御利用いただいております。
県庁舎敷地が地域全体の魅力の向上の場となるよう、引き続き取組を進めてまいります。
次に、「安心▷ 誇り▷ 挑戦 ひろしまビジョン」の見直しについて でございます。
現行ビジョンの策定から4年が経過する中で、想定以上に進む人口減少など、様々な社会経済情勢の変化が生じていることから、こうした変化に適切に対応していくため、おおむね10年を見通した現行ビジョンの折り返し後を見据えて、これまでの成果と課題も反映させながら見直しを進めております。
今後、県議会でも御審議いただき、来年3月の改定を目指し、次の5年間における本県が取り組むべき課題や施策の方向性について、検討を進めてまいります。
続いて、当面する県政の諸課題への対応について、御報告いたします。
「芸備線再構築協議会」につきましては、先月、第5回幹事会が開催され、芸備線の可能性を最大限追求するための実証事業等に取り組んでいくことが決定したところであり、今次定例会において、必要な経費として協議会に対する負担金の予算を計上しております。
この実証事業につきましては、事務局である中国運輸局から、事業のベースとなる芸備線ダイヤの増便期間として、7月下旬から11月下旬までの「4か月間」が示されたところでございますが、本県が求める春夏秋冬の移動需要の変化を把握するために必要な期間である「1年間」の実施に向けて、引き続き調整が進められることとなっております。
今後とも県の意向が反映されるよう働きかけてまいります。
また、再構築協議会の議論を進める上での前提となる「全国的な鉄道ネットワークのあり方」の整理につきましては、29道府県知事による特別要望において、石破内閣総理大臣から御提案のあった、国と知事の協議の場での協議開始に向けて、引き続き、国や他県との調整を進めてまいります。
次に、広島高速5号線について でございます。
シールドトンネル工事につきましては、トンネルの掘削が4月に完了したところであり、今後の非常駐車帯の拡幅工事や設備工事等の工程を踏まえますと、高速5号線本線は令和9年度上期に完成する見通しでございます。
また、建設資材の高騰など社会情勢の変化や、現場条件を踏まえた橋梁の構造変更等により、事業費の増額が生じていることから、広島高速道路の整備計画の変更に関連する議案を提出しております。
引き続き、広島市、広島高速道路公社と連携し、安全を第一に工事を進め、着実な工事推進に取り組んでまいります。
次に、日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区の跡地利活用について でございます。
防衛省から提案のあった「多機能な複合防衛拠点」につきましては、本年3月に、民間企業誘致ゾーンを含むゾーニング案が示され、5月には、地元呉市がこの提案を受け入れ、早期整備を防衛省に要望したところでございます。
本県といたしましては、地元市の意向を尊重したいと考えている一方で、本提案の地元経済や社会に対する影響は未だ不明であることから、防衛省から丁寧に話を伺うとともに、地域経済の活性化につながり、地域住民の皆様にとって将来に希望が持てる利活用となるよう、引き続き、防衛省や日本製鉄、呉市と協議をしてまいりたいと考えております。
次に、今回提出いたしました議案について、その概要を御説明いたします。
まず、一般会計補正予算案につきましては、当初予算編成後の状況変化等を踏まえ、必要性が認められる事業に適切に対応することを基本として、編成しております。
具体的な補正の内容でございますが、物価高への対応や、「安心▷誇り▷挑戦 ひろしまビジョン」に掲げる、それぞれの欲張りなライフスタイルの実現に向けた取組などに、時機を逃さず対応するための経費について、予算を計上しております。
この結果、一般会計の歳入歳出補正予算額は、24億7,191万円となり、本年度予算の累計額は、1兆923億191万円となります。
次に、予算以外の議案といたしまして、「職員の育児休業等に関する条例等の一部を改正する条例」などの条例案10件、人事案件といたしまして、「広島県人事委員会委員の選任の同意について」など2件、その他の議案では、「工事請負契約の締結について」など5件を提出しております。
また、報告事項として、専決処分報告のほか、令和6年度繰越明許費繰越計算書、県が資本金の四分の一以上を出資等している法人の経営状況説明書などを提出しております。
どうぞ、慎重に御審議いただき、適切な御議決をいただきますよう、よろしくお願いいたします。